手掛かり
「さてと」
夏輝は立ち上がり、子供たちの輪に戻った。
一緒に夕食を摂り、夏輝が後片付けを終えてトイレに行った時だった。
トイレを出ると、廊下には康太の姿があった。
「うおっ、びっくりした…!どした?トイレ空いてっけど」
夏輝はそう言ってトイレのドアを開けた。
康太はどこか神妙な面持ちで夏輝を見上げた。
「…あの、オレ…夏輝兄ちゃんに話したいことがあって…」
康太はそう言って俯いた。
「ん?あ、お前まだ算数苦手なのかー?しゃーねーから見てやるよっ」
夏輝が笑いながらそう言って歩き出そうとすると、康太は「違うよっ…!」と言って夏輝の腕を掴んだ。
「なんだ?どした?何か言いづらいことでもあったか?」
夏輝は不思議そうにそう言ってしゃがみこみ、康太の顔を見た。
康太は少し辺りを見渡し、言いづらそうにしながら口を開いた。
「実来姉ちゃんのことなんだけど… 」
言われ、夏輝の表情からゆっくりと笑みが消えた。
「……実来のこと?」
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康太たちの部屋に移動した夏輝は、部屋に入るなり康太を見た。
「...それで、実来のことって?」
康太は畳に腰を下ろし、「うん...」と呟いてから夏輝を見て言った。
「...あの時オレ、よく実来姉ちゃんの部屋に行って寝てたんだよ。夜、眠れなくて」
「康太が7歳の時か」と夏輝。
「うん...それで、あの日もそうだったんだ」
「あの日って、実来がいなくなった日...の前日ってことか?3月18日」
小学校の卒業式は3月19日だった。
19日の朝に、俺たちは実来がいないことに気づいて探し回っている。
警察の調べじゃ、実来は3月18日の夜にあのビルで飛び降りていた。
康太は首を横に振った。
「違う..その前の日、3月17日の夜だよ」
「卒業式の2日前ってことか」
「うん。その日もオレ、眠れなくて実来姉ちゃんの部屋に行ったんだ。多分...12時くらいだったと思うけど、オレその時まだ時計の見方、学校で教わってなくて、夏輝兄ちゃんたちに何となく教えてもらっただけだったし、だから何時かは、宛てにならないと思うけど....。でも、多分それくらいの時間」
「実来、何か言ってたのか」
「それが...オレが部屋に行った時いなかったんだ、実来姉ちゃん」
「いなかった...?」
夏輝は怪訝な表情を浮かべた。




