我慢しなくていいんだよ
綾花は静かに涙を流し、「...いいよ」と言って鼻を啜った。
夏輝は「は...?」と綾花の顔を見下ろす。
「私は..私の好きな人が生きてるだけで幸せだって..相原くんを見て本当に思ったから..!体だけでいい...八つ当たりでもいいから..このまましよう...?」
静かに泣きながら綾花を見て、夏輝は目を見開き、目を瞑って体勢を元に戻した。
夏輝はベッドに座り、髪を掻きむしると頭を抱えた。
「....あのさ、何で俺のこと好きなの?まじで分かんないんだけど」
夏輝の口調は冷たい口調のままだが、さっきとは違って怒鳴るような口調ではなくなっていた。
綾花はゆっくり起き上がり、俯いて言った。
「...最初はそりゃね、かっこいいなって思って、タイプだっただけだったよ。でも会うたび、話すたびにどんどん好きになってね..今はもう、相原くんの全部が好きなの」
「..全然意味分かんない。俺、君に好かれるようなこと何もしてないと思うんだけど...」
「理屈じゃないよ。自分でも分かんないけど...相原くんの心に誰がいても、相原くんにとっての『黄色』が何かの意味を持っているとしても、相原くんがミサンガを大事にしていたとしても、相原くんが私に興味なくても...それでも相原くんが好きなの。知りたいの」
綾花にそう言われ、夏輝は目を見開いて綾花を見た。
2人の目から涙が溢れていた。
「...俺はずっと実来が好きで、この先もずっと変わらない。お前のこと好きになるなんて無理なんだよ...実来と付き合うことも、振られることもできないのに、他の人のことなんか考えられないんだよ....だって、実来はもういないんだから」
夏輝はそう言って流れ出た涙を拭った。
綾花も涙を流し、ゆっくりと夏輝に近づいた。
綾花は後ろから夏輝を抱き締めた。
夏輝はビクッとして、「離せよっ...!俺に触んな...!」と動き出し、綾花は「離さない...!今は離せないよ...」と呟き、夏輝を抱きしめる力を強めた。
「...大好きなんだね、実来ちゃんのこと」
そう言われ、夏輝は泣きながら唇を噛み締めた。
「泣いていいんだよ...我慢しなくていいんだよ」
綾花に言われ、夏輝は目頭が熱くなった。
「私のこと好きじゃなくてもいい。好きにならなくてもいい。ずっと実来ちゃんを好きでいていい。でもたまには誰かに甘えないと疲れちゃうし、それくらいは実来ちゃんも許してくれるでしょ...?」
夏輝は、気づけば次から次へと涙が溢れて、止まらなくなっていた。




