図書館の男の子
そんなお母さんとお父さんを見てきたからかな、あたしはあんまり恋愛とか興味が持てなくて。
別に軽蔑してるとかじゃないけど、恋愛とか、結婚って何なんだろうとか思ったら異性への興味があまり生まれなかった。
そんなあたしが17歳の時だ。
初めて異性に興味を持ったのは。
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2024年 5月
勉強する為、よく近所の図書館に行っていた。
そこで勉強の合間、よく『赤毛のアン』を読んでいた。
続きが気になっても、母に買って欲しいとは言えなかったのだ。
その為、図書館で借りて読むようにしていた。
そんなある日、あたしがいつもの場所に『赤毛のアン』を取りに行った時のことだ。
いつもは誰も借りていないのに、この日はいつもの場所になかった。
残念ではあるけど諦めて椅子に座って勉強を始めようとした時、目の前に座っていた男の子が『赤毛のアン』を読んでいたのだった。
狭い図書館では初めて見る顔だった。
その日から、あたしは図書館に行くとよく彼の姿を見かけるようになった。
同時に『赤毛のアン』を読める日も減ってはいたのだけれど。
ある時、図書館に来るといつもの男の子は来ていなかった。
あたしはいつもの場所から『赤毛のアン』を手に取り、記憶していた最後に読んだページを開いた。
するとそのページから5ページほど進んだ時、小さな緑色の付箋が挟まっていた。
もしかしたらーーーなんて思った。
彼の付箋だと思った。
彼もきっと、このページまで読んだんだな、なんて思ったら少しだけ微笑ましく思えて。
そんなことを思っていた時、タイミングを図ったかのように彼が図書館に入って来た。
そして彼はいつものように空いている席にカバンを置いた。
ふとあたしの方を見て、表情が固まったのが分かった。
きっとあたしが『赤毛のアン』を読んでいたから、今日は読めないななんて思ったのだろう。
隣町の中学の制服を着ている彼は、どこかあどけなさを感じて、落胆しているような表情が可愛く見えた。
「…これ、あなた?」
つい、話しかけてしまった。
緑色の付箋を手に言うと、彼は恥ずかしそうに微笑んだ。
「あ、はい…実は僕も、いつもあなたが読んでいるの気づいてたんです」
「この図書館、狭いから基本向かい合わせに座ってたよね。あたしも気づいてたの」
「そんなに毎日読むなら借りて帰れよって感じですよね、はは。何かこの図書館、居心地良いんですよね」
彼はそう言って椅子に座った。
「分かる。何かこの木漏れ日の感じとか、匂いとかね」
「ですよね!僕もこの、なんとも言えない懐かしいような匂いが好きなんです」
「ええ、分かる分かる!ずっと居れちゃうよね。あ、これ読む?」
あたしはそう言いながら彼に本を差し出した。
「あっいえ。今日僕が遅く来たので早い者勝ちです。どうぞゆっくり読んでください」
彼はそう言って微笑んだ。
「そう?じゃあ…お言葉に甘えて。あ、あたし川本菜々美。これからまた会うことがあったら遠慮しないで話しかけて」
菜々美がそう言うと、彼は嬉しそうに言った。
「菜々美さん、ですね。ありがとうございます。僕はーーー」
彼はそう言いながら制服についた名札に手を宛てた。
「峯恭介です」




