第12話 入学式前日後編
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講堂は寮から十五分程の所にあった。明日の入学式の準備の為か、荷物を持った人が引っ切りなし出入りしている。
「しっかし、ここも大きいな」
「そりゃそうだろ。初等科が全員入るらしいし」
「それで、次はどこに行くんだ?」
「ん~、どこ行きたい?」
「決めてなかったのか」
俺の言葉にガックリと肩を落とすレオン。イリヤは笑みを零し、エリスは……とくに変わりないな。
「私は学院舎を見てみたいですね」
「図書館に行きたい」
「俺は鍛練場だな」
見事にバラバラだ。
「う~ん、どうしよ」
近くにあった敷地内案内図を見ながら悩む。敷地が広い学院は、何年も通っている学生ならまだしも、来院者や新入生は迷子になってしまう。だから、至る所に案内図が設置されている。
「全部行くと夕食に間に合わなそうだな……。よし、一番近い鍛練場に行こうか」
「よし!そうと決まれば行こうぜ!」
「……残念」
「まあまあ、エリスはトーヤに色々教えてもらえるじゃないですか」
「ん、イリヤも」
「そうですね!」
とても仲の良さそうなエリスとイリヤ。やっぱり、女の子のコミュニケーション能力の高さはどの世界でも同じなんだな、と声には出さずに思う。
20分ぐらい歩くと、コロッセオみたいな形をした鍛練場が見えてきた。
「わくわくするな!トーヤ!」
「まあ、否定はしないけど程ほどにな?」
「分かってるよ!」
「………脳筋」
「うるせぇ!!」
「レオン、落ち着け。エリスも煽るな」
ギャアギャアと賑やかに騒ぎながら、鍛練場に到着。受付の男性に見学を申し出ると、学生紋を確認され”新入生なのに感心だな。でも脳筋にはなるなよ?”との言葉を頂いた。全員の視線がレオンに集まったのは、言うまでもない。
☆★☆
鍛練場内では夕食が近いからか、人数は多くないもののそれなりの人数が鍛練をしていた。
木剣のぶつかる音や魔法の色取り取りな光が視界に入る。
鍛練をしているのは学生紋から中等科生だと分かる。
ちなみに学生紋は、初等科が盾、中等科が杖、高等科が剣を模していて、第一学年から赤、青、緑と縁取りの色が変わる。目の前の中等科生の縁取りは青。中等科二年生だ。
「やっぱ動きがいいな」
「魔法の発動もスムーズ」
「そうなんですか、トーヤ?」
「多分ね。僕もそこまで詳しいわけじゃないから」
俺の評価基準はエリスやレオン、ツァリさんだから、どうしても辛口採点になってしまうのでアテにならない。
暫し無言で見学する。その中で、俺は一つ心配なことがあった。前世では数え切れないほど描かれていたこのシチュエーション。ほぼ絶対的なお約束として、弾かれたり避けられた魔法やら折れた木剣やらが飛んでくる。
警戒していて損はない。
「イリヤ、みんなもあんまり前に出すぎるなよ」
「なんでだよ?」
「いや、危な……」
「そこのお前ら!そこから離れろ!!」
見ると、成人男性の上半身ぐらいある巨大な火炎弾が迫っていた。恐らく、火系統中級魔法『地獄の炎弾』だろう。
「……仕方ない。レオン、イリヤ、下がれ。エリス、障壁の用意」
俺の言葉に即座に反応する三人。それを尻目に、雷斬を引き抜く。鍛え上げられた刀身がギラリと瞬く。
意識を集中、魔力光を青白色に染め上げる。
発動するのは氷系統下級魔法。
勿論、そのままぶつけては意味がない。
「――術式固定」
右手の青白い球体を雷斬にぶつける。
「『術式付与』、氷刀、雪月花!」
冷気が刀身を被い、体感温度がグッと下がる。
「立花一刀流―――破断!」
斬ッ!と音を立てて振り下ろされた雷斬は、一切の抵抗も許さずに炎弾の切断面を凍りつかせながら、断ち切った。
左右に分かれて霧散する炎弾。
「……障壁、必要なかった」
「保険だよ。何もないならそれでいいんだ」
「それと、聞きたいことがある」
「ん、後で話すから」
こちらにやって来る二人の中等科生を見つめながら返す。
「君たち、怪我はないか!?」
「スマン!俺がよく確認せずに撃ったばかりに……」
「大丈夫ですよ、先輩方。驚きはしましたが……」
「それならいいんだが……今のは?」
やっぱり聞いてくるか。
まあ、その対策の為に術式固定する仕草を後ろ以外見えないように注意したんだけど。
「この刀ですよ。コイツ、魔法刀なんです。氷系統の魔力を流すとこうなるんです」
未だ冷気を纏っている雷斬を見せる。
「なるほど!これは、中々の業物だな」
「そうでしょう。両親が入学祝いに用意してくれたんです」
両親からのプレゼントを褒められて悪い気はしない。
「そうか、大事にしろよ。俺は中等科二年のザトラだ」
「同じく中等科二年のヒューイックだ。お詫びと言っちゃあ何だが、困った事があったら何時でも相談してくれ」
学生紋を見せながらそういう先輩二人。
「ご丁寧にありがとうございます。その時は是非頼らせていただきます。僕はトーヤ。こっちの三人は友達のイリヤ、エリス、レオンです」
それぞれ挨拶を交わす。
「それにしても、君の剣術は素晴らしいな。珍しく刀を使うようだが」
興味津々とばかりに視線を向けてくるザトラ先輩。
「いい師匠に恵まれたんですよ。いい両親にもね」
「なるほど、俺達もうかうかしてると追い越されかねんな」
「そうだな。お、六の鐘だ。ザトラ、飯にしようぜ。お前らも、今日は終いだ。残ってるの俺らだけみたいだしよ」
見ると、鍛練場に居た学生は俺達だけだった。
「そうみたいですね。僕達も夕食に行きましょうか」
「賛成、お腹空いた」
「俺も腹ぺこだぜ」
「私もです」
先輩二人が手続きを終えるのを待って、外に出る。
「それでは先輩方、また何時か」
「おう!困ったことがあったら中等科の二組に来てくれ」
「俺もそこに居る。君達が有意義な学院生活を送れることを祈っている」
「ありがとうございます。では」
二人と別れ、初等科寮へ向かう。
「トーヤ、さっきの説明」
「早速か。いいけど、学院内では許可された場所以外での魔法使用は禁止されてるから、理論だけになるぞ?」
「それでいい」
「私も気になります!」
「俺は聞き流すわ。難しい話は分からん」
それからツァリさん直伝の術式固定理論について語り、夕食を食べ、風呂に入り明日への英気を養う為に早め寝た。
因みに、夕食は家と同じぐらい美味しく、風呂は広かった。




