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不老になって数百年間、ずっと剣を振ってたらいつの間にか剣の神様になってたらしい〜侍を目指す少女と自由に世界を旅します〜  作者: 平元桜央


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薬草とトロ牛

 目指すは、ここから少し離れた山。


 その中腹に、目当ての薬草があるそうだ。


「そういえば自己紹介をしてませんでしたね! お名前はなんて言うの?」


 マリナが隣を歩く少女へ尋ねる。


「な、成美……」


「成美ちゃん! いい名前だね! あたしはマリナ! そしてこちらの方は神様だよ!」


「……カミ?」


「あー気にすんな。好きなように呼べ」


 マリナが持ち前のコミュ力を発揮して、成美との距離を縮めようとしている。


 先ほど出会った時もそうだったが、成美はどうやら奥手……というより、かなりおとなしい性格らしい。


 それなのに、どうして俺たちについてきたのか。


 その疑問だけは、いまだに残っていた。


「成美ちゃんは、どこから来たの?」


「きて、ない……私は、龍星国に、住んでる……」


「へ? 成美ちゃん龍星国の人だったんですか?」


 マリナが驚いたように目を丸くする。


 俺も意外だった。


 龍星国の住民なら、もっと裕福な暮らしをしているはずだ。


 なのに成美は、レストランに入ることすらできず、腹を空かせていた。


「じゃあ、ご両親も龍星国にいるんだね。今頃心配してるかも……急いでクエストクリアして帰ろうね!」


 そんな会話をして、道中を歩いていると、目的地の山の麓に到着した。


「薬草はこの山に生えてるらしいが……」


 俺は山を見上げた。


 木々が鬱蒼と生い茂り、昼間だというのにどこか薄暗い。


 見た目からして、なんとも不気味な雰囲気を漂わせている山だった。


「……なんか嫌な感じがするな」


「結構雰囲気ある山ですね……あれ?」


 俺たちが山へ入ろうとすると、道の脇に立て看板が建てられていた。


「えっと、なになに……」


 マリナが看板を読み上げる。


『危険度SSS。この先の山には入らないでください。危険な魔物がうじゃうじゃ出ます。入ったら命の保証はありません。5分で死にます』


「「……」」


 なんでだよ。


 俺たちはただ薬草積みに来たのに。


 その生息地がアホほど危険なんかい。


「どうしましょう……魔物相手はあたしたちだけならなんとかなるかもしれませんが、成美ちゃんがいますから……」


 確かに。


 成美が傷ついたりするのは避けなければならない。


 だが薬草はこの山の中腹あたりにあるらしい。


 どうしたものかと俺たちが悩んでいると……


「……カミ」


 成美が俺の手を引っ張ってきた。


「ん? どうしたんだ?」


「……こっち」


「へ? こっちの山?」


 成美は俺たちが目指していた山のすぐ隣の山を指差した。


「こっちの山の、方が、いい」


「へ? でもこっちに指定の薬草があるなんて情報はないぞ?」


「……こっちの、山、にも、ある」


 相変わらず、成美は隣の山を指差した。


「成美ちゃん、現地人だから知ってるんですか?」


「……うん」


「それなら……」


 マリナが俺を見る。


 俺も少し考えた。


 確かに、龍星国に住んでいる成美がそう言うのなら、試してみる価値はある。


「よし。じゃあ、そっちへ行ってみるか」


 俺たちは成美に手を引かれ、隣の山を目指して進むことにした。






 * *


 成美が指定した山を登り始めて、1時間ほど。


「な、なんじゃこりゃ!!」


 目の前に広がった光景に、俺は思わず声を上げた。


「凄い……! 薬草がこんなに!」


 あたり一面、見渡す限り、目当ての薬草が生い茂っている。


 まるで誰かが意図的に植えたかのような、広大な薬草畑だった。


 俺たちは早速その中へ入り、薬草の状態を確認する。


「こ、これって、しかもめちゃくちゃ状態がいいですよ! 売ればかなりの値段がします!」


 マリナが薬草を手に取り、目を輝かせる。


「すげえ! こんなの取り放題じゃねえか!」


 俺たちは夢中になって薬草を摘み始めた。


 こんなことなら、もっと大きな袋を持ってくるべきだった。


 そう思ってしまうくらい、とにかく大量だった。


 10分ほどして、俺たち3人は両手いっぱいに薬草を抱えていた。


「やりましたね! 大量の臨時収入ですよ! これだけで10万ゴールドはいくんじゃないですか?」


「成美がこの山を選んでくれたおかげだぜ! ありがとうな!」


「……」


 俺が礼を言うと、成美は小さく首を横に振った。


 照れているのだろうか。


 それでも、これは間違いなく成美のお手柄だ。


 空を見上げると、少しずつ陽が傾き始めている。


 山を降りる頃には夜になっているだろう。


 それでも、想定していたより早くクエストを終えることができた。


「よし、帰るか。龍星国に戻ったら、どこかで夕飯でも食おうぜ」


「あ、でもそういえば……ご飯、動物か魔物を狩って調達するって予定でしたが……」


 マリナはそう言うが、成美がいる以上、魔物を狩るとかあまり危険なことはしたくない。


「まぁ、この大量の薬草を換金すれば高級レストランには入れるだろ」


「えぇー……稼いだお金が、半分くらい消えちゃいますよ……」


「確かにな……でもしょうがない。成美が危険にさらされなかっただけ運が良かったと……」


「……」


 そんな俺たちの会話を聞いていた成美が、再び俺の手を引いた。


「ん? どうした? 成美」


「こっち……」


 成美が帰り道とは違う方向を指差す。


「またなにかあるのか?」


 俺とマリナは顔を見合わせた。


 そして、なんとなく成美の指差す方向へ進んでいく。


「こ、こりゃ……」


 少し進んだところで、俺たちは足を止めた。


 そこにいたのは、大きな牛のような魔物だった。


 地面を何度も踏み荒らし、こちらを睨みつけている。


 見るからに気性が荒そうだ。


「あ、あれは『トロ牛』です!」


「トロ牛?」


「気性が荒いのですが、肉は絶品なんです! 全身に霜降りが入っていて、脂が乗ってて……」


 そう言ってマリナは瞳を輝かせる。

 なるほど。それは食べてみたいところだが……


「こんな魔物も生息していたのか……よく知ってたな、成美」


「ふぅ……ふぅ……」


「成美?」


 成美を見ると、少し息が荒かった。顔色も悪い。


「成美ちゃん、疲れちゃった? 子供に山登りはやはりキツかったのでしょうか……?」


「せっかくの極上の魔物だが、やっぱり無視して帰るか。成美も疲れてるし」


「そうですね……」


 マリナも心配そうに頷く。


 しかし、成美はふるふると顔を振って、トロ牛を指差した。


「わ、私、大丈夫、だから、魔物、倒して……」


「だが……だいぶ息が荒いぞ?」


「すこし、休めば、治る……」


「そ、そうか……」


 確かに、ここで無理に急いで下山するより、少し休ませた方がいいかもしれない。


「なら、少しだけ待っていてくれ。すぐ終わらせるから」


 トロ牛が俺に気づいた。


 その目が、ギラリと光る。


「グルルルル……」


「マリナ、お前は成美のそばにいてやってくれ」


 万が一、別の魔物が出てきたら、成美を守れるように。


「はい!」


 俺は剣を抜いた。


 次の瞬間、トロ牛が地面を蹴り、猛烈な勢いでこちらへ突進してくる。


 俺はその突進を真正面から受け止め──


 襲いかかってきたトロ牛を、一撃で仕留めた。

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