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不老になって数百年間、ずっと剣を振ってたらいつの間にか剣の神様になってたらしい〜侍を目指す少女と自由に世界を旅します〜  作者: 平元桜央


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響き渡るサイレン

 クエスト紹介所は、俺たちがこの国に入ってきた入り口にあった。

 国を囲う外壁に隣接していて、赤レンガでできた西洋風の宮殿のような、巨大な建物だ。


「クエスト紹介所までこんな豪華なんだな」


「すごいですねー。しかも工事中ですよ。増築するみたいです」


 マリナが上を見上げる。


 建物の上部では、鉄骨を運ぶ作業員たちが忙しそうに動き回っていた。


 こんなところにまで金を使う余裕がある。


 改めて、この国がどれだけ裕福なのかを思い知らされる。


 俺たちは中へ入り、掲示板へ向かった。


 そこに貼られていたクエストの中から、比較的手頃なものを選ぶ。


 魔物退治でもいいのだが、今日はもう午後を回っている。


 そこで、近場でできる薬草採取のクエストを受けることにした。


 ついでに近くに出た魔物か動物でも狩って、今日と明日の食料を確保するつもりだ。


 俺たちは依頼書をカウンターへ持っていく。太った受付嬢が気だるげに書類を書きながら俺たちに説明した。


「はいはい、採取クエストね。薬草をたくさん持ってくればその分買い取るから」


 なるほど。


 多く取ってくるほど金がもらえるのだ。


「じゃあ、このゲートを潜ったらクエストスタートだから」


 受付嬢は、カウンターの隣にある外へ繋がるゲートを指差した。


「説明しとくけど、一度受理したらクエスト達成するまで戻ってこれないからね。もし破ったら違約金が発生するよ」


「わかりました! いってきます!」


 説明後、俺たちは書類に同意の印鑑を押し、ゲートを潜った。


「それじゃ、薬草集めのクエスト『3名』ね。はい、受理されたよ」


「はい……え?」


「3名?」 


 おかしなことを言われて足が止まる。

 俺とマリナの2人分のはずだ。


「何言ってんだい。後ろにいる子も、アンタらの連れだろ?」


「「へ!?」」


 俺たちは慌てて後ろを振り返る。そこには先ほどのマリナが干し肉を上げた、フードを被った少女がついて来ていたのだ。


「さっきのちびっ子!? お前いつの間に!?」


「ど、どうして……え!? 一緒にゲート潜っちゃったの!?」


「……」


 少女は何も喋らない。


 ただ、不気味なほど綺麗な黄金の瞳で、じっとこちらを見つめている。


「え、えっと、この子は違うんです! この子だけでも中に戻すことはできませんか?」


「無理だね。もう3人で登録しちまったからな」


「そ、そんな、この子、他所の子なんです! このまま私たちが連れ出すわけにも……」


 マリナの必死の訴えに、受付嬢は面倒くさそうに答えた。


「クエストを諦めて帰るんなら良いわよ、違約金で30万ゴールド貰うけどね」


「ええ!?」


「なんだその法外な値段は! 高すぎるだろ!!」


「1人10万ゴールド。同意した書類に書いてあったはずだよ」


「く……!」


 なんだよ、違約金まで高えのかこの国。

 報酬は普通のくせに。

 30万ゴールドなんて、とても今の俺たちには払えない。


「ど、どうしましょう神さまぁ……」


「そ、そう言われてもな……」


 薬草を集めてクエストを達成する以外に、中へ戻る方法はない。


 こうなりゃ、連れていくしかない。


 だが、この状況……大丈夫なのか?


 これ、下手したら誘拐にならねえか?


 せめて、このゲート付近で待ってもらうほうがいいんじゃないか。


 だが、それで誰かに本当に誘拐されたら……。


「……」


「ん?」


 少女が、俺の服の袖を引っ張った。


 黄金の瞳が、何かを訴えるように俺を見上げている。


「……外へ行きたいのか?」


「……」


 少女は頷いた。コイツは行く気満々らしい。


「……わーった。仕方ねえ。はぐれないようについてこいよ」


「い、いいんですかね? ご両親が心配してるんじゃ……それに、誘拐とかになったり……」


「コイツが勝手にくっついてきただけだし、なんも気に病むことはねえよ」


 そもそも親に文句を言われる筋合いはない。親がこんな小さな子供を放っておくからこうなってんだ。


「俺たちがクエストをパッパと終わらせれば済む話だ。急ぐぞ」


「は、はい!」


 マリナは女の子と目線を合わせるようにしゃがむ。


「それじゃ、手を繋ごっか。お姉ちゃんとはぐれないようにね」


「……」


 少女が頷く。


 マリナが少女の手を握り、俺たちは国の外へと出た。


 その時




『ウーーーーー』




「あれ?」


「どうした? マリナ」


「なんか街の方からサイレンの音が聞こえません?」


「へ?」


 俺も耳を澄ます。


 すると、確かに外壁の向こう側、街の中から、けたたましいサイレンが響いていた。


「本当だ。なんか火事でもあったんかな」


 まぁ、どのみちクエストをクリアしないと中へ戻れない俺たちには関係のないこった。


 そう思って、俺たちは先へ進んだ。


 ただ一人。


 少女だけが、去っていく街を振り返っていた。


 その黄金の瞳には、何かを知っているような光が宿っている。


 だが、俺たちはそれに気づかない。


 なぜか耳にこだまするサイレンの音を無視して、俺たちは目的地の山へ向かった。

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