接触
川本愛実はアパートの一室を飛び出し、走って路地に入った。
ゴミ箱を倒し、振り返りながら精一杯走った。
路地を出たところで安堵したように息をつくと、「おい!」と腕を掴まれた。
顔を上げると、あの男。
「お前家に帰りたくねーって言うから泊めてやるっつってんのに金持って逃げるとか...クソ女だな!いいだろ1回くらいやらせろよ!どーせ何回も抱かれたことあんだろーが!」
「やめて...!離してよ!お金なら返すからっ!」
愛実はそう言いながら必死に抵抗する。
男は「うるせーな!」と言って愛実の頬を叩いた。
「離してよっ...!」
愛実が泣きながらそう言った時、「あの、どうかしましたか」と声がした。
2人が声の方向を見ると、1人の男子高校生がいた。
彼は2人に近づきながら「一応通報しておきましたけど、逃げなくて大丈夫ですか?お兄さん」と男を見て微笑んだ。
男は「くそガキが....!」と言って走ってその場を後にした。
彼は「大丈夫?」と愛実に歩み寄り、愛実の腫れた頬を見て優しく手を添えた。
「手当した方がいいね」
駅の近くの公園に移動し、彼は愛実の頬にシップを貼り「はい、これで大丈夫」と微笑んだ。
「あ、ありがとう....」
愛実は警戒しながらも、彼を見上げて小さな声で言った。
彼は微笑み「ううん。気にしないで。君が無事で良かった」と微笑み、「じゃあ俺はこれで」と立ち上がった。
愛実は「あっまって..!」と彼を見た。
「お礼...お礼したいから!その、名前教えてくれない?あ、私、川本愛実...!」
愛実がそう言うと、彼は優しく微笑んで言った。
「恭介。峯恭介だよ」




