赤毛のアン
言われた恭介は目を丸くした。
「..驚いたな、この状況でも俺のことが好きって。どれだけ愚かなの?君は」
あたしの声は響かなかった。
最後まで、信じたかった。
こんな状況になっても目の前にいる男と、あたしが好きになった恭介君が同じ人間だなんて思えなかった。
でも『好き』って言えた。
なら、もうそれでいいのかな.......
「俺もね、最後に君に伝えておこうと思っていたことがあったんだ。勘違いされたままってのもなんか、気持ち悪いし」
恭介はそう言うと、改めて菜々美の顔を見つめた。
「俺は『赤毛のアン』なんか読んだことないし、興味も無い。だってさあ、あんなうるさい女が成功する話とか、バカバカしくて見てられないよ。ああ、あらすじはネットで調べたんだよね。君に話を合わせる為にさ。まあ、それも時間の無駄だったわけだけど」
恭介はそう言って立ち上がり、男たちを見た。
「もういいや、ありがとう。後は適当に捨てておいて下さいね。あ、ヘマしないようにお願いします」
恭介はそう言いながら出口へ向かい、「あ、そうだ」と振り返った。
菜々美は泣いている菜々美を見た。
「君の話にちゃんと答えてなかったね。俺は君のことーーーー」
恭介はそう言うと、クスッと笑った。
「吐き気がするほど大っ嫌いだよ。じゃあ、お元気で」
恭介はそれだけ言うと、軽く菜々美に手を振り、部屋を出て行った。
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その時のあたしは、もう何かを考える力なんか残っていなかった。
気づいたら裸のまままたハイエースに乗せられて、人気のない旧道に投げつけられた。
一緒に捨てられた制服を着て、ここがどこなのかも分からないまま夜道を彷徨った。
身体中が痛い。
顔から、身体から血が流れている感覚がある。
だけどもうどこが痛いのかも分からない。
殴られてから瞼が腫れて片目が開かない。
今、もし鏡を見たら一体どんな顔をしているのだろう。
こんなに顔が痛いのに、また笑える日が来るのだろうか。
頬を緩めたりなんかしたら、唇が裂けてしまわないだろうか。
引っ張られたせいで、髪の毛も抜けて頭が痛い。
胸が痛い。
あたしの乳房はちゃんとついているのだろうか。
耳が痛い。
引っ張られたせいで少し血が出ているようだった。
ーーーあたしはこれから、普通に生きていけるのだろうか。




