3人の子供
喫茶店に移動した2人は、改めて話し始めた。
「百田実来は6歳の時、実来と両親の3人を乗せた車が居眠り運転のトラックと衝突し、両親は即死。実来は軽い怪我を負ったものの生還。母親も父親も、実来を守るように亡くなっていた。その後実来は親戚もあまりおらず、あの施設に入った。それから1年後、相原夏輝が施設に来ている」
塚本がそう言い、今度は今村が資料を見ながら言った。
「相原夏輝は幼少期からずっと両親の育児放棄、虐待に遭っていた。3歳下の弟ができてからは、夏輝がほぼ1人で面倒を見ていた為学校は休みがち。そして8歳の時、小学校のイベントで市役所の見学に行った際に職員が夏輝の痣を発見し、通報、保護。そしてその頃3歳の弟、相原秋人はベランダに放置され、凍死。その後施設へ....」
今村に続き、塚本が言う。
「峯恭介は9歳の時に家が放火され両親は焼死。育児放棄や虐待の報告はなし。兄弟もおらず、放火犯は未だ逃走中...両親の遺体は顔が判別できないほど酷い損傷で、状況や歯の治療痕から両親であると断定され、身寄りのなくなった恭介はあの施設に入る、か」
塚本がそこまで言ったところで、今村は顔をしかめた。
「本当...酷い話っすね。あの子たち、幼い頃からこんな辛い思いしてきたってのに、何でこんなことになっちゃったんですかね...さんざん辛い思いしたんだから、幸せな未来だけで良かったはずなのに」
「実来ちゃんは...亡くなったあの日、夏輝君に告白しようとしてたんですよね。両親を失って、家を失って、つらい思いをして出会った夏輝君と、恭介君と仲良くなって、支え合いながら生きて、恋をして、親友を手に入れて、まだまだこれからだったのに...不公平ですよ」
今村はそう言って軽くテーブルを叩いた。
「お前が感情的になってどうするんだよっ」と塚本。
「だって....悔しいじゃないですか。つらい思いをした分だけ、幸せがあって良いじゃないですか。知ってます?人生って、つらいことと幸せなこと、量が決まってるらしいんです。ただそれが、長い人生の中でいつ起きることなのか分からない。タイミングが違うだけで、量は同じだって。でも、そんなの綺麗事ですよ。嘘ですよ。だって実来ちゃんは、12年しか生きていないに、幸せの量が少なすぎるじゃないですか...!夏輝君や恭介君だって、今も苦しんでる」
今村の言葉に、塚本はため息をついて言った。
「...でも、実来ちゃんが自殺したとしたら、それが実来ちゃんの幸せだったってことなのかなあ...」
「そんな...!あれは絶対に自殺なんかじゃないですよ。根拠は、あの手紙しかないですけど..でもやっぱり僕はそう思うんです...!」
「分かってるよ。俺だってそう思ってる。夏輝の直感は間違ってないって、俺も思ってる。でも、どう見たって現場は実来が飛び降りたとしか考えられない...」
塚本は悔しそうにそう呟き、落ち着かせるかのようにコーヒーを飲んだ。
「実来ちゃんは、何で......」
今村も悔しそうに呟き、髪を掻いた。




