向日葵とマリーゴールド
綾花がリビングへ行こうとすると、夫人は「あれ、えっと....夏輝君のお部屋にあと持って行くから待っていいのよ」と優しく微笑んだ。
綾花はキョトンとしてから「お、お部屋ですか....!?」と顔を赤らめた。
「あ、ごめんなさい私がいたら気を遣うかと思ったんだけど...」
夫人は困惑したように言うと、「あ、夏輝君もう熱は下がってるから大丈夫だと思うわ。ちょっとまってね、呼んでくるわね」と言って階段を上がって行った。
すると声が聞こえたのか、夏輝の方から出てきた。
夏輝は階段から玄関を見るなり、ビクッとして「羽住さん..?」と驚いた顔で綾花を見た。
「あ、夏輝君。体調は大丈夫?羽住さん、課題を届けに来てくれたのよ。お茶でも出そうと思ってたの」
夫人がそう言うと、夏輝は「ああ...ありがとう。えっと..」と困惑して2人を見ると、「どうぞ..?」と呟いて自分の部屋の方を見た。
夏輝に続き、夏輝の部屋に入ると、綾花のニヤニヤした表情がゆっくりと消え、ドキドキしていた鼓動は治まった。
綾花の目に飛び込んできたのは、テーブルの上に置いてある『黄色』のスマホ。
そして『黄色』のカーテンだった。
男の子の部屋だというのに妙に明るい雰囲気は、窓際に置かれた1輪の向日葵と、マリーゴールドのせいだと思った。
「わざわざありがとね。その辺適当に座って」
夏輝はそう言ってベッドの前のクッションを顎で指し、ドア側に座った。
「あ、ううん!むしろお茶頂いて申し訳ない....」
綾花が苦笑すると、夏輝はフッと笑って「いやわざわざ来てくれたんだしお茶くらい」と言った。
そう言った時、燈子が部屋をノックし、「これ良かったら」と言ってお茶と和菓子を夏輝に渡した。
夏輝は「ありがとう」と受け取り、綾花は「ありがとうございます!」と微笑んだ。
燈子は微笑み、夏輝の部屋を後にした。
夏輝はお盆からお茶を下ろし、綾花の前に「どうぞ」と出した。
「ありがとう!いただきます!」
綾花はそう言ってお茶を一口。「美味しい!」と言って夏輝を見ると、夏輝は「ふは、別に普通のお茶でしょ」と笑った。
「夏輝くん家で飲むお茶は格別だよっ!」
綾花はそう言って満足気に微笑んだ。
でも、視界に入る黄色のカーテンは、胸を締め付けるような痛みを与えた。




