家族
だが、次の瞬間に俺たちの期待は裏切られた。
恭介はイライラしたように差し出されたチョコをあしらい、俺の手からチョコが床に落ちる音がした。
「あ、お前。食べ物粗末にすんなよなあ」
俺はそう言いながらチョコを拾い、「3秒ルールだからまだいける」と言って自分でチョコを食べた。
実来が「もうー、落としちゃったなら新しいの、もう1個もらってくるね!」と笑った時、俺たちは初めて恭介の声を聞いた。
「....お前ら、なんなんだよ毎日毎日。うざいんだよ。俺の気も知らないでヘラヘラされてむかつくんだけど」
怒鳴るように言う恭介を見て、俺たちは少し固まった。
俺は小さく溜息をついて少し笑った。
「知らねえよ、お前の気持ちなんか」
俺が言うと、恭介は更にイライラしたように「は?」と俺を睨んできた。
「いいか。ここにいる奴らみんな親がいないか、捨てられた奴なんだよ。俺も実来もそうだ。気持ちは分かるけど、自分だけ辛いみたいな顔してんじゃねーよ。何があってここに来たのかは知らねーけどいつまでもいじけてないで、前向かなきゃいけないんだよ。俺たちみたいな子供は」
「分かったようなこと言わないでよ。君たちに俺の気持ちなんか分からないよ。俺はずっと1人だったんだから。そんなにいつも楽しそうにして、ちょっとうざいかな」
そう言われ、俺はクスっと笑った。
「ならここに来て正解じゃん?」
「は?」
「だってこれからは、お前はもう1人じゃないんだからさ」
夏輝に言われ、恭介はただ瞬きをして夏輝を見つめていた。
「俺も実来も、先生たちも、ここにいるみんながお前の友達だし、家族だろ。今までが1人だったなら、これからいっぱい楽しめよ。俺は家にいた時より、今の方が幸せだぜ」
すると、実来も微笑んで言った。
「そうだよ恭ちゃん。私たちはもう家族なんだよ。もう1人になんてさせないからね」
ここからだ。
もし今、俺が過去に戻れるとしたらきっとこの日に戻るだろう。
俺の人生の歯車が狂いだしたこの日に。




