女の子
それから3年が経ち、俺たちは6年生になった。
6年生になっても3人でいることには変わりなくて、いつもと同じ日常を過ごしていた。
だが心が大人に近づいていくにつれて、俺の中で少し変化もあった。
「実来ちゃんは夏輝くんと恭介くん、どっちがカレシなの?」
掃除中、廊下でクラスメイトたちと遊んでいたら聞こえてきた女子の会話だった。
鬼ごっこをして上機嫌だった俺だったが、この言葉が聞こえてきて、つい足を止めてしまった。
「なっちゃんも恭ちゃんもカレシなんかじゃないよ~。大事な家族だから」
そう言ったのは実来だ。
「えーでもでも、ちょっとは男の子として見たことあるでしょー?」「2人とも実来ちゃんのこと大好きだし、実来ちゃん次第じゃないー?」
「いいなあ実来ちゃん、2人に守ってもらえて♡」
なんて、他の女子の声が聞こえて、俺はますますその場から動けなくなっていた。
実来が「うーん」と言った時、「なっちゃん」と肩に手を置かれた。
夏輝が「えっ!?」と振り返ると、恭介の姿が。
「え、そんなに驚く?何回も呼んだのに」
恭介は不思議そうに首を傾げた。
「あ、あ、そうなの?ごめんごめん。なに?」
夏輝は教室の中を気にしながら言った。
「いや、今日3人で海行こうよって言おうと思ったんだけど...教室に何かあるの?」
恭介はそう言って教室の中を覗いた。
夏輝は「いや!なんもないって!」と恭介の腕を引っ張り、教室を離れた。
結局放課後、3人で近くの海に来た。
「うわあーっ!きれいだね!」
実来は嬉しそうに笑い、隣にいる夏輝を見た。
夏輝は恥ずかしそうに実来から視線を逸らし、海を見て「だな..!」と言った。
そんな二人を恭介はキョトンとしたような表情で見るとすぐに微笑み「ちょっと入ろうよ」と言って靴を脱いだ。
「おーっ!入ろ入ろっ!」
夏輝もそう言って靴を脱ぎ、恭介と一緒に走り出した。
「あ、ねえちょっと待ってよっ!」
実来はそう言いながら靴を脱ぎ、急いで2人の後を追った。
海で遊びながら、実来が「わっ…!」と転んだ。
近くにいた恭介は笑いながら「大丈夫?」と言って実来に手を差し伸べた。
「うん〜もうびちゃびちゃだよ〜…ありがとう恭ちゃん」
実来はそう言って恭介の手を握り、立ち上がった。
夏輝は2人を見ると一瞬だけ目を逸らし、すぐに笑って「何やってんだよ鈍臭いな」と2人に近づいた。
恭介はそんな夏輝を見て瞬きをした。
施設に戻り、実来が2年生の子たちと一緒にドリルをやっていた時、夏輝は隣で宿題をやっている恭介に言った。
「あーもうっ、俺社会って本当嫌いだーっ」
夏輝はそう言って体を倒し、鉛筆を持ったまま仰向けになった。
恭介はそんな夏輝を見ると、自分も体を倒して仰向けになり、「ねえなっちゃん」と夏輝の方を見た。
「んー?」
夏輝が鉛筆をクルクルと回しながら答えると、恭介は真顔で言った。
「なっちゃんって、実来ちゃんのこと好きなの?」
そう言うと夏輝は「はあっ?!」と言って勢い良く体を起こした。
恭介も静かに体を起こす。
「なんだよ急に…?!別にそんなんじゃねーよ…!」
慌てた様子でそう言う夏輝に、恭介は落ち着いたまま言う。
「そうなんだ。ていうか、何をそんなに焦ってるの?俺は実来ちゃんのこと好きだよ」
「はあっ?!?え、ちょ、まって…!まじ?!」
「うん。だって家族だと思ってるし」
真顔でそう言う恭介に、夏輝は「…は?」とポカンとした表情を浮かべた。
「昔からずっと一緒にいて、好きじゃないわけないでしょ?」
恭介がそう言うと、夏輝はどこか安堵したようにヘラヘラし出した。
「なんだよ〜〜紛らわしい言い方すんなよな〜〜〜…」
「紛らわしいって、他に何があるの?なっちゃんは実来ちゃんのこと家族だと思ってないの?」
淡々と優しい顔でそう言う恭介を見て、夏輝は恥ずかしそうに口を尖らせた。
「いやっ…だから…!家族だと思ってるけど…なんて言うか、お前のとはちょっと違うっつーか…」
ブツブツ小さな声で呟く夏輝に、恭介は淡々と言う。
「ん?なに?」
「いやっ…!とにかく!理解できないならそのままでいてもらえると助かるっつーか…恭介とはずっと仲良くしていたいしー…」
恥ずかしそうに遠くにいる実来を見ながら話す夏輝を、恭介は真顔で見つめていた。
「ふうん。何か分かんないけど、俺となっちゃんはずっと仲良いままだよ。絶対に」




