笑って生きていくんだよ
そう思った時、目の前で泣いている綾花が眩しく見えた。
太陽のような温かさ。
綾花に触れた時、実来に触れた時と同じ感覚を覚えた。
自分の中に流れこんでくるような温かさ。
すべてを包み込んでくれるような優しさ。
一生このままこうしていたいと思った。
初めて人に見せた自分の弱さが、このままでもいいと思えた。
全部話してしまいたいと思った。
実来を救えなかった自分が、一瞬だけ許されているような気になった。
こんな気持ちになったのは実来を失ってから初めてだった。
「そんな風に言ってくれる人がいるなら、俺はまだ生きてていいのかもなあ....」
夏輝はそう言って苦笑し、手で涙を拭った。
そう言われ、綾花は涙でぐちゃぐちゃに崩れた顔で「当たり前だよっ.....!」と必死に言った。
夏輝は綾花の勢いに驚き、目を見開いた。
「夏輝くんは生きてていいじゃない...!生きるんだよ...!生きて...美味しい物も、楽しいことも、嬉しいことも...幸せも..!全部手にできるんだよっ....!誰の許可もいらない、誰の顔色も伺わなくていい。夏輝くんの人生なんだよ!好きも、嫌いも経験していいの!ずるいことしたっていいの!無理なんかしなくていいの!責任なんて感じなくていいの!人を恨んでもいいの!もう十分過ぎるくらい苦しんだんだから...好きなことして、笑って生きていくんだよ...!」
綾花は泣きながら、必死に夏輝の肩を掴んで続けた。
「確かに..夏輝くんの言う通りだよ。悲しみを分け合いたいだなんて...綺麗ごとだった。夏輝くんの悲しみを代わってあげることはできないけど、でも...!これから夏輝くんが経験する悲しみも、喜びも、夏輝くんの中にある量は変えてあげられないけど....同じ分だけ、私も感じるんだよ。私だけじゃないよ...夏輝くんが思ってる以上に、夏輝くんを大切に思う人はたくさんいるの。その人たちみんな、大切な分だけ夏輝くんの傷み、一緒に背負うんだよ。1人じゃないってことだけは忘れないで...!」
綾花に言われ、夏輝は静かに涙を流しながら綾花を見つめた。
「...ありがとう。綾花」
夏輝がそう言うと、綾花は少しハッとして「あ...ごめん。偉そうなこと言っちゃったね。はは...」と呟いて涙を拭った。




