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怪物  作者: 水野 すい
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黄色とオレンジ色

その週の土曜日、綾花は朝起きて、まだ明るいうちにあの雑居ビルに行ってみた。

夕方見る時とは違って、まったくと言ったら嘘になるが、不気味さが半減して見えた。


綾花は「失礼しますっ」と言いながら中へ入り、一応エレベーターのボタンを押してみた。

エレベーターは無反応で、「だよね..」と呟き階段へ。


夏輝が何階に行ったのかが分からなかった為、すべての階を見てみた。

どこも廃墟らしい部屋ばかりで、当時のものが乱雑に残ったままになっていた。


5階まで登ったあたりで、床の足跡を見て足跡がないことに気づいた。

足跡が向いている方向へ、上へ上へ。


息もあがってきた頃、足跡は屋上にたどり着いた。

屋上のドアを開けると、キィィと古い音がした。


屋上はだだった広くて、汚れたベンチや机がちょっとだけ置いてあった。

綾花はゆっくりと屋上に出て、辺りを見渡した。

その中で気になったのは、ただ1つ。


「なにこれ...........」


綾花の視線の先には、オレンジ色と黄色のマリーゴールドの花束と、4本の『ふるふるゼリー』が置いてあった。


真新しい花束と、綺麗な4本のゼリー缶が置いてある場所だけ、まるで時空が歪んでいるように、どこかから空間を切り取ってきたかのように見えた。


屋上の床も、ビルの壁も、置いてある物もすべて古くて汚くて、埃が被っている。

綾花はゼリー缶を1本手に取り、先日夏輝が自販機で缶の飲み物を買っていたことを思い出し、ハッとした表情で「相原くんが...?」と、缶を見て呟いた。


花も、置いてあるミカン味の缶も、すべてがオレンジ色と黄色。

花束のラッピングのリボンもまた、オレンジ色と黄色。


綾花は神妙な面持ちで辺りを見渡し、しばらくの間、綺麗でもない景色をただ眺めていた。



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