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世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第十八章 星々の世界

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第79話 大戦争なのじゃ~!!

 ミシャは白色のマントと銀の髪を揺らし、挨拶を行う。


「またお会いできましたね、リョウさん」

「ミシャ……あの、一体どういう状況なんだ? ここは宇宙だよね? 空気とか大丈夫なの?」

「くすっ、はい。いま私たちがいる場所は、人工重力とシールドで守られてますから」

「そ、そうなんだ。で、左右いっぱいに広がっている靄や光や船は何?」



 ミシャは仄(ほの)かな微笑みを消して、ガラス細工の人形のように熱のない表情を見せた。

 銀色の長い髪と相まって無機質な冷たさを感じるが、同時に覚悟のようなものもまた感じる。


「連邦は、リョウを支持することを表明します」

「はい?」

「つまり――」



――大戦争なのじゃ~~~~!!――



 聞き覚えのある声。声の出どころへ顔を向ける。

 いたのはやっぱり――


「アスカ!」

「息災か?」


 アスカは桃色の髪をふわりと揺らし、白いワンピースのスカートをひらりと舞わせて、にんまり笑顔を見せる。

 

――その笑顔が死ぬほど腹立たしい!


「息災か、じゃねぇよ! パチンコで死ぬかと思ったわ!!」

「そうかそうか、楽しんでくれたかぁ」

「どうしよう、こいつ、話が通じねぇ! なぁ、看板! あれ、看板?」


「太陽神アスカ……超神クラスの神」

「おんや、もしやワシにビビっておるのか? 安心せい、取って食ったりはせぬわ。ぬはははは!!」


 怯えを見せる看板とは対照的に、能天気に笑い続けるアスカ。

 俺からすれば厄介な存在というだけで、そこまで怖い神には見えないけど……。


「でも、いつも平然としている看板が怯えるくらいだし。そんな凄い神なの、アスカは?」

 

 この疑問に、ミシャが答えてくれた。



「リョウさんにわかりやすく説明しますと、連邦が観測した範囲でのアスカさんの最大エネルギー量は10⁵⁷⁰ J/s です」

「ん?」


「これは宇宙全体の恒星エネルギーのおよそ10⁵⁰⁰倍。言い換えれば、宇宙を10⁵⁰⁰個束ねてもなお、足りません」

「もっと噛み砕いて」


「そうですね、一言で言えば、アスカさんが少し本気になると宇宙消滅」

「はっ!?」


 アスカへ顔を向ける。

「ほ~れ、ほ~れ、ワシが怖いんか。怖いんのか? む~?」

「う・ざ・い!」



 とてもそんな途轍もない神には見えない……。

 俺は軽く頭を振って、話題をアスカが先ほど大声で叫んだものへと戻す。

「あの、さっきアスカが大声で戦争だ~って言ってたけど、どういうこと?」


 ミシャは空に浮かぶ船たちを見つめる。

「現在、ここには、あなたと管理者が出会うことを支持する神と、不支持の神が集まっています。また、種族の中でも、意見が二つに分かれています。その対立が現状を生み出しました」


「俺が出会うと、何が問題なの?」



「出会うことにより、新たな『知』を観測できるという支持者。出会うことにより、予測できない事態が起きて『全知』を失うという不支持者。種族の中にも、予測不可能な危険性と、未知への探求を優先する側とに分かれているということです」


「……なんか、大事になって――ん、待てよ、戦争ってまさか!?」


「はい。リョウさんが会場を用意した瞬間、その行為が戦いの号笛(ごうてき)となり、この宇宙のみならず、全次元・全時間軸で大戦争が勃発します」


「――なっ!? そ、それってマジの戦争? いっぱい死ぬってこと?」

「いっぱいの定義は難しいですね。予測される犠牲は神――零と呼ばれる領域全体エネルギーの2割を消失。種族――およそ五兆」


「ご、五兆!? 五兆人が死ぬってことなのか!?」


 呼吸が浅くなり、指先が冷えていく ……。 

 俺は後ろによろめき、星々が広がる漆黒の空を見上げた。


(俺が決断したら、五兆人が死ぬ……何だってんだよ、くそったれ!!)

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