不自然なこと
「だから塚本さん、恭介君のこと気になってたんっすもんね」と今村。
「ああ。実来ちゃんの自殺当時から落ち着き過ぎてる子供だとは思ったけど、父親と母親のダブル不倫の中で生きてたんだ。菜々美ちゃんの事件が起きた時に恭介の父親の名前が出てきて、まあ、そんな環境で育ったんじゃ恭介も慌てもしなくなるかなんて納得しちゃったよ。ただ、恭介と繋がりのある人間が3人も死んでるってことだけが気がかりだよ俺は」
塚本がそう言うと、今村は「えっ」と言って驚いた顔で言った。
「それって、百田実来ちゃん、川本菜々美ちゃん、峯彰浩の3人ってことですよね?でも菜々美ちゃんは恭介君とは直接的な繋がりはないし、峯彰浩も実来ちゃんも、恭介君にとっては家族ですよ?まさかまだ何か疑ってるんですか!?」
「分かってるよバカ。でも、この間夏輝の里親に会った時聞いたんだよ、夏輝、中学時代は成績が良くて、いつも1番か2番だったって」
「...え、その話関係あります???」
今村は不思議そうに塚本を見た。
塚本は呆れた表情で言う。
「それで夏輝が通ってた中学行って話聞いたんだよ。『1番か2番』って、夏輝と恭介のことだったんだよ。いま夏輝と恭介は偏差値の高い進学校に通ってる。賢いんだよ、恭介は」
塚本の話を聞き、今村は「..塚本さん」と顔をしかめた。
「いくら恭介君がどれだけ頭が良くても、峯彰浩が死んだ火事が起きたのは恭介君がまだ9歳の時、実来ちゃんが亡くなったのは12歳の時、菜々美ちゃんが亡くなったのは15歳の時です。今もまだ17歳で、子供ですよ?それだけ辛い思いして一生懸命生きてる恭介君に疑い向けるなんて、どうかしてますよ」
今村に言われた塚本は「分かってる分かってる」と今村を宥めるようにしてから言った。
「俺だってそう思うよ。でもどうしても偶然には思えないんだ。3人だぞ?2人ならまだしも、そんなことって有り得るか?まあ…峯家の家事は放火で不審は点はなかったし、百田実来も誰かと争った形跡はない、川本菜々美の事件も犯人は捕まっているし、それだけなんだけどなあ」
塚本も自信がなさそうに、どこか腑に落ちない様子でそう言い、頭をかいた。
「それに、そう言いながら恭介にも幸せになって欲しいとも思ってる。夏輝や愛実ちゃんに対する気持ちと同じでな」
塚本の言葉を聞き、今村は「…そうですよね。すいません取り乱しちゃって」と少し俯いた。
「っていうか夏輝君に会ったんですか?何で僕にも言ってくれないかなあ」
今村は不服そうに塚本を見た。
「もううるさいなあお前はーっ。夏輝、警察に入るんだって言ってたよ」
「えっまさか僕に憧れてとか…なわけないか。結局、実来ちゃんが亡くなった理由、見つけられなかったし…」
今村はそう言って俯いた。
塚本はフッと笑った。
「俺もそう言ったよ。『んなわけねーだろクソが』って呆れられちゃったよ。はは。あいつ昔より生意気になっててさあ、一丁前に女の子とデートなんかしちゃって…大きくなってたよ」
塚本が言うと、今村は「そうですか」と嬉しそうに微笑んだ。
「夏輝君も恭介君も、ちゃんと前向いてるんですね。あんなことがあったのに…勉強して進学校入って、すごいなあ」
今村はそう言いながらシートベルトを締めた。
「恭介にも会いに行きたいんだけどね。あいつ、里親の家出て高校の寮で暮らしてるんだと。ふらっと会いに行くにはなかなかね〜。まあ、必ず会いに行くけどさ」
塚本もそう言いながらシートベルトを締め、タバコを咥えた。
今村はニコニコしながら「僕、タバコ苦手なんで勘弁してくださいよ」と言って塚本の口元からタバコを取った。
「ああ…久しぶりに若者と接したよ…」
塚本は落胆した表情でタバコをしまった。




