5年ぶり
「久しぶりだなあ、夏輝。男前になったんじゃないかー?元気だったか?」
塚本に言われ、夏輝は塚本から視線を逸らし、近くのフェンスに寄りかかった。
「...元気そうに見えます?」
呆れたように笑う夏輝を見て、塚本は少し考え込んでから口を開いた。
「黄色の携帯持って、カレーライスが好きで、女の子家まで送るなんて優しいことしちゃって。中身は何も変わってないな」
夏輝は顔をひきつらせて塚本に言った。
「1日尾けてたんすか?信じらんねえ...」
「いやいやっ。女の子家まで送ったところしか見てない。カレーも、携帯もお前の里親に聞いた」
塚本がそう言うと、夏輝は呆れたようにポケットから例の『黄色のスマホ』を出して塚本に見せた。
「塚本さん、今の時代これは携帯じゃなくてスマホって言うんですよ。変わってないのはどっちすか...」
夏輝はそう言ってスマホをポケットにしまい、溜息をついてそのまま両手をポケットに突っ込んだ。
「おじさんになるとなあ、数年じゃそう変わんねーよ。お前の5年と俺の5年は全然違うんだよっ」
塚本はそう言いながら夏輝の腕を引っ張り、近くのベンチまで引っ張った。
夏輝は不機嫌そうについていく。
「さっきの、彼女か」
塚本が言うと、夏輝は辺りを適当に見ながら「違いますよ」と面倒臭そうに呟いた。
「そうなの?お前若いのに彼女の1人もいないの」
「...いらないっすよ、そんなもん。興味ないし、興味なんか持てない」
そう言う夏輝を見て、塚本は「...背もそんなに伸びて、こんな小さかったのにな?」と言って適当な位置に手をかざした。
そう言われ、夏輝は実来に自分が『チビ』と言われていたことを思い出した。
「....別に。5年経ったら背も伸びますよ」
そう言われ、塚本は話題を変えた。
「...お前の里親に会ったよ。勉強頑張ってんだって?いつも1番か2番だって聞いたぞ?すごいじゃないの」
「別に。やることないから勉強してるだけ」
「それでもすげーだろ、実力は実力なんだからさあ。将来なりたいものとか決まったか?17歳ならまだかーーーー」
塚本がそこまで言うと、夏輝は塚本を見て言った。
「警察」
「え?なにお前、警察官になりたいの?もしかして俺に憧れてとかそういうこと?照れるじゃないの」
塚本がそう言うと、夏輝は呆れた様子でまた辺りを見ながら口を開いた。
「ちげーよ、んなわけねーだろクソが。警察入って、偉くなって、実来が死んだ時のことちゃんと調べ直すんだよ」
淡々とそう言う夏輝に、塚本は「...お前、やっぱ全然変わってねーな」と呟いた。
「変わるわけねーだろ。諦めてたまるか」
夏輝がそう言うと、塚本は少し沈黙してから微笑んだ。
「偉くなってってお前、そんなぼんやり言ったってさあ〜?そんな簡単なことじゃねーぞ?警察ってのは面倒臭くてなあ、エリートになるのも並の苦労じゃーーーーー」
「分かってるよ。だから勉強してんの」
夏輝はそう言うとため息をつき、また口を開いた。
「東大に行く。実来の為なら血吐きながらでも努力できる。自分で調べられるようになって、もう塚本さんたちになんか頼らない」




