ちゃんと君たちの未来も
「それは....」
今村はまた困惑したように目を泳がせた。
夏輝はまた目に涙が溜まってきたのを感じながら必死に言った。
「だって..おじさんたちは警察なんでしょ?警察は悪い奴を捕まえてくれる仕事なんでしょ...?俺はまだ小学生だから...仕事とかあんまよく分かんないけど、でも...俺たちが信じられる存在ってことでしょ?俺、おじさんたちを信じていいんだよね....?」
そう言ったところで堪えきれなくなり、涙が溢れた。
「なっちゃん...」
恭介は悲しい表情で夏輝を見て呟く。
「実来は...実来はまだ12歳だったんです...!これからやりたいことも、なりたいものも、いっぱいあったんです...!人間は100歳まで生きれるんでしょ...?何でそんな...たった12年で死ななきゃいけなかったのか...分からないまま生きていくなんて俺...無理だよ...」
夏輝が涙を拭っていると、塚本は夏輝の頭に優しく右手を置き、真っ直ぐ夏輝を見て言った。
「おじさんたちは、夏輝君が言うように悪い奴を捕まえる仕事だよ。でももちろん、君が実来ちゃんが亡くなった理由を分からないように、おじさんたちにも分からないことがいっぱいある。だからこうしてたくさん調べて、考えるんだ。もしも、たった12歳の実来ちゃんの人生を奪った悪い奴がいるとしたら、おじさんたちは全力で捕まえる。だからこれから、おじさんたちと一緒にたくさん考えよう。実来ちゃんの為にも、君の未来の為にも」
「俺の…?」
涙を流しながら夏輝は顔を上げた。
「そう、君の。もちろん、恭介君、君の未来も」
塚本はそう言って恭介を見て、再び夏輝に視線を戻した。
「今君たちは、目の前から実来ちゃんがいなくなって世界が真っ暗になっていると思う。悲しいだろうし、悔しいだろう。でもな、君たちはこれからも生きていかなきゃいけないんだ。そうじゃなきゃ、天国にいる実来ちゃんに怒られるだろ?綺麗事に聞こえるかも知れないけど、君たちが幸せに生きていくことが、実来ちゃんの望みだと思うよ。どんな理由があったとしても、実来ちゃんが君たちと過ごして、笑っていた時間は本物だ。おじさんたちは一生懸命実来ちゃんのことを調べる。だから君たちは今すぐじゃなくていい、後悔も背負いながら、しっかり前を向くんだ」
塚本に言われ、夏輝は泣きながら無言で頷いた。
施設を出た後、塚本は「どう思う?あの子」と言いながら歩いた。
「夏輝君ですか?はあ...悲しいですよね...」
今村はそう言いながら運転席へ。
「違うよ。峯恭介の方だ」
塚本は助手席に座り、タバコを咥えた。
「えっ恭介くん?あまり印象的なことは言ってなかったと思いますけど」と今村。
「12歳で、9歳の時から家族同然に育ってきた子が死んだにしては、落ち着き過ぎてなかったか?相原夏輝が感情的だったせいもあるけど」
塚本の言葉に今村は「えっ」と驚いた表情で塚本を見た。
「ちょっと、まさか疑ってるんですか!?あの子まだ12歳ですよ...!?塚本さん正気ですか!?」
「疑ってるとは言ってないよ。妙に落ち着いてるなと思っただけだよ。いちいちうるさいなお前はあ」
塚本は呆れた表情で言った。
「いやいやいや!だってね..?それに、今時ああいう落ち着いた子供もいますよ。泣いてましたし。それに、もし恭介君が何か関わっているとしたら動機は?彼も夏輝君同様に実来ちゃんと過ごしてるんですよ?」
「うるさいなあもうっ。まだ何も言ってないだろ~?まあただ、状況的にはどう考えても百田実来は自分で飛び降りてるんだよなあ....でも相原夏輝宛の手紙がどうしてもこう..引っ掛かる」
塚本はそう言うとタバコに火をつけ、今村は「あ、僕タバコ苦手なんで勘弁してください」と言った。
「もう~....」
塚本はそう言ってタバコを携帯灰皿に入れた。
そして時間はあっという間に過ぎて、俺たちは高校生になった。




