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世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第十三章 超技術の世界

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第60話 連邦の少女

『連邦――《現宇宙が存在する以前から》存在する組織。幾重もの宇宙の歴史を積み重ね、なお君臨する不滅の集団。連邦とは名ばかりで単独の組織であり、所属する惑星は全て、管理保護惑星に過ぎない』(by.メル)




 穴ぽこを越えて飛び出た先――そこで勇者と魔王は言葉を朧(おぼろ)にし、音を浮つかせた。

「な、なんだ、ここは……地面が金属?」

「見よ、空にも金属の塊が――いや、船か!? 金属の船が浮かんでいる!?」



 光沢のある金属に舗装された地面。

 だが、花壇や植え込みは所狭しと配置されており、木々や花々に囲まれる。

 金属の地面に自然が同居するという、不思議な空間。


 俺たちが訪れた場所は高台になっており、足元には幾何学模様が描かれた石台。

 周囲は開け、少し先には扇状の展望台があった。



 その展望台の上空には、数え切れぬ船が飛び交う。

 俺はSF知識があるのであれらが宇宙船や宇宙艦だとわかったが、乗り物と言えば馬車くらいしかない世界から訪れた勇者や魔王にとっては理解しがたいものだろう。


 船たちは雑然と飛び交っているようで、ぶつかることはなく、その実は整然という不可思議な空の舞を見せる。



 展望台から広がる眼下には、廊下が何重もの層になっていて、底が全く見えない。

 それなのに暗がりの印象はなく、奥底まで明かりに満たされ、交差する廊下がドリッピング(筆を使わず絵の具を垂らす絵画技法)の絵画のように彩られていた。


 だが、そこには人影は一切ない。



 空を見上げると、スライムのように間延びするシャボン玉みたいなものがたくさん浮かぶ。

 それらが宇宙船に触れると、船体に吸収されていく。




「あのもやもやはなんだ?」

「グロスフィア。エネルギーが凝縮された膜です。一つの膜だけでも、O型恒星レベルのエネルギーを有しています」


 不意に聞こえてきた、少女の声。

 俺たちは驚き、声に対して体ごと振り向けた。


「君は?」

「私は連邦所属・情報分析官のミシャ=ロールズ、ナンバー57です」


 

 そう名乗ってきたのは、腰丈まで届く長い銀髪を持つ十代中頃の少女。

 黒の瞳は新緑の虹彩に覆われ、それはとろりと眠そうな瞳をしており、顔は幼くとても愛らしいが、内包される美に誰もが目を奪われる。


 服装は、胸元と右肩にメビウスの輪の花柄が描かれた、青と白を基調とする学生服風のブレザー姿。

 黒のタイツを着用し、首元には黒のリボンタイ。


 その上から、白衣のマントを纏っている。



 メルは彼女の名を聞いて、俺の心臓が飛び出すかと思うくらいの甲高い声を上げた。

「にゃ、にゃ、ニャンバー57! 二桁ナンバーのミシャ=ロールズ!!」

「うわ、びっくりした! どうしたの、メル。急に大声出して?」


「出しますよ! ミシャ=ロールズと言えば、連邦最高評議会議長!」

「議長?」


「彼女には複製がいます。その数はオリジン(0)を筆頭に一万! その全てが創造神クラスの力を持っていまして、二桁ナンバーともなれば、単独で百は超える神と渡り合える力を持っているんですよ!!」


 彼女の驚きを、勇者と魔王が震えで表す。

「こ、この子……底が全く、見えない」

「あの女神など、この少女の前では塵に等しいぞ……」



 三人の反応を見て、改めてミシャという少女を観察するように見た。

 感情がとても薄そうな、淡白な美少女。

 それだけで、三人が恐れるような力を有しているようには見えない。


 だが、この三人が恐れるということは……実力は確かなのだろう。


 少女はちらりと空を見て、すぐに俺へ視線を戻す。

「あの靄(もや)は、エネルギーの塊。それを船体から吸収しています。リョウさんにわかりやすくとお伝えしますと、ガソリンスタンドとお伝えすればよろしいでしょうか?」

「……俺の名前を知っているんだ?」


「ええ、有名人ですので。特に、あなたのオリジナルは」

「――っ!」



――あいつと俺は別人だ!

 

 オリジナルという言葉に、一瞬、そう心が疼いた。

 だけど、俺もまたそういった区分けをしている。


 それでも、勝手なもので、この切り分けられた物言いは、俺が偽物だと言われているようで不快に感じてしまう。


 俺は不満を隠さず、顔に出した。

 だけど、ミシャは気にする様子もなく話を進めていく。



「管理者……『運命』と呼ばれる絶対禁忌の存在に接触した少年。ふふ、本当に興味深い」

「運命?」

「絶対の認知という強制力を持った力です。矛盾なく『そうだ』とさせる力。神も我々連邦も、そして数多の組織もまた、触れたくても触れられなかった力。それが今、白日の下に晒されようとしている」



 ミシャは小さく笑みを浮かべた。

 そこにあるのは、好奇心に対する喜び。



 それが無茶苦茶腹立たしくて、握る拳に力が入った。

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