独り
恭介・9歳
家が燃えた。
もちろん特段驚きはしていない。
隣のおばさんの家が少し燃えたと聞いた。
おばさんはよく優しくしてくれていた。だからおばさんのことが心配になって、謝りたくなった。
その後警察の人から、おばさんが無事だと聞かされて安心した。
死んだのは俺の両親だけ。
暗い部屋に連れていかれて、殆ど何かも分からない黒い物体を見せられた。
警察の人や、施設の人がいたから一応泣いてみた。
けど、両親が死んでからなぜか声が出せなくなった。
医者は心因性のもので、火事と、両親が死んだショックでこうなったのだと言っていた。
予想していたことが起きただけでも、体は反応するのだと思った。
施設に行ってからは、もう笑わなくていいと思った。
やっと楽になれたと思っていた。
そんな時、君が現れたんだ。
毎日のように話しかけてくる2人がいた。
1人は男の子で、1人は女の子。
正直、人と話すのが面倒だった。
また顔色や声のトーン、瞳に映ったもの、すべて考えてから話さなきゃいけない。
特に、女の子を見ると虫唾が走る。
母親、父と手を繋いでいた女、その女と一緒にいた子供2人。
俺の嫌いものは偶然にも、全員が女だ。
耳に響くような高い声も、男の子と話す時の目も、小さな手も、見れば見るほど吐き気がする。
まあでも男の子の方も嫌いだった。
いつも自分のタイミングで話しかけてきて、気を遣わせていることにも気づいていなくて、女と話す時の笑顔も、父を見ているようで腹が立つ。
もう笑わなくていいだろ。楽にさせてくれよ。
やっと『独り』から解放されて『1人』になれたんだ。




