はじまりの日
9年前・2017年 12月
「はーい、みんな!今日は新しいお友達を紹介します!恭介君、おいで」
そう言われ、部屋に入って来たのは俺と同い年くらいの男の子だった。
自信がなさげで、酷く俯く彼を見て、俺は『こいつはどんな理由があるのだろう』と思った。
ここに来る子供なんかみんな、彼のように暗い顔をしている。
記憶は薄いが、俺も恐らくそうだったと思う。
そりゃそうだ。好きでこんなところに来る子供なんかいないし、理由も分かっていないことが殆どだ。
何も珍しいことはない。
食事の時間になっても、恭介はずっと俯いたまま口を開こうとも、目の前のカレーに手をつけようともしなかった。
ただ黙って俯いて、たまに泣きそうな顔をしていた。
「なあ、お前恭介って言うんだろ?俺は夏輝。カレー、辛いけど結構美味しいんだぜ」
隣へ行き、俺がそう言っても恭介がスプーンに手を伸ばすことはなかったし、こちらを見ることもなかった。
今でこそ笑いながら呑気にカレーを食べているが、みんな最初は大泣きしていたり、静かに泣いていたり、ショックで喋れなくなってたり。
俺も1年前はそうだった。
それから毎日、俺は恭介に話しかけた。
無視されるか、どちらかと言うと煙たがっているような表情を見せる恭介に、俺は少し反応してくれたのだと喜びすら感じていた。
だが、恭介に話しかけているのは俺だけではない。
「なっちゃんなっちゃん!これ、恭ちゃんに持って行ってあげよ」
そう言ってチョコを持って来た実来に、俺は「よし!持って行こうぜ!」と笑いかけ、2人で恭介の元へ行った。
「恭ちゃん、これ一緒に食べない?美味しいよ~」
実来の問いかけにも、恭介はいつも反応を示さなかった。
「いらないなら俺と実来でお前の分も食っちまうぞー?」
俺はそう言いながら菓子の包装紙を開け、実来と分けて食べ始めた。
「わっ!何だよこれ、うめ~」
「わ~~すっごく美味しいね!ほら、恭ちゃんの分なくなっちゃうよ!」
わざとらしくリアクションする俺と実来に、さすがにうるさかったのか、恭介は顔を上げて俺たちを見た。
「今なら特別にあげてもいいけど?」
俺が笑いながらチョコを差し出すと、恭介は表情こそないが無言でそのチョコを見つめた。




