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世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第十四章 心の世界

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第67話 神秘は神秘のままに

――――半球外・別室



 ミシャは一連の出来事をこう分析し、評価していた。

「リョウさんの危機的な状況を前にして、リョウを救うという管理者プログラムが最優先起動。これにより、看板さんの機構と心の修復が行われました」


 彼女の言葉に、魔王は投げやりな言葉を飛ばした。

「心の力というよりも、プログラムとやらのおかげか」

「……ですが、一つ気になることがあります」

「なんだ?」


「その機構自体が壊れていたのに、機構が動いたことです。どうやって動いたのか、という疑問が残ります」


 ミシャの言葉に、勇者が小さく笑い声を立てた。

「ふふ、それこそが心の力なんだと思うよ。看板の『リョウを助けたい』という心が、力を引き出した」


 ミシャはその謎に対して分析を行おうとした。

 だが、光の粒を見つめるのをやめて、目を閉じ、微笑みを見せる。

「そうですね。心が時に思わぬ力を持つことは事実です。これはどれだけ文明が発展し、技術を得たとしても変わらない事実」



 ミシャは光の粒をすべて消す。

 メルが勇者と魔王には届かない声で、ミシャへ話しかける。

「本当に分析しなくてもよいのですか?」

「メルさん、時に調べないという選択肢も必要なんですよ。物事には、真実を知る場と、神秘に身を置く場というものがありますから」


「……連邦はもっとお堅いと思っていましたが、意外とロマンチストなんですね」

「それは心外です。ロマンがなければ、探求心も湧きませんから……くすっ」


 不意に、ミシャから笑い声が零れ落ちた。それに、メルは片耳を折った。

「ミシャさん?」


「失礼。遠い昔、おにい……兄と共に一つの大陸を旅していた記憶が蘇ったもので。リョウさんを見ていると、兄を思い出します。私とは違い、感情豊かだった兄のことを……」


 ミシャはどこか遠くを見るように、懐かしさを纏う笑みを見せた。



――半球内


 青々と生い茂る草の絨毯。真っ青な空。まさにあの草原の風景。

 そこには、ナス畑も闇の住民も神官もいない。

 

「みんな、消えた?」


 この呟きに、看板が文字を生む。

「君の心が投影した存在。君の罪悪感が生み出した存在。だけど、今はそれよりも僕との再会がうれ……まぁいいや」


「よくないだろ! 恥ずかしがらず最後まで言えよ!」


「君が言ったら?」

「恥ずかしくて言えるか!」


「フフフ、妙なところでツッパるね」

「お互いにな、あははは」


 笑い合い、看板を持ち上げて、いつもの肩に乗せる。

「さて、出るか。みんなを安心させてやらないと」



 と言いつつも、俺は足を止めて、そっと振り返った。

 そして、心を投影した世界を思い起こす。

(たしかにみんなは消えた。でも、俺の心には彼らが残っている。向き合わないと……いや、答えを出せる力を得ないと。その覚悟をしよう。そのためには――)



 遠くを見つめる。

 先に存在する管理者を睨みつけて……。

(心の力が反映する世界。心の力を剣に、盾に。これか……この場所こそが、対等に渡り合える場所なんだな――そうだ、アスカはこうも話していた!)


《かつて、おぬしの素体であるリョウも巨悪に挑み、想像を武器に勝利を得ておる》


(俺も同じように、想像を武器として戦うんだ。あいつがやれたなら、俺だってやれるはず! そのために必要なものは……管理者に会うためのポイントと……ポイント? ポイントだと!?)


「ポイント……想像を武器にできる世界。そうだ、ポイントを使えば!」

「どうしたの、急に?」

「いいことを思いついたんだよ!」


 俺は満面の笑みを見せて、拳を握りしめた。

(管理者を――俺の舞台へと引きずり出す方法を見つけたぜ!)

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