表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が滅びたので、看板を片手に旅に出ます~世界を救う相棒は、口の悪い一枚の看板でした~   作者: 雪野湯
第二章 明かりをつけ忘れた世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

第7話 光は新たな命を育む

 気を取り直して、スイッチに触れる。

 そして、逆方向に動かすと、重々しい見た目よりも簡単に動かせた。


――ガッチャン


 想像通りの音が響く。

 途端、世界が真っ白になる。


「うわっ! 目が!!」

 スコープがなくても、暗闇に慣れきった瞳に飛び込む太陽のような光は、あまりにも強烈すぎた。


 俺は両眼を押さえて、ゆっくりと指の隙間を開け、光に慣れさせようとした。


 だが――――耳に届く恐ろしげな音が、それを許してくれなかった。



「ぎゃあああああああ!」



「な、なに!?」


 悲鳴が響き渡る!

 俺は白に染まる視界の中で目を細めながらも、周りを見渡した。

 すると……。


「ああああ、()けるぅぅぅ!」

「からだが……とけて……いくぅぅぅ……」


 人の形をした影たちが悶え苦しみ、ジュウジュウと髪の焦げる匂いを振りまきながら倒れ込み、呻き声を放ち、ドロドロとなって消えていく。


「――なっ!? 一体何が起こってるんだ!?」



 この声に看板は、感情の色がない、淡白な文字をゆらりと浮かべた。


「影たちは闇の中で存在するもの。光の下では存在できないからね。こうなるよ」

「……は?」


「この闇の世界は失敗した世界。だけど、人のために用意していた魂の断片に、影が宿り、彼らは生まれた。でもこれは、この世界の神の意思に反するもの。だから、処分する」

「処分って……」


 

 俺は真っ白な世界を、二つの瞳に映した。

 そこには何もなく、影たちの悲鳴も、彼らが苦しみ放っていた鼻を突くような匂いもない。

 

「みんな、いなくなった……」


 俺の体は崩れ落ち、両膝を地につけた。


「俺のせいで……俺がスイッチをつけたから……」

「気にする必要はないよ。コンピューターで言えば、バグみたいなものだから」


 この熱も通わぬ淡々とした言葉に怒りを覚え、俺は看板を両手で掴み上げた。

「ふざけんな! バグだと! 彼らは苦しんでいたんだぞ! しゃべってもいた! 動いていた! こんなの、こんなの……虐殺とおんなじじゃねぇか!!」


「全然違うよ」

「どこがだ!!」


「生きてはいないから」

「生きてただろ! 俺は――」



 右手を見る。そこに宿る、あの柔らかさと温かさを思い出す。

「俺は――この手のひらから命を感じたぞ!」


「それ、もふもふの電気あんかを触って命だと言ってるのと同じだよ」

「違うだろ! 全然違う!」

「同じだって。もふもふの電気あんかに音声機能を付けただけ。たしかに痛みを感じてるように見えたけど、実際は彼らに痛みなんてなく、反射的に痛みという概念を模倣しただけにすぎない」



「模倣……あれが……」

 両耳に焼きついた悲鳴。

 両手で耳を塞いでも、内側に響く残響が消えることはない。


「ちょっと待ってくれ。こんなのおかしいだろ……だいたい、光をつけたら彼らは人間になるんじゃなかったのか?」

「うん、なるよ。失敗作から意識を回収して、光の下で人間として再構成されるからね」


「再構成……なんだ、それ?」


 おかしい……。

 何かがおかしい? それすらも説明できない。彼らは生き物ではない。でも、俺は生き物だと認識してしまっている。だから……。


「大勢を、殺した……」

 ……手が、震えて止まらない。



 看板は軽薄に文字を躍らせる。

「もう~、だから違うって~。壊れた人形を捨てただけのこと。そんなことよりも善行ポイントが付与されたよ。今回は神からの依頼だったので、簡単なお仕事でも高ポイント! 500ポイントで~す。やったぜ!!」


 看板の表面には、小学生のテストに書かれるような花丸が描かれていた。

 焼け焦げた異臭が残り香として、鼻奥にこびりつく中で、500の数字が浮かぶ。

 俺はそれを半開きの口とともに、涙ぐんだ瞳で見つめていた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ