第69話 もう一人の妹と宇宙人
ユニに促され、不満をありありと見せながらも、まつ毛のないグレイが先に挨拶して、まつ毛がある方があとに名乗った
「はぁ、私はエイ。もっとも、この名前は柚迩が勝手につけたものだがな」
「フン、私たちの真の名前は貴様らの未熟な発声器官で発音は不可能だからな……私はリアンだ。貴様のような模倣体を相手に、原始的な会話という方法で接触を取るとは……」
「もう、そうやってすぐに他種族を見下す。だから恨まれてるんだよ。気にしないで、お兄ちゃん。この二人、誰が相手でもこんな感じだから」
「えっと、そうするよ……というか、エリア51に居そうな宇宙人が目の前にいる驚きの方が勝って、気にならないし」
「そう? だけど、エリア51にいるのは宇宙人じゃないんだけどね」
「え!?」
「あ、そっちが看板? 柚迩も話で聞いただけって言ってたけど、合ってる?」
「うん、合ってるよ。僕は看板、よろしく」
「よろしく~」
「君はここで何をしてるの?」
この看板の問いに、ユニはげんなりした表情を見せた。
「エイとリアンに恨みを持つ宇宙人に襲われてさぁ~、そのせいでエンジンが駄目になったの」
俺はしかめた顔と一緒に疑問を声に出す。
「宇宙人に襲われるって? どんな旅をしてるんだ?」
「普通の旅だよ」
「普通の旅で、宇宙人に襲われたりしないだろ……」
「宇宙では結構ありありだよ。ほとんど無法地帯だし。で、なんだかんだがあって修理に来たの。あと、ついでに兵器の換装も。いいのが手に入ったからね」
「兵器?」
「そう、超絶すっごい兵器! その名も――ニフフフ、神殺しハイパーX!!」
――ビシッとVサイン!
安直すぎる名前と共に、なんとも品のない笑い声を漏らす妹がここにいる……。
その笑い声に、エイとリアンはため息をぶつけた。
「はぁ、エンジンが故障したのは貴様の操縦のせいであろうが」
「有機量子溶媒に、幼稚なメスの脳波をぶつけるからだ。何が最高出力で飛ばすぞ~、だ!」
「うっさいうっさい、そのおかげで敵艦隊から振り切れたんでしょうが! あとメスって言うな!」
三人の口論が始まった。
俺と看板は互いに顔を見合わせて、どうしたものかと悩む。
ちょうどそこに、ミシャが通りかかった。
「お願いですから、騒ぎを起こさないでください」
「あ、ミシャ。こんちわ~」
「連邦の使いっ走りが何の用だ?」
「相も変わらず、下らん組織ごっこに興じているようだな」
「それが連邦のドックを使用させてもらっている人たちの態度なんですか?」
エイとリアンはこう返す。
「それについて、感謝はしている」
「フン、使ってやっているのだ。むしろ感謝してほしいものだ」
この態度から、エイの方がまだ友好的で、リアンの方は居丈高に見える。
俺はぼそりと呟く。
「連邦って最強の組織なんだろ? よくあんな態度が取れるな」
この声がミシャに届いたようで、答えを返してきた。
「あちらの一族は宇宙でもトップクラスの技術力を誇りますから。連邦とて、そうそう事を構えたくない相手なんですよ」
「そうなんだ……だからと言って、態度でかすぎない?」
「彼らは対等という思想を嫌いますからね」
「ひっどい思想だな……」
「ですが……」
ミシャがちらりと視線を振る。俺もそちらに顔を向ける。
ユニはエイとリアンに対して、ミシャへの態度の悪さを咎めていた。
だけど、それをきっかけに、再び三人は口論を始めた。
その三人へ、ミシャは微笑みを見せる。
「そんなお二人でも、柚迩さんとユニさんは、特別だと思っているようですよ、ふふ」
「それは良いことって言っていいのかな?」
「くすっ、さあどうなのでしょうね」
俺は再び三人を見てから、看板を見上げる。
「どうする、戻る?」
「そうだね、あらかた見て回ったし」
「じゃあ、勇者たちと合流するか。その前に……お~い、ユニ」
「うん、なになに?」
ユニはエイとリアンにダブルヘッドロックをかけて、二人は二人で念動力みたいなのを使い、ユニのほっぺを引っ張っている。
「え~っと、もし予定がないなら、一緒に飯でも食うか?」
「あ~、ごめん。兵器の換装に立ち会わないといけないから……」
「そっか。なら仕方がない」
「でも、すぐに会えると思うよ。じゃーね~」
そう言ったユニの口元は、どこか悪戯っぽく吊り上がる。
彼女は踵を返し、ヘッドロックをかけたままのエイとリアンを引きずっていった。
残された俺は、疑問符を纏う。
「会える? 今のは……なんだ?」




