雨粒
「うん...最初は、トイレにでも行ったのかと思って少し待ってたんだ。でも、1時間くらい待っても実来姉ちゃんは戻って来なかった。そしたらオレ、眠くなって実来姉ちゃんのベッドで寝ちゃってたんだ。でも、物音がして夜中に起きた。これも多分だけど...2時くらいだったと思う。オレ、その時まだ時計の見方あんまり分かってなかったけど...その物音っていうのが、実来姉ちゃんが部屋に戻って来た音だったんだ」
康太の話を聞き、夏輝は「...実来は0時、あるいはもっと前から夜中の2時までどこかへ行ってたってことか...?」と顔をしかめる。
「分かんない...でも、外に行ってたのは確かだと思うんだ」と康太。
「何で分かるんだよ?」
「その日、外は雨が降ってたんだ。窓ガラスに水滴がついていて、実来姉ちゃんを待っている間、窓を開けてどれくらい雨が降ってるのかなって思ったこと、覚えてるから確かだと思う。それで、部屋に入ってきた実来姉ちゃんはレインコートを着ていて、髪の毛も少し濡れてたんだよ」
「...そんな雨の中、それも夜中にどうして実来は1人で外に行ってたんだ...?それで、部屋に戻って来た実来は何か言ってなかったか?」
「どこに行ってたの?って聞いたけど、『トイレだよ』って笑ったんだ。だから、オレには分かんないけど何か、女の子には聞いちゃいけないことなのかなあとか、先生に相談とかしてたのかなあとか思って、それ以上は聞かなかったんだ。だから雨で濡れていたことにも気づかないフリしちゃって....。それで結局、そのまま一緒に寝た。でも、俺見たんだ」
「見たって何を?」
夏輝がそう言うと、康太は少し俯いてから不安そうな表情で言った。
「...あの日、実来姉ちゃんは泣いてた。あれは雨粒なんかじゃなかった」
「泣いてた...?」
夏輝は更に怪訝な表情を浮かべた。
「うん..最初は雨粒だと思ったんだ。でも、実来姉ちゃんは誤魔化してたつもりだろうけど...鼻を啜って、目も赤くなってた。それに、明らかに目から水滴が零れてた気がするんだ。それに本当はオレ、実来姉ちゃんが夏輝兄ちゃんに告るつもりだったことも知ってたんだよ..!」
康太はそう言いながら静かに涙を流した。
夏輝は驚いた表情を浮かべた。
「え...?」




