今なら言えるのに
「っていうか、こんな暗いとこに1人でいて怖くないの?」
恭介が笑うと、夏輝は「お前もだろ」と笑った。
「それはそうだけど、なっちゃんはよく来てるんじゃない?」
「まあ、うん...なんとなくふらーっと来たり、嫌なことがあった時に来たり。ほら、実来の墓はふらっと行けるほど近くねーだろ。だからさ」
「...ここ、心霊スポットとか言われてるらしいよ。『自殺した少女の亡霊が彷徨ってる』とか。好き勝手言ってくれるよね」
恭介がそう言うと、夏輝は吹き出すように笑い、また辺りを見ながら言った。
「...彷徨ってんなら亡霊でも何でもいいから出てきて欲しいもんだけどな。そしたら毎日会いに来るし。てかここにテント建てて住むわ」
「くだらない冗談言えるくらいには元気になったみたいで安心したよ。でも、そしたら俺も一緒にそのテントで暮らそうかな」
恭介もそう言って笑った。
夏輝はフッと笑い、「だめー」と言って恭介を見た。
「ええ、どうして?」
「だって俺と実来の家だから。同棲ってやつ?」
夏輝が笑いながら言い、恭介は「じゃあ俺は居候でいいよ」と言った。
「ふは、お前邪魔すんなよ。趣味悪いね〜」
夏輝はそう言って笑い、「はあーあっ」と背伸びをした。
「何か久しぶりに恭介と話したら、やっぱ戻りたくなっちゃうわ」
「5年前に?」
「うん。いや、何年前でもいい。実来が生きてた時代ならいつでも。一生そこで時間が止まればいい」
「そしたら、今ならちゃんと言えるのに。毎日でも『かわいい』とか『好きだ』とか、言いたいのに...」
夏輝はそう呟き、また涙が流れた。
恥ずかしそうに涙を拭いながら「あ、そうだそしたら..!」と恭介に顔を見られないように反対を向きながら「そしたら手繋いだり、チューしたりしたいよなあ...!あの時はよく分かんなかったけど、やっぱ照れないでしとくべきだったなあ...!」と言った。
夏輝の声はだんだん震え、鼻を啜る音が大きくなっていった。
「俺も..手紙とか書いちゃってさ..!ハートのシールとかいっぱい貼って...背もこんなに伸びたし...あいつのこと見下ろしてバカにしてさ...!いっぱい...いっぱいやりたいことあったのに...今ならこんなに思いつくのに...」
夏輝の背中を見て、恭介は「...なっちゃん。俺はやっぱり諦めてないよ」と言った。
夏輝は目を擦りながら苦笑し「何をだよ」と呟いた。
「あの日、この場所で、実来ちゃんは自分で飛び降りたりなんかしてない。だって実来ちゃんは、今なっちゃんが言ってたこと全部、なっちゃんとしたかったはずだから」
「恭介....」
夏輝はそう言って振り返った。
夏輝の目は真っ赤に充血し、次から次へと涙が溢れていた。
「いつか真実が分かるって信じよう。それで俺たちは、目一杯幸せになって、100歳まで生きて、笑いながら死んで、天国で実来ちゃんとまた3人で暮らすんだよ」
恭介はそう言ってまた、優しく微笑んだ。




