父親っぽい人
「えっ恭介君じゃあめっちゃ頭良いんだっ!?すご..」
それからしばらく話し、恭介が高校名を言ったとき、愛実は驚いた顔をした。
「全然そんなことないよ。暇だから勉強してるだけ。愛実ちゃんは......」
恭介はそう言って愛実を見た。
平日だというのにキャミソールにショートパンツ、派手な茶色の髪。
「ああ、ええと...私も一応高1ではあるんだけど、定時制だし、全然行ってないの」
愛実は少し恥ずかしそうに呟いた。
恭介は表情を変えることなく穏やかに「そっか」と呟いた。
「さっき、家に帰りたくないとか言ってたって言われてたけど...何かあったの?」
恭介が言うと、愛実は「ああ...」と言ってから苦笑して言った。
「うち、母親しかいないんだよね。父親っぽい人も随分前にいなくなったし...色々あって、上手くいってないんだよね、うち。それで帰りたくなくてフラフラしてたらさっきの奴が泊めてくれるって言うから着いてっちゃって、そしたらいきなり襲われたから逃げたの。で、さっきの.....助けてくれてありがとね」
愛実に言われ、恭介は「大変だったんだね。無事で良かった」と微笑んだ。
愛実は少し恥ずかしそうにしながら目を泳がせ、「あ」と呟いてカバンから飴を1つ出した。
「今はこれしかないけど、今度またお礼させて。はい」
愛実に飴を差し出され、恭介は嬉しそうに「ありがとう」と微笑み、飴を受け取った。
愛実と連絡先を交換し、愛実と別れた恭介は、寮のある方向へと歩き出した。
途中、公園を通った際、恭介はポケットから先ほどの飴を取り出し、公園のゴミ箱に歩み寄った。
ゴミ箱の前まで行くと、恭介は目を位置まで飴を持ち上げ、飴を見つめた。
「べらべら喋っちゃって」
恭介はいつものように微笑みながらそう呟き、躊躇うことなくゴミ箱に飴を投げ捨てた。
恭介はすぐに視線を上げ、帰路についた。




