第57話 最短コースで友との再会を果たそう!
俺は真っ直ぐと正面を見据えた…………なんでか、二股の巨木に据えられた椅子に座らされて。
「あ、あの、なんで俺、こんなところに座らされてるの?」
これにミュールが答えてくる。
「リョウさんを草原へ送らないといけないじゃないですか?」
「うん、そうだけど」
「あちらを見てください」
ミュールの指先が差す場所――椅子がある真正面に穴ぽこにあるものと同じ、紫と黄金が絡み合う渦が蠢いている。
「あちらの渦からリョウさんがいた草原へ向かうことができるのですが、ちょっと距離がありまして、そのまま飛び込んでも勢いが足りないんですよ」
「はぁ……? それで、なんで俺が、ここに座るに繋がるの?」
「ヤマタノ~、ベルトを固定するのじゃ。着脱式じゃからしっかり固定して大丈夫じゃぞ」
「ハイなの~」
ヤマタノが俺の背後に回り、みぞおちあたりにあるベルトをギュッと締めてきた。
「ごほっ! くるしっ。いや、なにしてるの? マジで?」
「ですから、勢いが足りないんで……このパチンコで勢いを補おうと……」
「ぱちんこ? ――え!? いや、まさか!?」
俺は自分のいる場所と巨木を見た。
二股に分かれたYの字をした巨木。
そのYの先端にゴムと座席。そこに俺は座っている。
「ま、まさか、パチンコの弾みたいに、俺を吹っ飛ばす気じゃ!!」
「ピンポンじゃ。ヤマタノ、リョウを引っ張るぞい」
「いくの~。ぐいーっとなの~」
座席を後ろから引っ張られ、Yの中央から後方へと離れていく。
「待て待て待て、おかしい! 絶対おかしい! 空間を移動するわけじゃん。それを物理的な勢いで補うっておかしくない!?」
「空間も勢いがある方が進むものですよ、リョウさん」
「ミュールさん、僕はそれには賛成できないかなぁ。ってか、他にやりようがあるだろ! なんでパチンコで飛ばそうとしてんの?」
「それは~、アスカさんの発案でして」
首だけを何とか動かして、背後にいるアスカを睨みつける。
「アスカ!」
「いや~の~、この方が面白そうでな」
「ふざけんな!! 却下だ、却下!」
「もう準備は終えたの~、いまさらこのプロジェクトは止められないの~」
「役所仕事か! ミュール!」
ミュールは苦笑いを見せる。
「あはは……ちょっと面白そうと思っちゃったんです」
「んだと!?」
「いま思えば、ひどいですよね。アスカさんに相談されたときは、寝てないせいか、テンションが妙だったみたいです」
「しっかり寝ろ!」
そうこうしている間にも、座席はぐんぐん後方へ伸びていく。
ゴムはミシミシと鳴いて、二股の木が湾曲し始める――これ、絶対ヤバいだろ!!
「マジかマジかマジか! 中止だ、中止してくれぇ!!」
「何を言う、おぬしは一刻も早く看板と再会し、話し合わねばならぬのだろう」
「――っ!? それは、そうだけど……」
「行け、リョウよ。最短コースで友と再会するがよい……ぷふぅ、ゴムを放したらどんな風になるんじゃろうな? うぷぷぷ」
「てめぇ、笑ってるじゃねぇか!」
「ヤマタノ、いくぞ~、せ~の!」
「やめろぉぉぉぉ!!」
「ハイなの!」
二人の手が座席から離れた瞬間――びゅん!!
視界が高速で後ろへ流れ、俺は風圧に顔面を強烈に叩きつけられながら、紫と黄金の渦へと一直線に弾き飛ばされた。
「ちきしょう! 金輪際、神なんて信じねぇからなっぁああああああ!!」
渦に触れると、いつものように体が間延びする暇もなく、形を保ったままぐにょぐにょとした空間を、一気に突き抜けていくのだった……。




