内緒の話
2021年3月1日
「実来姉ちゃん、何してるの?」
実来の部屋に来た康太は、机に向かって何か書いている実来に言った。
実来は鉛筆を置き、机に置いていた紙を裏返した。
「内緒~」
実来は微笑み、椅子を降りて畳に座った。
康太も実来の向かい側に座る。
「えー、教えてよ」
康太がそう言うと、実来はニコニコしながら言った。
「うーん、康太にはまだ早いかなあ」
「ええ、なにそれ?オレもう1年生だよっ」
康太が不機嫌そうにそう言うと、実来は「はは、ごめんごめんっ」と笑った。
「んー、大好きな人に『好きです』って伝えるお手紙を書いてたの」
「へええ、オレに?」
「ふは、そうだね~。康太のことも大好きだけど、そういうんじゃないかなあ」
実来はそう言うと康太に顔を近づけ、小声で言った。
「康太、内緒にできる?」
言われ、康太は「うん!」と微笑んだ。
「よし、じゃあ約束だよ!このお手紙はねえ、なっちゃんにあげたいの」
「夏輝兄ちゃん?いつも一緒に遊んでるんだから明日言ったらいいじゃん。どうしてわざわざお手紙書くの?」
康太は不思議そうに言った。
「ふは、それはそうなんだけど~、私ね、なっちゃんのこと家族としても大好きなんだけど、男の子としても大好きなの。だから、恥ずかしいからお手紙で伝えるの。なっちゃん、照れ屋さんだから直接言ったら笑ってどっか行っちゃいそうだなーって」
実来はそう言いながら微笑んだ。
「男の子として好きって、何が違うの?」と康太。
「うーん、私にもよく分かってないけど、なっちゃんにとっての1番になりたいってことかな?なっちゃんに、特別って思ってもらいたいの。ずっとずーっと一緒にいたいって思ってもらいたいの。だから『好き』って伝えるの」
「ふうん、恭兄ちゃんは違うの?」
「恭ちゃんもなっちゃんと同じくらい大好きなんだけど、それは男の子としてじゃなくて家族とか、友達としての大好きなの」
「ふうん...よく分かんないや」
「ふは、康太もきっとそう思う時が来るよっ。その時は私がお手紙の書き方教えてあげる~~」
実来はそう言いながら康太の頭を撫でた。
「わかったっ!じゃあその時は実来姉ちゃんに言うねっ!」と康太。
「任せなさいっ!その時には私、なっちゃんと結婚してるかも~~っ!はは、流石に気が早いか....」
楽しそうにそう言う実来に、康太は「そのお手紙、いつ夏輝兄ちゃんに渡すの?」と机の上を指さした。
「卒業式の日。卒業式が終わったらここに戻ってきて、なっちゃんと海に行くの。それでこれ渡すんだあっ」




