またあの場所で
恭介・夏輝 17歳
恭介は網の上で燃え盛る炎を見つめた。
「おいっ!」
言われ、恭介はハッとして向かい側にいる夏輝を見た。
夏輝はトングを手に、「氷入れろよ!燃えてんだよっ」と恭介の前にある氷をトングで指した。
「ああ、ごめんごめん」
恭介はそう言って微笑み、燃える火の上に氷を置いた。
氷が溶けていくのと同時に、火はおさまっていく。
「お前が焼肉がいいって言ったんじゃんか。ちゃんと焼けよっ」
夏輝に言われ、恭介は笑った。
「はは。だって4年ぶりになっちゃんと夜ごはん食べるんだよ。せっかくならパーティっぽい方がいいでしょ?なっちゃんいつもカレーばっかり食べてるし」
「別に特別なことでもないんだし、パーティ感いらねえよっ」と夏輝。
「特別なことだよ。俺にとっては」
「なんだよ気持ち悪~~....」
夏輝はそう言って顔を引きつらせた。
「この間、あのビルの屋上でなっちゃんに会えて良かった。またこうして話したいと思ってたから」
恭介の言葉に、夏輝は少し沈黙した。
肉が焼ける音だけが耳に届いた。
「..俺だってそうだよ。本当は話したかった。でも、実来のことが浮かぶとさ」
夏輝はそう言ってウーロン茶を飲んだ。
食事を終えると、2人はまた『ふるふるゼリー』を手に、あの雑居ビルの屋上に来た。
端まで歩くと、当然のことながら前回2人が置いたマリーゴールドとゼリーの缶がまだ置かれたまま。
「ここ、本当に誰も来てないみたいだね。俺たち以外」
恭介はそう言いながらしゃがみ、前回置いたゼリー缶の横に持ってきたゼリー缶を置いた。
「そうみたいだなあ」
夏輝もそう言ってしゃがみ、ゼリー缶を置く。
そのまま床に腰を下ろし、夏輝はまた景色を眺めた。
「…この間さ、塚本さんに会ったよ」
夏輝に言われ、恭介は夏輝を見た。
「塚本さんって、あの時の刑事さん?」
「そう。あの人何も変わってなかった。で、説教されちった」
夏輝はそう言って苦笑し、恭介を見た。
「説教?どうして?」
「うーん、ちゃんとお前の人生生きろとか、何かそういう感じ。恭介のことも気にかけてたみたいだった」
「そっか。あの人、実来ちゃんの事件のこと、熱心に調べてくれてたみたいだもんね。俺たちが変なことしてないか心配なんだろうね。特になっちゃんのことは」
「は?何で俺?!」
「だってあんなに泣きじゃくって、大人に楯突いてた子供だよ?グレてないかとか、犯罪に関わってないかとか、分かんないけどそういう心配してたんじゃないかな」
恭介は穏やかに微笑みながら言った。
夏輝はあの日の塚本のことを思い出しながら「まあ…それはそうかも」と苦笑した。
「まあでも、塚本さんに言われたからって生き方変えるつもりはねーけど、何かちょっとだけ安心したっつーか、肩の力抜けたっつーか」
夏輝はそう言って両手を床に着き、空を見上げた。
「信じてもいい大人ってちょっとはいるのかなーなんて思ったりしてさ」
夏輝の言葉を聞き、恭介は「そうだね」と自分も空を見上げた。
「実来のこともまだ諦めてないって言ってたし、俺の里親の両親もすげー優しくしてくれるし、俺のこと保護してくれた役所の姉ちゃんからも連絡来るし。俺が生きてるってだけで喜んでくれる人がいるんだなあって思ったっていうか。俺がいないところで俺のこと考えてくれる人がいるなら、もう少し笑ってもいいのかなーって思ったりとかしちゃって」
夏輝は照れくさそうに笑って恭介を見た。
恭介は「うん」と微笑み、夏輝を見て言った。
「俺もだよ」
「え?」と夏輝。
「俺もなっちゃんが生きててくれるだけ嬉しい」
「お前そういう気持ち悪いことよく言うよな……」
夏輝は顔を引きつらせて恭介を見た。




