第6話 凱旋
アルン中央区 王宮
「親父!親父は居るか!?」
叫びながら王宮内を急ぎ足で進む。
トーヤと別れてからエリスと共に強化の魔法を全開にし、ついさっき王宮に到着したところだ。
イリヤ様の事はエリスに任せて、レオンは、この非常事態を近衛隊の隊長である父親、ビンセント・スチュアートに知らせる為に急いでいた。
「どうした、レオン。騒々しい」
王宮内にある近衛隊の詰所に入ろうとした時、後ろから自らを呼ぶ声に振り返る。
「親父!」
「何があった?戻るには予定より大分早いが・・・」
「聞いてくれ。イリヤ様が誘拐されかかった」
ビンセントの眉がピクンと跳ね、表情が険しいそれに変わる。
「詳しく説明しろ」
短く一言。
だが、そこにはついさっきまで僅かに含まれていたレオンに対する父親の面が無くなり、完全に近衛隊隊長としての面だけしかなかった。
威圧感が増し、気押される。
「は、はい。イリヤ様が僅かな間、俺達の元を離れた時に敵はイリヤ様を誘拐。それに気付いたトーヤの探索魔法でイリヤ様の居場所を特定。その後、イリヤ様をトーヤとエリスと共に奪還しました」
レオンがそこまで話すと、ビンセントの表情が目に見えて和らぐ。
「しかし、イリヤ様を王宮まで護衛中に正体不明の敵と会敵。イリヤ様と俺、エリスは先行し、現在はトーヤが相手をしているはずです」
「・・・・イリヤ様は無事なのだな」
「はい。今はエリスが側についています」
「分かった。まずは王へこの事を報告せねばなるまい」
☆★☆
その頃、エリスは自らの母親であり、宮廷魔導師隊隊長であるフェルニス・マーガレットと共にイリヤの部屋で事件の顛末を話終わったところだった。
「以上、報告を終わります」
「とりあえず、イリヤ様にお怪我が無くて安心しました。勿論、エリスも」
「ご心配をおかけしました。私の為にエリス様や他のお二方を危険な目に会わせてしまって」
「私は平気。あの二人も頑丈だから」
エリスは短く返事を返すが、イリヤのその力によって、エリスが自分を心配してくれている事と、二人への強い信頼を感じ取っていた。
「それでは、王へ報告しなくてはなりませんので」
「私も行きます」
フェルニスがそう言って立ち去ろうとした時に、イリヤが立ち上がりながら言った。
「分かりました。では、先に謁見の間へ行っています。エリス、イリヤ様を頼みます」
「お任せ」
☆★☆
王宮内 謁見の間
「・・・以上が今回の顛末で御座います」
「そうか・・・・ともかく、イリヤが無事なようで安心した」
体を玉座へと沈みこませながら王が呟く。
「あら、ビンセント」
そこへフェルニスが入って来た。
「フェルニスか。お前もイリヤ様の件か?」
「ええ。その分だと、もう報告は終わったみたいね」
歩を進めてビンセントの横で跪く。
「お父様!」
それと同時にイリヤがエリスとレオンを伴って謁見の間へと入ってきた。
「おお、イリヤ。無事か」
「はい。ご心配をお掛けしました」
「いや、お前が無事なら良い」
イリヤの姿を見たスベイルーン王が相好を崩す。
「それで、お父様。お願いがあるのですが」
「なんだ」
「トーヤ様をお助けする為に部隊を動かしてほしいのですが・・・」
「ふむ。レオン、エリス。トーヤという少年が相手をしているのはどれほどの力量か?そなたらの意見を聞きたい」
レオンは一度、深くお辞儀をすると話し出した。
「はい。少なくとも俺かエリス、どちらか一方では絶対に歯が立ちません」
「私とレオン、二人が掛かりでやっと足止め出来ると思う。でも相手は多分、純粋な魔導師」
エリスがレオンに続いて自ら感じた相手の力量を話す。
「それは・・・ビンセント、フェルニスどう見る?」
二人の実力を知っている王は険しい顔で臣下に尋ねる。
「はい、二人にそこまで言わせる相手ですと一部隊では難しいかと。ただ、トーヤ君も中々の猛者らしいですから。そう簡単にやられはしないと思いますが」
「相手が純粋な魔導師ならば、剣士隊二部隊に私の隊から一部隊派遣しましょう」
「そうか。それならばそのようにしよう」
「はい、それではそのように・・・・」
フェルニスが部隊の編成に部屋を後にドアへ近づいた時━━━
「その必要は無いですよ」
声と共にドアが開かれた。
そこに立っていたのは、今まさに救出対象となっていたトーヤ・ハインツの姿だった。
「トーヤ!無事だったのか?!それよりその格好はどうしたんだよ!?それにどうやって王宮に入ったんだよ!!」
「ん?ちょっと本気出してみた」
「私も詳しい説明を要求する」
「分かった、分かったって!先に王様に説明してからな」
駆け寄って来た二人をなだめて、ビンセントのおっちゃんの三歩後ろで跪く。
「お初にお目にかかります。陛下のお姿を拝見出来、恐悦至極に存じます。
私はトーヤ・ハインツと申します。以後お見知り置きを」
「ほう、中々礼儀の成った少年だな。だが、今は無用だ。楽にせよ」
「はい。では、事の顛末をご説明させて頂きます。恐らくレオンとエリスの二人からお聞き及びとは思いますが、イリヤ様が誘拐されました。その後イリヤ様を奪還しましたが、王宮へ戻る途中に闇系統を使う魔導師と遭遇。尋常ない力量でしたので、二人にイリヤ様の護衛を頼み私が殿を務めました」
「ふむ、そこまではワシも聞いている。して、その魔導師はどうした」
「はい。結論を申しますと、逃げられました。ただ、相手は影を使った移動が得意と見えますので、また襲ってくるかもしれません」
「そうか・・・」
俺の話を聞いた王様は難しい顔をしている。
あれは何か知っている顔だ。好奇心が胸の内に芽生えるがそれを抑え込む。
「分かった。イリヤを守ってくれた事、礼を言おう。褒美は後日改めてする。今日はもう下がってよいぞ」
「分かりました」
もう一度深くお辞儀をすると部屋を後にする。
「トーヤ、色々と聞きたいけどまずはその服をどうにかしなきゃな」
「ああ、そうだよな。よし、二人とも僕の家に来て。そこで詳しく説明するよ」
「分かった。そうと決まれば早くする」
エリスが俺とレオンの背中を押してくる。
それに苦笑しながら俺達は王宮を後にした。
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