第9話 幕間
???
石造りの宮殿の一室で、少女は跪いていた。少女の前にいるのはローブ姿の老人だ。
「それで、その少年は確かに”銀色”の魔力を発したのだな?」
「間違いありません、ドヴォグ様」
跪く少女、トーヤ達を襲ったローブ姿の彼女は、自らの主へ事の顛末を報告していた。
何やら事情を知っていそうな雰囲気ではあるが、下手なことを聞いて余計な事を知ってしまえば、文字通り”消され”かねない。
「ふむ、解った。任務ご苦労、領地に戻れ」
「了解しました。全てはデュナミス様の御心のままに」
そう言うと、いつかのように少女は闇に消えた。
「………セラフィムが動いたか。役者はそろいつつある。残るは”あの方”の器だけ」
ドヴォグはそう呟くと、思索に耽るように瞳を閉じた。
☆★☆
アルン第二円周区 ハインツ邸 中庭
「それではトーヤ様、試合を始めます」
「よろしくお願いします」
そう言って身体強化を発動し、木刀を構える。
「身体強化は中々様になってきましたね」
「それでも、ツァリさんには及ばないよ」
俺と同じように身体強化を発動させているはずなのだが、赤茶色の魔力光が全然もれていない。よく目を凝らして、ようやく肌に薄皮一枚程度の魔力光を見ることが出来る。
意志力で魔力を収束しているのだ。同じ魔力出力であれば、構成密度の高い魔法の方が強い。
「それじゃ、行きます!」
下段に木刀を構えて、地面を蹴る。一瞬で間合いを詰め、木刀を振り上げる。
「素晴らしいスピードですね」
「当たってもいないのにそう言われても、悔しいだけですよ!」
いつもながら見事な見切りで、一歩後ろに下がっただけで避けられる。
「まだまだ!」
動きを止めずにもう一歩踏み込みながら、今度は軌跡を辿るように振り下ろす。
これも避けられるが、予定通りだと言わんばかりに横に薙ぐ。同時に無詠唱で下級魔法『雷の矢』を放つ。その数、32。
半数を直接、もう半数を回避地点を先読みして放つ。意志力の鍛練の賜物だ。
「これは、予想以上ですね。短期間で複数同時操作を身につけましたか」
「ツァリさんに勝ちたくて必死に鍛練したからね!」
「なるほど。それでは、トーヤ様に新しい目標を提示しましょう」
轟ッ!!という暴風と共に全ての矢が流される。
「うわ!一発も当たらないのはちょっとショックだよ……」
「少し本気を出しましたから。これで当たってもしまっては、私の方が自信を無くしてしまいます」
「そ、そうなんだ」
よし、少しとは言えツァリさんに本気を出させるようになったぞ!
「それではトーヤ様、よく見ていて下さいね?」
「分かった」
俺の見ている前で、ツァリさんがいつも以上に集中する。魔力光は緑、風系統だ。
新しい魔法でも教えてくれるのかな?
「我放つは、大気を揺るがす緑の風
この手に集いて、敵を斬り裂く鎌と化せ―――」
ここまではいつもの詠唱と同じだ。そういえば、ツァリさんが詠唱するの久しぶりに見たな。でも、この魔法ならもう使えるぞ?
「――術式固定」
…………え?
「我放つは、大気を凍らす青白き氷
彼の地を凍らせ、敵を阻め―――」
続けて魔力光を青白にし、氷系統の魔法の詠唱。右手には緑色の球状の光が輝いている。
「――術式固定」
また、あの初めて聞く詠唱。
今度は左手に、青白色の球状の光が輝く。
「融合進化、『凍てつきし烈風』!」
二つの球体が合わさり、緑と青白の混ざった風が的の案山子を切り裂き、凍りつかせる。
「ツァリさん………今のは?」
呆然としながら、俺はそれだけを搾り出す。
「融合進化、複数の魔法を組み合わせることで、より強力な魔法を作り出す技術です。組み合わせる魔法の特性を受け継ぐので、色々な効果を持つ魔法を作れます。因みに今のは、『裂く烈風』と『凍てつく大地』の融合で、効果は見ての通り、風の刃が切り裂きそこを凍りつかせるものです」
「すごい……すごいよ!ツァリさん!こんな技術を持ってるなんて……実は何処かの精鋭部隊にでも居たんじゃない?」
「………いえ、私はただのメイドですよ、トーヤ様」
答えるまでに少し、間があったのは気にしないでおこう。地雷かもしれないしな。
「それでは、まず基本的な所から始めましょう」
「よろしくお願いします!」
そうして、俺はツァリさんの講義に集中するのだった。
ストックが切れるので明日の更新で一先ず停止します
あまり長い時間はかからないと思うので、暫しお待ち下さいm(_ _)m




