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怪物  作者: 水野 すい
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一体何が?

2024年 8月20日


瑠璃子は泣きながら急いで病院へ向かった。

どうしてこんなことになったんだろう?

私が昨日ちゃんと菜々美と一緒にいてあげれば。


大怪我を負って眠っていた娘が目を覚ましたというのに、そんな娘を置いて仕事になんか行かなきゃ良かった。

仕事なんかいつでも行けるのに。


でも菜々美には、菜々美にはーーーーー。



******



病院に到着すると、辺りにはパトカーが数台停まっていた。

気が動転して、誰に話しかけていいか分からなくなった。


近くにいた警官の腕を掴み、瑠璃子は「あの娘は…?!娘はどこですか?!川本菜々美です!菜々美はどこですか?!」と必死に問いかけた。


何人かの警官に病院の中に連れられて、暗い部屋に通された。

菜々美は真ん中にあるベッドに横たわり、顔には白い布が被されていた。


「…今朝早く、この病院の庭で発見されました。詳しいことはこれからですが、屋上から飛び降りたものと見られます」


一緒に来たスーツの男がそう言った。

何が起きたのか分からなかった。


瑠璃子は力なく菜々美に近寄り、白い布を取った。


昨日見た菜々美の顔は、右目の瞼が大きく腫れあがり、閉じたまま。

唇も腫れ上がり、左目もしっかりは開いていなかった。

頬には火傷の痕が残り、耳の付け根にも大きな傷ができていた。


ーーー元の顔が分からないくらいに。


そして今日見た菜々美の顔は、昨日の菜々美とは比べ物にならないくらい、鼻や額も大きく損傷していた。


瑠璃子は菜々美の顔を見つめ、膝から崩れ落ちた。

泣きながら火傷で爛れた菜々美の頬に両手を添え、震えた声で小さく呟いた。


「菜々美…菜々美…ごめんね…!ママが…ちゃんと菜々美のこと…守ってあげられなかったから…!菜々美…菜々美…!!」


瑠璃子はそう言いながらただひたすら泣き叫んでいた。



******



2024年8月24日


23日に葬儀が終わり、家に戻ってきた。

一昨日から葬儀場に泊まっていたせいか、家に帰って来るのが随分昔のことのように感じた。


この2日間は、今までで1番長い2日間だったし、今後の人生でもきっとこの2日間を越える衝撃はないだろうと思う。


警察から連絡が来たのは、20日の午後のことだった。

いつも通り中学校で授業を受けていた時、先生に呼び出された。


先生に警察から連絡が来て、なんて言われた時は、あたし何か悪いことしたっけ?なんて焦った。

けど先生の口から告げられたのは、あたしのやってもいない非行でも、成績のことでも、受験のことでもなかった。


"お姉さんが今朝、亡くなったそうだ"


ただそれだけ言われ、一瞬何の話をしているのだろうと思った。

一昨日姉が行方不明になり、昨日発見されて目を覚ましたと聞いていた。


試験を受けていてお見舞いには行けなかったけど、今日学校が終わったらお見舞いに行くと母と約束をしていた。


お姉ちゃんは目を覚ましたんじゃなかったの?

昨日、一命は取り留めたって言わなかった?

容態が急変したの?


お姉ちゃんに一体何が起きたの?

愛実は頭が真っ白になり、目の前にいる先生の顔を見つめることしかできなかった。



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