ふるふるゼリー
すると塚本の鼻を啜った声に気づいた綾花は、ビクッとなり、驚いた顔で立ち上がって入り口を見た。
塚本はゆっくりと屋上に出た。
綾花は「あっ...ごめんなさい勝手に入っちゃって..!あの、えっと、すぐ出て行くので..!」と言ってコンクリートに置いていた自分の飲みかけのゼリー缶を拾った。
塚本は「ああっ、いいよいいよ大丈夫。警備員とかじゃないから」と微笑んだ。
「あ...はあ...」
綾花はまだ警戒した様子で近づいてくる塚本を見た。
塚本は手に持っていたゼリー缶を掲げ、綾花に見せた。
綾花はハッとした顔で「あ、おじさんも実来ちゃんのお知り合いですか?」と言った。
そのあと小声で「あ、おじさん『も』とか言ったけど私は他人か...」と呟く。
塚本は微笑みながら綾花の前で立ち止まって言った。
「まあ会ったことないから実質他人だけど、さっきの話ぶりはもう他人とは呼べなさそうだなあ」
「えっ..!聞かれちゃいましたか!?やっば恥ずかしいこといっぱい言っちゃった...!」
綾花は1人で恥ずかしそうに両手で頬を触った。
「夏輝の顔が好きなんだ?」
塚本がニヤニヤすると、綾花は「あ、はは...」と苦笑した。
「っていうか、夏輝くんのお知り合いですか?」と綾花。
塚本は胸ポケットから警察手帳を出し、綾花に見せた。
「まあ当時の担当刑事ってだけだけどね」と塚本。
綾花は「わ、刑事さんか...!」と驚いた顔で塚本を見た。
「そっか。夏輝がそんなこと」
改めて2人は実来の花の横に座り、先日の夏輝のことを話した綾花に、塚本が言った。
「昔のこと、君に話せたんだなあ、あいつ」
「話せたって言うか、私が怒らせちゃったから...勢いでブチギレられたからあとで説明してくれただけですけどね」
綾花はそう言って苦笑し、ゼリーを飲んだ。
「はは、あいつ結構感情的なとこあるもんなあ。昔も少し剣幕で怒られてさ、12歳とは思えないくらい怖い顔だったよ〜...この間久しぶりに夏輝に会いに行った時も『頼らない』とか『クソが』とか言われてさあ、本当生意気なんだよ」
塚本は呆れたように、笑いながら言った。
「ふは、私もこの間言われました。『お前のことなんかちっとも好きじゃない』とか『馴れ馴れしいんだよクソが!』って」
綾花はわざとらしく似てないモノマネをしながら言って笑った。
「でも最近恭介ともまた話してるみたいだし、なんとなく嬉しいよ」と塚本。
「夏輝くんと峯くん、学校でもよく一緒に話してますよ。ここにも来てるみたいですし」
「そっかあ、なら良かったよ。恭介とは?これから仲良くなりたいって言ってたけど」
「あはは..1回みんなでごはん食べた程度の会話しか。まあ、これからですっ。でも、夏輝くんと峯くん、やっぱり中学時代は話してなかったんですか?」
「まあ、そうみたいだよ。実来ちゃんのことがあって、2人とも一緒にいるのが辛かったんだと。そんなことだろうとは思ったけどさあ、やっぱり何か引っ掛かっててねえ」
塚本はそう言って横に置いてある実来の花を見た。




