番外編 ボディガード(氷室視点)
「連絡先くらいいいじゃん」
「困ります」
……小日向が知らない男に絡まれている。
彼女の反応を見るに、別に知り合いというわけでもないらしい。
ゆっくりと、男の背後に立った。
「どうした、小日向」
途端、男がビクッと肩を震わせる。
振り向いて「ヒッ」と声を漏らした。
俺は表情を変えず、じっと見下ろす。
男の思考を文字にできるなら、「背後を取られた……!? コイツいつの間に……!?」みたいな顔をしていた。
「しッ、失礼しました……!」
一目散に逃げていく背中を見送る。
小日向が「先輩、助かりました」と頭を下げるので、「ああ」と答えた。
「先輩、多分ボディガードかなにかだと思われてましたね」
「そうか?」
「スーツに黒手袋をした長身の銀髪男、多分そう見えると思います」
「そうか」
小日向の言葉に、納得したような、してないような。
「……まあ、小日向を守れるなら、なんでもいいが」
「なにか言いました?」
「なんでもない」
ぼそっと呟いた言葉は、風にさらわれてしまったらしい。
「それより、日暮先生の家宅捜索、どうにかパスポートを没収できるといいのだが」
「国外逃亡はもうやめてほしいですね……」
俺は小日向と作戦会議をしながら、作家の自宅に向かうのだった。




