↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物  作者: 水野 すい
PR
1/100

はじまりの日

9年前・2017年 12月


「はーい、みんな!今日は新しいお友達を紹介します!恭介(きょうすけ)君、おいで」


そう言われ、部屋に入って来たのは俺と同い年くらいの男の子だった。

自信がなさげで、酷く俯く彼を見て、俺は『こいつはどんな理由があるのだろう』と思った。

ここに来る子供なんかみんな、彼のように暗い顔をしている。

記憶は薄いが、俺も恐らくそうだったと思う。

そりゃそうだ。好きでこんなところに来る子供なんかいないし、理由も分かっていないことが殆どだ。

何も珍しいことはない。


食事の時間になっても、恭介はずっと俯いたまま口を開こうとも、目の前のカレーに手をつけようともしなかった。

ただ黙って俯いて、たまに泣きそうな顔をしていた。


「なあ、お前恭介って言うんだろ?俺は夏輝(なつき)。カレー、辛いけど結構美味しいんだぜ」


隣へ行き、俺がそう言っても恭介がスプーンに手を伸ばすことはなかったし、こちらを見ることもなかった。

今でこそ笑いながら呑気にカレーを食べているが、みんな最初は大泣きしていたり、静かに泣いていたり、ショックで喋れなくなってたり。

俺も1年前はそうだった。


それから毎日、俺は恭介に話しかけた。

無視されるか、どちらかと言うと煙たがっているような表情を見せる恭介に、俺は少し反応してくれたのだと喜びすら感じていた。

だが、恭介に話しかけているのは俺だけではない。


「なっちゃんなっちゃん!これ、恭ちゃんに持って行ってあげよ」


そう言ってチョコを持って来た実来(みく)に、俺は「よし!持って行こうぜ!」と笑いかけ、2人で恭介の元へ行った。


「恭ちゃん、これ一緒に食べない?美味しいよ~」


実来の問いかけにも、恭介はいつも反応を示さなかった。


「いらないなら俺と実来でお前の分も食っちまうぞー?」


俺はそう言いながら菓子の包装紙を開け、実来と分けて食べ始めた。


「わっ!何だよこれ、うめ~」


「わ~~すっごく美味しいね!ほら、恭ちゃんの分なくなっちゃうよ!」


わざとらしくリアクションする俺と実来に、さすがにうるさかったのか、恭介は顔を上げて俺たちを見た。


「今なら特別にあげてもいいけど?」


俺が笑いながらチョコを差し出すと、恭介は表情こそないが無言でそのチョコを見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。