止まったまま
2026年・5月
百田実来の死は、結局それらしい証拠も証言も見つかることなく5か月後には自殺と断定された。
時効制度が撤廃されたお陰で、もし今後有力な証拠が見つかった場合には遡及して殺人事件として切り替わることもあると、塚本刑事と今村刑事には言われたが、あれから5年、それらしい情報は未だ何も見つかっていない。
世間じゃ少女の神隠しだとか、親のいない子供の鬱だとか、施設の虐待疑惑だとか、くだらない噂だけが1人歩きして、俺も多少なりとも今で言うアンチってやつを経験した。
それなのに飽きるのは早くて、まるで実来の存在なんて無かったかのように話題はすぐに移り変わった。
実来が死んだ理由を知らないまま時間だけが進み、体だけが大きくなった。
俺の頭の中も、心も、実来に伝えられなかった後悔を噛み締めたあの日のまま止まっている。
「相原ーっ」
教室で声を掛けられ、夏輝はニコッと笑ってから「なにーっ?」と振り返った。
「今日さみんなでカラオケ行かねー?」
言われ、夏輝は「ああ…うん、いいよ!」と微笑んだ。
放課後、夏輝が集合場所に行くと他クラスの知らない女子が3人いた。
「2組の女子が相原と話したいって言っててさ。騙してごめんっ」
そう言われ、夏輝は「いや全然全然!よしっ!カラオケ行こ!」と笑った。
カラオケに行くなり、途中隣に女子が来た。
「ねえっ相原くんって彼女いる?」
言われ、夏輝は「んー?いないよ」と微笑んだ。
「ほんと?じゃあ私、立候補しちゃおっかなー!」
「はは、俺別に面白くないからやめといた方がいいよ。何か飲む?」
夏輝はそう言って自分のコップと彼女の前に置いてあるコップに手に立ち上がった。
「え、ああ、メロンソーダで!相原くんありがと〜!」と言われ、夏輝はカラオケルームを後にした。
夏輝がカラオケルームを出ていくと、先程の女・羽住綾花は口を尖らせた。
「ねえ、相原くんガード硬すぎなんですけど〜〜」
綾花がそう言うと、久遠健人が答えた。
「相原って良い奴なんだけど、中学ん時からなーんか掴みどころないんだよなあ」
「確かに。俺、相原のこと何も知らないわ。あいつ自分の話しないよな」
2人の話を聞き、綾花は「ふうん…」と呟き、夏輝が出て行った扉を見て微笑んだ。
「まあ、ミステリアスな感じ?余計に興味湧いちゃうなあ〜」




