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怪物  作者: 水野 すい
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赤毛のアン

言われた恭介は目を丸くした。



「..驚いたな、この状況でも俺のことが好きって。どれだけ愚かなの?君は」



あたしの声は響かなかった。

最後まで、信じたかった。


こんな状況になっても目の前にいる男と、あたしが好きになった恭介君が同じ人間だなんて思えなかった。


でも『好き』って言えた。

なら、もうそれでいいのかな.......


「俺もね、最後に君に伝えておこうと思っていたことがあったんだ。勘違いされたままってのもなんか、気持ち悪いし」


恭介はそう言うと、改めて菜々美の顔を見つめた。



「俺は『赤毛のアン』なんか読んだことないし、興味も無い。だってさあ、あんなうるさい女が成功する話とか、バカバカしくて見てられないよ。ああ、あらすじはネットで調べたんだよね。君に話を合わせる為にさ。まあ、それも時間の無駄だったわけだけど」



恭介はそう言って立ち上がり、男たちを見た。


「もういいや、ありがとう。後は適当に捨てておいて下さいね。あ、ヘマしないようにお願いします」


恭介はそう言いながら出口へ向かい、「あ、そうだ」と振り返った。

菜々美は泣いている菜々美を見た。


「君の話にちゃんと答えてなかったね。俺は君のことーーーー」


恭介はそう言うと、クスッと笑った。



「吐き気がするほど大っ嫌いだよ。じゃあ、お元気で」



恭介はそれだけ言うと、軽く菜々美に手を振り、部屋を出て行った。




******




その時のあたしは、もう何かを考える力なんか残っていなかった。

気づいたら裸のまままたハイエースに乗せられて、人気のない旧道に投げつけられた。

一緒に捨てられた制服を着て、ここがどこなのかも分からないまま夜道を彷徨った。


身体中が痛い。

顔から、身体から血が流れている感覚がある。


だけどもうどこが痛いのかも分からない。

殴られてから瞼が腫れて片目が開かない。


今、もし鏡を見たら一体どんな顔をしているのだろう。

こんなに顔が痛いのに、また笑える日が来るのだろうか。

頬を緩めたりなんかしたら、唇が裂けてしまわないだろうか。


引っ張られたせいで、髪の毛も抜けて頭が痛い。


胸が痛い。

あたしの乳房はちゃんとついているのだろうか。


耳が痛い。

引っ張られたせいで少し血が出ているようだった。



ーーーあたしはこれから、普通に生きていけるのだろうか。



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