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不老になって数百年間、ずっと剣を振ってたらいつの間にか剣の神様になってたらしい〜侍を目指す少女と自由に世界を旅します〜  作者: 平元桜央


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騎士団長の強さ

「……!」


 ママの連撃を受けながら、あたしの額に汗が滲む。

 木刀を両手で握り締めながら、息を整える暇もない。


 ママの剣が、唸りを上げて振り下ろされる。


『ドガッ!』


「ぐ……!」


 斜めに振り下ろされた一撃が、肩を鋭く叩いた。


 地面に膝をつく。

 空気が一瞬止まったように、観客の騎士たちも息を呑む。


「手加減一切なし……なんだね」


「立ちなさい」


 静かに、しかし命令するように響く声。


「……言われなくても……そうするよッ!」


 あたしはぐっと歯を食いしばり、砂を蹴って立ち上がる。そのまま踏み込み、再びママへと斬りかかる。


 またしてもママは攻撃を弾き返し、連撃を繰り出す。


 あたしの狙いは一点。

 ママに「振らせる」こと。体力を消耗させること。


 そのためには、ママに一瞬たりとも攻めの手を緩めさせてはならない。


 でも、果たしてこの連撃を耐え切れるのか……?


 一撃一撃が、鉄塊を打ち込まれるかのように重く、隙がまるでない。

 あたしが防御しづらい箇所や急所を的確に狙ってくる。


『ガギン!!』


 木剣を構えてガードしていたが、その構えごとガードが吹き飛ばされた。


「しま……!」


 あたしはよろめきながらも必死に体勢を立て直そうとするが、そこへさらなる一撃が左肩へ飛ぶ。


「ぐぁ……!!!」


 左肩を押さえることもできず、そのまま体勢を崩しかけるが、歯を食いしばって踏みとどまった。


 木剣は手から離れかけていた。それでも両手で握り直し、足を割って踏ん張る。


 次の瞬間、横腹への衝撃。


『ドガッ!!!』


「ぐは……!!」


 体が大きく吹き飛ばされた。

 地面を転がり、砂煙が舞い上がる。


「ぐぅ……! かはっ!」


「立ちなさい」


 ママの声に、ゆっくりと体を起こす。


 深く息を吸い、吐いた。


 これは、持久戦だ。あたしが連撃を前に倒れるのが先か、ママの体力が尽きるのが先か。






『ドガッ!』


「ぐは……!」


 鋭く、あたしの腹に打ち込まれた一撃。

 木剣を支えに、砂混じりの地面に片膝をつく。


「はっ……はっ……」


 試合が開始されてから、どれくらい時間が経ったのか、もう分からない。


 身体の節々が悲鳴を上げ、汗が目に滲む。


「立ちなさい」


 冷たい声が、あたしの頭上から響く。


 あれから何度打ち合ったことだろう。何度斬られ、何度立ち上がっただろう。


 それなのに、ママは、息一つ切れていない。


「持久戦はもう終わりなの?」


 ──なんで、あれだけの剣撃を長時間繰り出して、息一つきれないの?


「まだ我慢比べをするつもりなら付き合うわよ。『一日中でもね』」


「……!?」


 その声色は、ハッタリなんかじゃなかった。


 この人は本気であの連撃を一日中でも繰り出せるんだ。

 一太刀ごとに命を削るような剛剣を。


 ……これが、最強の英雄。


 あたしは、剣を構える。

 今度は、すぐに打ち込んだりしない。


「……あら、すぐに踏み込んではこないのね。」


 こうなった以上、あたしは作戦を変えるしかない。


 ママの連撃は打ち破れないけど、連撃に移る前なら、まだチャンスはある。


 ママは今、情けか、ハンデか、あたしに最初の一撃を打たせ、それを真っ向から跳ね返して連撃に移っている。


 連撃を繰り出されたら、絶対に負ける。


 なら、勝負はその前。


『最初の一撃』を入れられるかどうかにかかっている。


 でも、あたしの体力はもはや限界に近い。


 この一撃を外したら、もうチャンスはない。


「……」


 ──ダメ……隙がなさすぎる……


 最初の一撃を合わせられたら、弾き返され、連撃が始まってしまう。


 ──そもそも剣を構えている相手を出し抜いて一撃入れること自体、難易度が高いのに……


 それを今、最強の騎士団長相手にやろうとしてる。どう考えても無謀だ。


 ……


 ──でも、やるしかない。隙がないのであれば……


 隙を作るしかない!


 あたしは地面を蹴る。

 今出せる最高速度で


 姿勢は極限まで低く、腰を落とした超前傾姿勢。滑るような踏み込み。


 腕は引き絞られ、狙うは一撃必殺。


 視界が加速でぶれる。空気の抵抗が頬を叩く。


 あたしは剣先を右へ揺らし、斬撃のフェイント。


 狙い通り、ママがわずかに重心を右へと傾けた。


 次の瞬間、あたしは重心を切り返し、左へ跳ねるように回り込む。


 狙いは脇腹。あの強靭なガードのわずかな綻び。


 届いて欲しい……!


「……遅いわ」


 ママの声が耳元で囁いた。


 剣が届く寸前、ママの体が後方へ退いた。わずか半歩だけ。その距離が、あたしの剣を空振らせた。


「……ッ!!」


 渾身の一撃が空を切り、あたしの体がぐらつく。


 必死に堪え、体勢を戻そうとした瞬間


 ママの追撃が、真横から――


『ドガッ!!』


 あたしの脇腹に衝撃が走る。視界が跳ね、呼吸が止まる。


「ぐ、がはあ……っ!」


 地面が傾いた。砂の上に膝をつき、そのまま片手をついて崩れ落ちる。


「立ちなさい」


 冷たい声が、容赦なく落ちてくる。


 ──全てを計算し、読み切ったつもりだった。


 でも、それすら、母の力の前では、手のひらの上……


「立ちなさい」


「はぁ……はぁ……ぐっ!」


 地面を蹴って立ち上がる。

 肩で息をしながら、木剣を握り直して、斬りかかる。


「……!」


 それを受けた母から、再び一撃が振るわれた。


 そこから始まったのは、蹂躙だった。

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