第79話 大戦争なのじゃ~!!
ミシャは白色のマントと銀の髪を揺らし、挨拶を行う。
「またお会いできましたね、リョウさん」
「ミシャ……あの、一体どういう状況なんだ? ここは宇宙だよね? 空気とか大丈夫なの?」
「くすっ、はい。いま私たちがいる場所は、人工重力とシールドで守られてますから」
「そ、そうなんだ。で、左右いっぱいに広がっている靄や光や船は何?」
ミシャは仄かな微笑みを消して、ガラス細工の人形のように熱のない表情を見せた。
銀色の長い髪と相まって無機質な冷たさを感じるが、同時に覚悟のようなものもまた感じる。
「連邦は、リョウを支持することを表明します」
「はい?」
「つまり――」
――大戦争なのじゃ~~~~!!――
聞き覚えのある声。声の出どころへ顔を向ける。
いたのはやっぱり――
「アスカ!」
「息災か?」
アスカは桃色の髪をふわりと揺らし、白いワンピースのスカートをひらりと舞わせて、にんまり笑顔を見せる。
――その笑顔が死ぬほど腹立たしい!
「息災か、じゃねぇよ! パチンコで死ぬかと思ったわ!!」
「そうかそうか、楽しんでくれたかぁ」
「どうしよう、こいつ、話が通じねぇ! なぁ、看板! あれ、看板?」
「太陽神アスカ……超神クラスの神」
「おんや、もしやワシにビビっておるのか? 安心せい、取って食ったりはせぬわ。ぬはははは!!」
怯えを見せる看板とは対照的に、能天気に笑い続けるアスカ。
俺からすれば厄介な存在というだけで、そこまで怖い神には見えないけど……。
「でも、いつも平然としている看板が怯えるくらいだし。そんな凄い神なの、アスカは?」
この疑問に、ミシャが答えてくれた。
「リョウさんにわかりやすく説明しますと、連邦が観測した範囲でのアスカさんの最大エネルギー量は10⁵⁷⁰ J/s です」
「ん?」
「これは宇宙全体の恒星エネルギーのおよそ10⁵⁰⁰倍。言い換えれば、宇宙を10⁵⁰⁰個束ねてもなお、足りません」
「もっと噛み砕いて」
「そうですね、一言で言えば、アスカさんが少し本気になると宇宙消滅」
「はっ!?」
アスカへ顔を向ける。
「ほ~れ、ほ~れ、ワシが怖いんか。怖いんのか? む~?」
「う・ざ・い!」
とてもそんな途轍もない神には見えない……。
俺は軽く頭を振って、話題をアスカが先ほど大声で叫んだものへと戻す。
「あの、さっきアスカが大声で戦争だ~って言ってたけど、どういうこと?」
ミシャは空に浮かぶ船たちを見つめる。
「現在、ここには、あなたと管理者が出会うことを支持する神と、不支持の神が集まっています。また、種族の中でも、意見が二つに分かれています。その対立が現状を生み出しました」
「俺が出会うと、何が問題なの?」
「出会うことにより、新たな『知』を観測できるという支持者。出会うことにより、予測できない事態が起きて『全知』を失うという不支持者。種族の中にも、予測不可能な危険性と、未知への探求を優先する側とに分かれているということです」
「……なんか、大事になって――ん、待てよ、戦争ってまさか!?」
「はい。リョウさんが会場を用意した瞬間、その行為が戦いの号笛となり、この宇宙のみならず、全次元・全時間軸で大戦争が勃発します」
「――なっ!? そ、それってマジの戦争? いっぱい死ぬってこと?」
「いっぱいの定義は難しいですね。予測される犠牲は神――零と呼ばれる領域全体エネルギーの2割を消失。種族――およそ五兆」
「ご、五兆!? 五兆人が死ぬってことなのか!?」
呼吸が浅くなり、指先が冷えていく ……。
俺は後ろによろめき、星々が広がる漆黒の空を見上げた。
(俺が決断したら、五兆人が死ぬ……何だってんだよ、くそったれ!!)




