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山田と佐藤  作者: うんち
1章
9/23

9話 お買い物

ー◆メスショタ視点◆ー






 コミュ障はコミュ障なので、町中では安定して死んでいた。


 確かにチラチラ見られてるけど今更だろ。

 昨日とか私を抱えて宿屋を探してたらしいけど、酒を飲むか薬をキメるかしない限り、彼に人里での平穏は訪れないのだろうか。



 もう何を言っても無駄なので、存在しないものとして扱う。

 刷り込みのされたアヒルか背後霊みたいな感じで私の背後をついてくるコミュ障が脳内に想像されるが、努めて無視をして歩く。

 何となく頭辺りにハァハァとした熱量が感じられる気がする。

 たぶん考え過ぎだろう。



 ていうかそんな挙動不審なキモい歩き方してたら余計目立つって、本人もわかってる筈なのに、今日はコミュ障のコミュ障ぶりが(とみ)に酷いな。

 ひょっとしなくても昨日何かあった予感。

 昨日町に入った時にはここまで酷くなかったもんな。

 さっきからすれ違う通行人がすごい目でこっち見てるけど私のせいじゃないわ。






ー◆ー






 市場らしき場所に辿りつく。

 初めて見るのでなんとも言えないが、結構な規模があるように感じる。

 辺りには独特な匂いが立ち込めていた。

 野菜や果物が雑多に積まれ、肉は吊るされ(はか)り売りされているようだ。

 何処の店にも天秤が置いてあったりして面白い。



 小麦粉らしきものを取り扱っている店を発見。

 店員が怪訝な目で私の頭の上辺りの空間を見ているが、私には何も見えないので気にせずに商品を尋ねる。



 話を聞くと、どうやら穀物の粉といえば一種類しかないらしい。

 小麦粉でも片栗粉の代用になるので気にせず購入を決定。

 500g程の量を買おうとしたところ、自前の入れ物を用意する必要があるという。



 私の反応を見た店員が、余っているからと布袋をタダでくれた上、お値段据え置きで小麦粉を多めに売ってくれた。

 お嬢ちゃん綺麗だから特別だよと言われ、姫としての自尊心が刺激されるのを感じる。



 堪んねえな。

 これだから女装は辞められねえんだよ。

 店員のジジイの微笑みが全身に染み渡って最高に気持ちいいぜ。



 役立たずの不審者に小麦粉を渡して役割を与えると、気分良く市場を練り歩く。



 続けて重曹、植物油、塩、酢、黒砂糖を少々購入。

 魚醤らしきものを見つけたのでそれも購入。



 胡椒や唐辛子のような香辛料の類もあった。

 自国か隣国で生産されているのか、同量の砂金ほど高くはないようだが、ちょっと躊躇してしまうお値段。

 迷っていると、お試しに使ってみてくれと小袋をいくつか渡してくれた。



 大喜びでお礼を言うと、何も買ってないのに、また顔を出してくれと笑顔の中年の店員さん。



 とても嬉しくて有り難くて、感謝の笑みが自然と溢れる。

 同時にメスとしての自尊心が満たされるのがわかる。

 やべえな。

 脳内麻薬ドクドク出てるのがわかるわ。

 姫ムーブも自然と拍車が掛かるってもんよ。

 こりゃしばらく市場通いをやめられそうにないぜ。



 ちなみに役立たずだった不審者は着々とその役割を増やしており、既に両手が荷物で塞がりつつあった。





「山田、今日は雑貨屋を見て終わりにするつもりだけど、食材を入れる鞄が欲しいよね?」


「…………あっ。えっと、そうですね」





 人に酔ったのか何なのか知らないが、脳がフリーズしていたらしいコミュ障。

 再起動するまで10秒ほど待っていると、現状を把握したらしいコミュ障が同意の意を示してきた。





「そうですね。佐藤さんの仰る通り新しい鞄が必要ですね。野外で持ち歩きする必要がありますし、最低限の容量が入る小さめの鞄でも問題ないのでしょうが、将来的に必要となり得る装備や道具も含めて一度検討する必要があるでしょう。ですが今回は小さめの肩掛け鞄などが適当でしょうか。それほど高くなくて持ち運びに不便がなければ十分だと思います」





 コイツマジで残念な野郎だな。

 コミュ障属性が添付されたお陰で、恵まれた能力が全部台無しになってるわ。



 まあ概ね同意なので、帰りがてら北地区の雑貨屋に向かう。






ー◆ー






 雑貨屋では予定通り、中古の安かった肩掛け鞄と糸車、ついでに鉄筆二本を購入。

 鉄筆は金属製の尖ったペンで、蝋を薄く塗った蝋板にガリガリ書いたりする用途に使う筆記用具である。

 木材への線引きやポンチ打ちにも使えそうなので買ってみた。



 丁度この買い物で、私達は素寒貧(すかんぴん)になってしまった。



 まあでも、随分と沢山のものが買えたと思う。

 色々な場所でまけて貰ったし、この雑貨屋でも本当は予算に少し足が出ていたのだ。

 例の如くとは言いたくない。

 何処の誰が親切にしてくれても、いつだって新鮮な感謝の気持ちとメスとしての悦びが胸一杯に拡がっている。



 今回の依頼達成で報酬を手に入れたら、恩返しに買い物をさせて頂くつもりだ。

 できる女はテイクされたらギブを返すもんなんだよ。

 その辺を理解してないと、宿屋のジジイみたいな輩が調子こいて増長するから本当に気を付けないとな。

 でもあれは貧困が悪いのであって私のせいではないわ。



 ホクホク顔で気分良く帰り道を練り歩く。

 物欲と姫としての自尊心が満たされて足取りも軽く、道ゆく人の怪訝そうな視線も気にならない。

 我が世の春だぜ。



 ところでさっきから知り合いと顔を合わせるたび、一連の事件について心配してくれた彼達から声が掛かる。

 私も挨拶したかったので二言三言(ふたことみこと)言葉を交わす流れになるのだが、後ろの不審者に関してどのように説明するか迷った。

 皆すごい目で見てくる。



 とりあえず、謎の変質者が山で冒険者を助けている事や、その変質者がチンピラ相手に私を護っていた事は、彼らの口振りから既に巷で噂になっているようだったので、その設定を生かして3秒ぐらいで考えた言い訳を口にしていく。






*★*






『皆さんも知っての通り、私も彼には助けて貰っています。私が狼藉されそうになっている事を知って、こうして身の回りの安全を買って出てくれたんです』





 単なる事実を聞こえの良いように添削して口にしているだけだが、まあ上等だろう。





『そ、そうなのかい? サトーちゃんが大丈夫ならそれでいいんだけど、何かあったら誰かに相談するんだよ。…………本当に大丈夫なのかい?』






*★*






 誰もが不審者を不審者を見る目で見つめ、私をとても心配してくる。

 聖人然とした前評判とのギャップに理解が及ばず苦しんでいるようだ。

 彼らの目線から、不審者が私のめっちゃ近くに立っている事が窺い知れる訳だが、なんかもう苦笑いしか浮かばないわ。






ー◆ー






 帰り道、若干落ち着きを取り戻したコミュ障と二人で横並びに歩いていく。



 放置するからコミュ障のコミュ障に拍車が掛かるのだろうと思い、会話でもすれば気も紛れるだろうと考えてみたのだ。

 しばらくそうすると、狙い通りコミュ障は普段の調子を取り戻した。





「お金が無くなっちゃったし、工具屋さんは冒険が終わったら見に行こうよ」


「ええ、そうしましょう。僕も楽しみです。しかし佐藤さんは本当に顔が広いのですね。少し驚きました」


「親切な人が多いでしょ? 何だかんだあったけど、私はやっぱりこの町が好きだなあって。あの時逃げたりしなくて本当に良かった」


「町全体に人を受け入れる余裕があるんでしょうね。いいことです。…………ところで佐藤さん。オークの巣に関してなのですが、現状どの程度位置が絞れているかなど必要な情報を共有したいのですが、あれから日が開いてしまいましたし、新たな情報が入っているか確認する意味でも一度ギルドに寄る必要があると思うのですが、どうでしょうか?」





 よしよし。

 ちゃんと稼働してるな。

 長台詞が多少気になるが。





「……佐藤さん? どうかしましたか?」


「ううん、何でもない。そうだね、山田の言う通りギルドには一度顔を出しておいた方がいいよね」


「わかりました。昨日の今日なので、ギルドに入っても注目されるだけで危険は及ばないとは思いますが、それでも何が起きてもおかしくありません。昨日の自警団の方の言う通り、十分に注意して行動しましょう」


「わかった。山田、頼りにしてるね」


「僕も頼りにしていますよ。佐藤さん」






ー◆ー






 ギルドに入ると予想通り注目されたが、以前感じた威圧感を伴う舐めるような視線は感じない。

 こちらと目が合うと、すぐに相手は目を逸らす。



 カウンターに向かい、新たな情報が入っていないかどうか尋ね、ついでに自分が現在得ている情報に齟齬がないかどうか擦り合わせを行う。



 ついでと思い、革をなめすのに必要となる植物と、圧搾し油が取れる植物について心当たりがないか尋ねてみた。

 資料の閲覧にはお金が掛かるのが普通との認識だが、閲覧料が必要だと言われればそれまでと考え、損するものでもなし、物は試しだと訊いてみたのだ。



 すると女性の職員は快く応じてくれた。

 どうやら需要のある物品は積極的に採集して貰いたいらしく、ギルドとしては情報の開示を惜しまないらしい。

 隣の不審者にそれを話すと嬉しそうに笑った。



 資料を一度読み込み、暗誦(あんしょう)をして過不足なく頭に入ったからどうか確かめる。

 指を動かしながら挿絵を頭の中で何度もなぞり、特徴を鮮明にしていく。

 何度か反芻(はんすう)し、記憶できたと判断して資料を返した。



 用が済み、礼を言ってカウンターを離れる。

 コミュ障とダラダラ会話しながら出口に向かうと、よく知った相手から声が掛かった。





『サトーちゃん!』





 つい先日まで一緒に冒険者として活動していた2人組だった。

 どうやら私達を出待ちしていたようで、とても心配そうな顔で私のことを見ていた。



 不審者と再会するまで、ずっと一緒に頑張ってきた2人だ。

 宿屋のジジイから逃げ回るときも協力してくれた。

 ずっと心配を掛けていたことがわかって、顔を見た途端、申し訳なさで胸が締め付けられた。



 思わず駆け寄ろうとするが、数歩進んだところでふと後ろを振り返ると、案の定コミュ障が唐突なエンカウントで固まっていた。

 一旦引き返して半目で睨みながら袖を引き、再び彼女達の下に向かった。






ー◆ー






 コミュ障に二人を紹介する。





「私と同じ魔法使いのソニアちゃんと、僧侶のミーナちゃんだ。山田は一度会ったことあるから覚えてるよな?」






*★*






 ソニアちゃんは桃髪タレ目で淫乱ピンクっぽい見た目の、お胸が控えめで気弱そうな雰囲気の女の子で、ミーナちゃんは黒の修道服に健康的なデカパイとデカケツの主張が激しい、銀髪吊り目で武人みたいな性格の女の子だ。



 私が男口調になったのは昔からの癖である。

 リアルで女装を見せびらかしてドン引きしなさそうな相手がコミュ障しか居なかったのだが、知り合いの目がある場所で無意識に姫ムーブしたら社会的に死ぬので、努めて意識した結果、知人の前では姫プレイをしないのが癖になっていた。



 ここでは出会う人出会う人みんな私の事女だと思ってるし、私の異世界語も女子口調で固定されちゃったし、私が姫プレイ意識しようがしまいが相手には女だと思われちゃうし、自分でもどういうスタンス取っていいかわからなくて脳がバグっているのだが、今更コイツに対して癖を変えるのもおかしい気がするし、もう色々面倒くさくなって男口調の癖はそのままになり現在に至る。



 ちなみに現在は町を出て、門から程近い場所に居る。

 ギルドでは落ち着かないし、こういう場合では軽食の出る喫茶店などで話すのがセオリーだが、ここに居る全員が貧乏人なので、落ち着いて話せる場所がこんなところしかない。






*★*






「なるほど。ソニアさんとミーナさんですか。僕は佐藤さんとは昔からの知り合いなのですが、お二人は佐藤さんのことをずっと護って下さったのですね。ありがとうございました。僕からもお礼を言わせてください」





 コミュ障の営業トークが炸裂する。

 笑顔だが、よく見ると目の焦点が合っておらず全く気を許していない。

 リアルの女性相手に萎縮しているのだろう。



 通訳すると、2人がなぜか緊張した様子で自己紹介を始めた。

 一瞬不審者が不審人物だからなのかと思ったが、どうも警戒している感じではない。





『ソ、ソニアです! 魔法使いです! あのっ、この間は助けて下さりありがとうございました! と、とても強いんですね!』


『ミーナと言います。貴方の戦闘技術に感銘を受けました。私は僧侶ですが、同じ前衛職として貴方を尊敬しています』





 …………え?

 まさかの好印象なの?



 確かにコミュ障は二人にとっても命の恩人だし、ストーカーと同じパターンだと考えると不思議ではないけど、2人がそうなるのはなんか違う。



 2人とも可愛いし、ぶっちゃけ出会った当初は異性として意識してたけど、ずっとメスとして接してきたせいで、私の中で女子高時代からの親友みたいなポジになってる。



 そりゃ何かの拍子に男だってバレて、恋愛関係に発展する妄想とかした事が無い訳じゃないけどさ。

 今はもう、メスとして接する喜びの方が遥かに大きくて、完全に私の中でズッ友だもん。



 この2人がそんな目で男を見てるのはなんかヤダ。

 親友を取られたみたいで、とても悲しい気持ちになる。





「……佐藤さん。お二人は何と仰っているのですか?」





 コミュ障の声に我に帰る。





「あーっと、ゴメンね。えっとソニアちゃんの方は……」





 いかんいかん。

 思わず思考がメス寄りになって、おセンチな気分になっちゃったぜ。



 まあコミュ障は安牌(あんぱい)にも程があるから、特に心配する必要はなかったな。

 このポンコツはポンコツ故にどうせすぐボロが出る。



 これがイケメンのストーカー相手だったら発狂してコミュ障をけしかけて暗殺する事も辞さないわ。

 どうせ隙あらば出会って5秒で合体する気構えのヤリチン野郎だろうし、竿姉妹をこれ以上増やさない為にも、早急に消した方が世界の為になる。





「二人とも私の大事な親友だからな。心して相手するようにしろよ」


「……………………」


「……山田?」


「いえ、なるほど。承知しました」





 何か長考して、勝手に納得した感じのコミュ障。

 今の問答にそんな疑問が生じる余地あったか?





「頼んだぞ」


「ちなみに、先日飲み会で同行した彼等と、お二人に面識はあるのでしょうか」





 .………なんだ? コイツは何が言いたい?





「…………私の知る限りないぞ」


「なるほど。では佐藤さんにとっては、このまま彼等とお二人が接触する機会が無い方が望ましいでしょうか?」





 コイツ察しが良すぎるぜ。


 私の深層心理を色々見抜かれてる感あるな。

 リーディング能力に定評があるのは知ってたけど、ちょっと怖いぐらい鋭い。

 今日いっぱいのポンコツ具合を考えると、思わず何だコイツってなるわ。



 まあいい。

 こういうこと考えるのはコイツの方が得意だろうし、このまま任せちゃおう。





「なんかいい考えがあるのか?」


「いえ、全く。一応考えてみたのですが、現状を踏まえると、彼等は流れの冒険者ということですから、彼等がこの町を去るまで、僕達がお二人と接触する機会を減らすか、もしくは僕と佐藤さんがなるべく別行動するようにする事くらいでしょうか。いずれも現実的ではありませんし、正直あまり良い手が思い付きません」


「そっか……」





 非常に残念である。





「……お二人はミーハーな方なのですか?」


「わかんない……。違うと思うけど、聞くの怖いもん……」


「………………佐藤さん。百合展開みたいになってますけど、それってどっち寄りの思考なんですか?」


「私のセンシティブな部分が張り裂けそうだから、あんまり詳しく訊かないで」





 わかってるわ。

 思考が勝手にメスになって、口調が引き摺られちゃったもん。

 倒錯し過ぎて自分でも訳わかんなくなってるわ。

 ここが教室で他人が聞いてたら、オカマ呼ばわりされて社会的に死んでいた。





「まあ、なるようになりますよ」


「…………うん。まあ、山田の言う通りなんだけどさ」





 寂しいけど、恋する気持ちは止められないもんな。

 別にヤリチンに限った話ではない。

 二人に好きな子ができたら、私は素直に祝福しよう。





「余計な口を挟んでしまった僕が言うのも何ですが、あまり長く話していてはお二人に失礼ですから。ここまでにしましょう」


「そうだね」





 思わず恋バナみたいな話をしちゃったぜ。

 メス思考に寄せられつつも、小っ恥ずかしくて鼻の頭掻いたりして、私は私の情緒が自分でもわかんない。



 よく考えたら、私がここまで倒錯しまくったのって、コミュ障の物分かりが異常にいいせいでもあるよな。

 今後も遠慮なく迷惑をかけ続けよう。






ー◆ー






 2人を見ると、彼女達は彼女達で盛り上がっていたのか、姦しい様子で話し込んでいた。



 割って入る事に若干の申し訳なさを感じつつ声を掛ける。



 そういえばコミュ障の名前もまだ2人に伝えていない。

 不審者の袖を引いて前に出す。





『ごめんね。ちょっと話し込んじゃった。二人にも紹介するね』


「山田といいます。佐藤さんがとてもお世話になっているそうですね。今後とも彼女と仲良くして頂けると僕も嬉しいです」





 お前は親かよ。

 通訳しづらいわ。





『と、とんでもないです! サトーちゃん本当にいい子ですし、とっても頭が良くて、凄いんです! 私なんかと仲良くしてくれて、そのっ……』


『すぐに言葉も覚えてしまうしな。ソニアが少し魔法の手ほどきをしたら途端に応用しだすし、私も勉強させられている。言われるまでもない。私こそ今後も仲良くしたいと思っている。ソニアもそうだろう?』


『う、うん! ずっとその……! ま、また一緒に魔法の練習しようね!』





 やばい泣きそう。

 心の中のメスが感動で打ち震えている。

 心が女の子になってしまう。

 抵抗する気が起きない。



 ソニアちゃんは実はとっても努力家だし、ミーナちゃんはとっても友達思いだって私は知ってるよ。

 もう2人ともほんと好き。

 女の子になって一生一緒にイチャイチャしたい心持ちになる。



 ちょっと目頭を抑えながら通訳しようとすると、不審者が突然ビクリと反応し、宙を仰いだ。





「……」





 なんだ?

 またサイコさんの妖怪アンテナに、モンスターでも引っ掛かったのか?





「……………いえ、その、そうですか。もう間に合いませんね……」





 虚空を見つめ、何やら勝手に納得して、勝手に諦めた様子のコミュ障。



 ソニアちゃんとミーナちゃんが、怪訝な様子で不審者を見る。

 彼は脳内に見えないお友達が居るんだよ、とは言えない。

 私の友達の前で空中と会話始めるのやめろよ。

 不審者を紹介したのは私だけど、マジで不審者ムーブされると一緒に居る私まで変な目で見られるじゃねーか。



 しばらくして背後から、誰かが走り寄ってくるような足音が耳に届いた。






『ヤマダさん! ヤマダさん!』





 振り返った先には、満面の笑みで手を振りながら、こちらに駆けてくるストーカーの姿が。



 ヤリチンのバックアタックだ!







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