母と娘
「でもさあ愛実ちゃん。こんな遅くまで出歩いてたら、またお母さん心配するんじゃない?」
今村がそう言うと、愛実は急いでスマホを隠すようにポケットにしまった。
「...今村さんには関係ないじゃん。てか、あの人あたしに興味ないから」
不機嫌にそう言う愛実に、今村を小さく息を吐いた。
「そんなこと言わずにさあ。っていうか、そんなことないから。今日はもう帰っていいから、早い家に帰りなさい」
今村がそう言いながら愛実を肩に手を置くと、愛実は嫌がりながら「触んないでよ」と言って今村を手を振り払った。
今村は「ああ、ごめんごめん」と言いながら手を離し、「ほら、送るから帰るよ」と歩き出した。
愛実は不機嫌な表情のまま渋々といった態度で今村に続いた。
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愛実の家に着き、今村は車を降りてアパートを見上げた。
川本愛実と川本瑠璃子が住んでいる201号室を見ると、入り口には大量のゴミ袋が置いてあった。
ドアの横についている蛍光灯には、蛾や小さな羽虫がたかっている。
前より酷くなってるな、と思いながら今村は少し顔をしかめた。
「ねえ、家に帰りたくないって言ったじゃん。ほんと迷惑」
愛実は車から降り、舌打ちをしながら今村を見る。
今村は「そんなこと言わないで」と言い、古びたチャイムを鳴らした。
「僕も一緒にお母さんに謝ってあげるから、愛実ちゃんもちゃんと謝るんだよ」
今村の言葉を無視して、愛実は溜息をついた。
「あれ、出ないな。もう寝ちゃったのかな。鍵は?」
今村は不思議そうに振り返り、後ろでスマホを見ている愛実に言った。
愛実はスマホから視線を離さずに「ない」と呟いた。
「ないって...自分の家だろ...」今村は呆れたように小さく呟き、「ああもう」と言ってもう一度チャイムを鳴らした。
すると中から足音が聞こえ、キィと言う錆びれた音と共にドアが開いた。
少しだけ開いたドアから、今村が中を覗くように「警視庁の今村です。愛実ちゃんを連れてきたのですがーー」と言うと、ドアはゆっくりと開いた。
瑠璃子は一度、ボサボサの髪を手櫛で適当に撫で、今村の後ろにいる愛実を睨むように見た。
「川本さん、ご無沙汰しております。夜分にすみません」と今村。
瑠璃子は無言で今村を見ると、小さく会釈をした。
「....愛実。また警察の人にお世話になったの。いい加減にしなさい」
か細く、小さな声で瑠璃子は愛実を見て言った。
愛実は「...うっざ。母親ヅラしないでよ」と呟き、「邪魔」と言って今村の横を強引に通り過ぎて中へ入って行った。
今村は「あの、今日はもう遅いのでまた後日伺ってもよろしいですか?」と微笑んだ。
瑠璃子は「...結構です」と呟き、ドアを閉めようとノブを引っ張った。
今村は咄嗟にドアを掴み、「愛実ちゃんのこと、少し心配でしたので!パトロールってことで!また来ます」と言った。
何も言わない瑠璃子を見て、今村は苦笑した。
「最近は不審者も多いですから!では、夜分に失礼しました」
今村はそう言うとドアから離れ、瑠璃子に会釈した。
瑠璃子は何も言わずに今村を見つめ、すぐにドアを閉めて中へ戻って行った。




