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不老になって数百年間、ずっと剣を振ってたらいつの間にか剣の神様になってたらしい〜侍を目指す少女と自由に世界を旅します〜  作者: 平元桜央


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元気すぎる少女


「おはようございます! 神様!」


「んぅ……」


「今日もいい天気ですよ! ほら、起きてください!」


 朝っぱらから、爽やかな、元気すぎる声で目を覚ます。


「あ、起きた! おはようございます!」


「……おはよう、マリナ。そしておやすみ」


「あ、ちょ! ダメですよ! もう朝ごはんもできてるんですから、起きてくださーい!」


「うぅあ……わかったから、腕を引っ張らないでくれ……」


 半ば引きずられるように、俺は居間へと連れていかれる。

 その最中、美味しそうな飯の匂いが鼻腔をくすぐった。


「ほら! 昨日は良さそうな山菜が取れたんですよー! 鮭もです! 今日も自信作ですよ!」


 居間に行くと、マリナの作った豪華な朝ごはんが、そこには並んでいた。


 ご飯に味噌汁、山菜のお浸しに焼き鮭。目玉焼きに納豆、デザートのりんごまで。


「さぁどうぞ! 召し上がってください!」


 言われた通り、味噌汁を一口。


「……ずず」


「……!」


 マリナは飯に手をつけず、キラキラした赤い瞳で俺を見ている。


「……美味いよ」


「やったー! おかわりもありますから、どんどん食べてくださいね!」


 花のように笑顔になって、ようやくマリナは自分の飯に手をつけた。


 これを飯のたびにやっている。飽きないのか?


 マリナが来てから、しばらく経った。


 彼女は俺より早く起きて、炊事、洗濯をはじめとした家事をやってくれている。


「洗濯物してきますね! 川に行ってきまーす!」


「おーう」


「ただいま戻りました! 見てください! 今日は川魚が10匹も!」


「どうやって保存すんだ。冷蔵庫なんてねえぞここ」


「掃除しま……あれ? なんか戸棚の下から変な本が……」


「そこは掃除すんな!!」


 マリナが増えたことで、俺の家が、賑やかになっていった。


 居心地は、意外にも悪くはない。




***





 朝の山は、夜露に濡れた土と草木の匂いがした。

 深く息を吸い込むと、ひんやりとした空気が肺の奥まで満ちていく。


「それでは、今日もよろしくお願いします!」


「あぁ。準備運動しっかりな」


「はい!」


 剣の稽古はしている。


 俺も我流で剣は振ってきたから、多少のことは教えられるし。


 準備運動を終え、俺たちは向かい合い、木刀を構える。


「いきます」


「あぁ」


「せいっ!」


 マリナの振り下ろした木刀を、俺は正面から受け止めた。


 一撃目。


 すぐさまマリナは手首を返し、今度は俺の脇腹を狙う。


 それを弾くと、さらに一歩踏み込んで、逆側から横薙ぎの一撃。


 二撃、三撃と、休む間もなく木刀が迫ってくる。


 マリナは、連撃を得意としているらしい。

 でも、適当に剣を振っているんじゃない。

 ちゃんと防御しづらい箇所を狙ってくる。


 ただ、その太刀筋は基本に忠実すぎる。

 多分真面目なんだろうな。

 だからこそ、俺には次の動きがわかりやすい


 木刀を大きく振る必要すらない。

 手首をわずかに動かすだけで、マリナの攻撃を弾く。


 数十連撃を防いだ頃には、マリナの額に汗が浮かんでいた。


「はっ……!」


 呼吸がわずかに乱れる。

 それでも止まらない。

 もう一度、木刀を握り直して踏み込んできた。


 その乱れを、俺は見逃さない。


 木刀を払う。


 マリナの体勢が崩れる。


 そして、がら空きになった右肩へ──軽く木刀を打ち込んだ。


 ピシッ、と乾いた音が響く。


「……参りました」


「あぁ、お疲れ」


 マリナは膝から崩れ落ちる。


「ぜ、ぜんぜん……一本取れる気がしません……」


「まぁ、これからだろ」


「流石神様ですね! やっぱり、貴方の元を訪ねてよかったです!」


「そ、そうか……」


 こんなふうに持ち上げてくれるのも悪い気はしない。

 



***




「神様! お風呂沸きましたよー!」


「あーい」


 長い年月をかけて、外に作った天然の露天風呂。

 俺は裸になって、浴槽へ入る。


「ふぃー」


 不老になっても、この時間は好きだ。

 この季節は桜があたり一面に咲いていて、それを見ながら湯に浸かれる。

 マジで最高の風呂だ。


 しっかりと体を温めたあと、湯から上がり、体を洗うために風呂椅子へ腰を下ろす。


「お背中流しまーす」


「あーい……ん?」


 背後から背中を石鹸でぬるぬる擦られる。


 振り向くと、そこにはバスタオル一枚のマリナが、俺の背中を懸命に洗っていた。


「気持ちいいですか……あいた!」


 俺はアホに脳天チョップをかます。


「な、なにするんですか!」


「こっちのセリフだわ! 何してんだテメェ!?」


「え? だってお背中流すのもお世話じゃないですか!」


『むふーっ』とドヤ顔で、年不相応な大きい胸を張るマリナ。


 その格好で胸張るのやめろ。


「やるにしても普通の格好ですればいいだろうが! 年頃の娘がバスタオル一枚で男の前に現れるんじゃねぇよ!」


「え、でも……」


 マリナは少し照れたような顔を赤くした。


「戸棚の下にあった本の中にはこのシチュエーションの本がありましいだだだだだ! アイアンクローはやめてください!」


「見るなっつったよなぁ!?」


「だ、だって気になっちゃうじゃないですか!」


 コイツと一緒に住むとプライバシーというものはなくなるようだ。


 俺はアイアンクローを離す。

 見た目中年のおっさんが年頃の娘をほぼ全裸で虐めてるこんな状態も良くない。


「はぁ、もういい。お前が先に入れ」


「え!? で、でも神様まだ少ししか入られてないじゃないですか!」


「後で入る。出たら呼べ」


「ダメです風邪ひいちゃいますよ! 一緒に入りましょう!」


「やかましい!! 早く入れ!!」


「は、はい!」


 俺が怒鳴ると、マリナはぴゅんっと浴槽へダイブ。


「ふぁ〜〜きもちい〜〜……神様もやっぱり入りましょう〜〜」


「コイツほんとに……」


 風呂に入ったというのに、もっと疲れてしまった。


 風呂に浸かっておっさんみたいな声をあげるマリナの顔をチラリと見て、俺は最初に出会った時のことを思い出した。


『神様に会えなかったらあたし、死のうと思ってたんです』


 マリナは、どこまでも元気で、そこら辺にいる普通の女の子と変わらない。


 でも、じゃあなぜコイツは死を覚悟して俺に会いに来たんだ?


 コイツの様子見ると、そこまで闇を抱えているようには見えない。

 しばらく経っても、俺はまだ、マリナのことをよくわかっていないようだ。




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