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不老になって数百年間、ずっと剣を振ってたらいつの間にか剣の神様になってたらしい〜侍を目指す少女と自由に世界を旅します〜  作者: 平元桜央


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大切な人

 山の麓に降りて、すっかり夕暮れになったので、俺たちは仕留めたトロ牛の調理を始めることにした。


 成美も多少は回復したようだが、念のために俺がおんぶして山を降りた。


 後日食べる分は切り分けて取っておき、それ以外は焚き火で焼く。


 脂が焚き火に落ち、パチパチと小気味良い音を鳴らす。


「よし、焼けたぞ」


「うわぁ美味しそう!」


 牛を適当に切り分けて、マリナと成美へ。


「ほら、いっぱい食え」


「……え」


 成美は自分の前に置かれた皿を見て、目を白黒にさせた。


「私も、いいの?」


「当たり前だろ」


「でも、私、何もしてない……」


「何言ってんだ。この山に連れてきたのはお前の手柄だろ」


 成美がこの山を選んだから、大量の薬草を手に入れて、そしてこんな美味いご馳走にありつけるんだ。


「そうだよ! それにあたしたちは、『3人で』クエストを受理したから、もちろん、報酬も3等分するよ!」


「これは、お前が自分で手に入れた肉だ。しっかり食え」


「……」


 そう言われた成美は、戸惑った顔で前の霜降り牛を見つめた。


「「いただきまーす」」


 俺たちは肉にかぶりつく。


「「……!」」


 口の中で、脂身が弾けた。


「んー! 美味しいです!!」


「なんだこれ美味すぎる!!」


 牛のいろんな部位を柔らかい霜降りにしたような感じだ。

 サーロインも、ヒレも、リブも、ロースも、めちゃくちゃ美味い。


「……」


 俺たちの様子を見て、成美も手元の肉を見つめる。


 そして、口を開けて、一口。


「……!」


 成美はトロ牛の味に目を輝かせる。


「どうだ? 美味いか?」


「……うん、美味しい」


 そして、ガツガツと食い始めた。


「おお! 成美ちゃん良い食べっぷりだね!」


「はは、良いじゃねえか。どんどん食え! そんで大きくなれよ!」


 無我夢中で食べる成美を微笑ましく見守りながら、夕食を食べた。







「ふぃー……食ったなぁ」


「それにしても、成美ちゃんすごい食べっぷりだね……」


「けぷっ……」


 成美は満足そうにお腹を撫でてゲップをする。


 成美は子供とは思えない食欲で、気づけば牛一頭の半分近くを平らげていた。


 どんな胃袋なんだよコイツ。バケモンか?


 今は食後のコーヒーを淹れて、少し落ち着いた時間だ。

 他愛もない話を俺たちがしていると、成美が口を開いた。


「2人は……恋人、なの?」


「え!?」


 何だ急に、こんなガキンチョがオマセな質問をしてくるな。


 マリナは突然の質問で一気に顔が赤くなり、目も行ったり来たりする。


「え、えー……ど、ど、どうですかねー……こ、恋人というかー、一応師弟という関係ではありますが、もう恋人と言っても過言ではないような……? もうすることはしちゃってますしー……」


 モジモジしながらツラツラと言葉を述べるマリナを尻目に、俺は淡々と事実を伝える。


「恋人じゃねえよ」


「え!?」


 俺の言葉にマリナは思わず立ち上がった。


「嘘でしょ神様! あんだけあたしの体を好き勝手しといてそれはないですよ!!」


 我を忘れて掴みかかってきた。


「ぐえ! ちげえよ! 話は最後まで聞けって!」


 首が絞まる絞まる。

 暴れるマリナをなんとか落ち着かせて、咳き込みながら続きを話す。


「そんな言葉じゃ言い表せないくらい、俺たちは深い絆で結ばれている」


 俺の言葉に、成美は首を傾げる。


「……? 恋人、より……夫婦?」


「それよりも、もっと大切な存在ってことだ」


「……!」


 それを聞いたマリナの目が一気に輝いた。


「そ、そういうことですかー! もうそれなら早く言ってくださいよー! 人が悪いですね神様ったら!」


 マリナが顔を赤くしてバシバシと肩を叩いてくる。痛いからやめてほしい。


「……大切な、存在……」


 成美はその言葉を噛み締めるように呟いた。


「……成美にもいるか? そういう存在が」


「……うん」


 成美は少し考えて、頷いた。


「私のこと、いつも、ずっと見てくれてる、人……」


 その顔は、今まで見てきた成美のどんな顔よりも優しくて、安心した顔をしていた。


「不安な時も、困った時も、いつでも駆けつけて……手を、握ってくれるの」


「じゃあ、その手を離さねえことだな」


「……!」


 俺たちと一緒にいた数時間、ずっと顰めっ面というか、笑った顔をしていなかった成美が、こんなにも優しい顔をしているんだ。

 どれだけ、その人のことを大切に思っているのかが容易に理解できた。


「そいつと、ずっと一緒にいたいんだろ? なら、その想いを大切にするべきだ」


「そうですね! あたしも、神様とずっと一緒にいたいと思ったから、こうして一緒に旅に出られているわけですし!」


「そういうこった。わかったら、もう迷子になって知らない奴についてくるんじゃねえぞ。世の中みんな俺たちみたいな奴じゃねえからな」


 これで変な奴らについて行って攫われでもしたら、ソイツも浮かばれないだろう。これだけ、思われているのに。


「さて、それじゃそろそろ帰るか。片付けしようぜ」


「そうですね」


 俺たちは片付けをしている間、成美は黙って、自分のカップのコーヒーを見つめていた。


 そして、少しだけ辛そうに、唇を噛んだ。




 ***




 手一杯の薬草を抱えて、クエスト案内所入り口へと戻ってきた。


「いやぁ大量だったな! こんだけありゃ手頃な宿に泊まれるんじゃねえか?」


「やりましたね! ご飯も外で食べて正解でした! 浮いたお金でホテル泊まりましょー!」


 夕食を終え、あとは龍星国へと帰るだけだ。俺たちは帰路につきながら、今日の成果について話す。


「成美ちゃんのおかげです! ほんと、ありがとうございます!」


「本当だぜ。まぁ、成美の親には悪いが、付いてきてもらって良かったよ」


「……」


 褒められたというのに、成美の表情はどこか固いままだった。


 案内所のゲートの前で、成美は足を止めた。


「……どうした?」


 俺は視線を合わせるためにしゃがみ込む。

 黄金の瞳は、不安に揺れていた。


「なにか言いたいんだったら、遠慮せずにいいな」


「そうです! 何か成美ちゃんが困ってるなら、あたしたち全力で助けるから!」


 口を何度かパクパクと開ける。

 そして、意を決したように口をギュッと結び、寂しそうに、笑った。


「……なんでも、ない」


「……本当か?」


「うん……」


 俺には、成美が何かを隠しているようにしか見えなかった。


 それでも、本人が話したくないというのなら、無理に聞き出すこともできない。


「……そうか」


 俺たちは、それ以上何も聞かなかった。


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