↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第九章 お菓子の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/109

第35話 頼もしき……世知辛いなぁ

 俺と看板は地面へ降り立ち、女神を待ち受けることにした。

 一時的に目を奪われた神――それは俺たちにとって、最大のチャンス。


 少し離れた場所で光が収束する……女神が訪れたのだ。

 光が人の形を模(も)して、次には凍りつくような笑みを生んだ。


「フフ、諦めたか……」


 この言葉に俺は両手を組んで、軽く首を傾げる。

「俺は思うんだよねぇ。たぶん、あんた、人間舐めすぎ」

「……何を言っている?」

「詰めが甘すぎるんだよ! あんたがやったことは俺たちを逃がさない止まり。それじゃあ、足らない。人の知恵以下だぜ、女神様よ!!」


「貴様ぁ! 神を愚弄する気か!」



――その通りだ――

――フッ、愚かそのものだな――



 神の前で線が交差(クロス)する。

 その線は神の頬に、うっすらと傷を生んだ。


「――なっ、これは!?」



 線の一つ――勇者は剣を片手に、こう発する。

「急に呼んだかと思えば、神と遊んでるとはね」


 もう一つの線――魔王はシックルに変異した魔導杖(まどうじょう)を手にして、発する。

「我らもまた、神に物申す必要がある。その前哨戦と思えばいい」


 俺は女神へビシッと指を突きつけた。

「神と戦えないなら、戦える相手を呼べばいい! 女神さんよ、道を塞ぐなら『草原からの道』も塞ぐべきだったな!」

「――ぐっ!」



 神は呻き声を一つ漏らした。その声に向かって、憐憫を表すメルが俺の隣に立つ。

「それは無理でしょう。自分の家の玄関のカギは掛けられても、公共の道は封鎖できません。この、空間を管理する猫の一族がいる限り、にゃ」



 メルはわざとらしく語尾に猫言葉をつけた……上品そうに見えて意外と挑発しちゃうタイプなのかな?


 メルは黒の三角帽子を深く被り、勇者と魔王にぺこりと頭を下げる。

「私の役目はこの世界の案内まで。申し訳ございませんが、戦闘には参加できません」

「構わないさ。ここは私と――」

「我で十分だ。さぁ、神という存在がいかほどのものか、見せてもらおうか!!」



 勇者と魔王が、剣と魔法を女神へ振るう。

 神は障壁を生んで回避しようとしたが、間に合わず、新たなかすり傷を生む。

「お、おのれ~、低次元存在の分際で、神に傷を負わせるとは……」



 生まれた傷からは血は流れず、代わりに光の粒子が漏れ出している。

 

 その姿を見た看板がため息交じりの声を漏らした……文字だけどね。

「はぁ、どうりであの二人が排除要因になるわけだよ」

「どゆこと、看板?」


「あの女神は創世神級の神。一つの世界を生み出すほどの神相手に、二人は傷を負わせてる。普通はあり得ないこと。それを行えるということは、二人が神の領域に踏み込んでいる証明だね」


「神の領域へ?」


 ここでメルが、さらに噛み砕いて説明してくれた。

「高次元存在に触れることはできない。これが世界の法則。この法則を破るためには技術・知識・技とありますが、お二人は力で法則を破ろうとしている、破っている。力だけならば、神に匹敵する存在というわけです」


「匹敵……ってことは、あの二人の世界の神様は、自分の脅威になるから、勇者と魔王を排除しようとしたわけだ」

「そういうことでしょう」

「そっか、そうなると……」


 女神と激しい戦いを繰り広げる二人を見つめる。

「二人は二人で、自分の神との交渉は難航しそうだな」



――――――――

 勇者が五つの剣線を同時に生み出す。

「これなら、どうかな?」

 女神は躱しきれず手傷を負う。

「ぐぅ、人の分際で!」


 空が黒く染まるほどの魔法弾を、魔王は生む。

 それが弾けると、ビリヤードのように散らばり、無軌道な魔弾の舞を見せる。

「フッ、神よ。これをどう防ぐ?」

「このようなもの――!」


 女神は吠えるが魔弾を避けきれず、何度も腹部を穿たれた。



「ぐふぅ! ――えええい、忌々しい、吹き飛べ!!」


 女神は全身から光の波動を生み出して、円周上に広げた。

 それにより周囲は跡形もなく吹き飛ぶが、勇者と魔王はその波動を魔力で受け流して平然としている。


「ふぅ~、なんてでたらめな力なんだ。かすっただけで消滅してしまうぞ」

「だが、単調すぎる。これでは我らにかすり傷一つ与えることもできまい」


「だけど、当たると死ぬからなぁ。ここはヒット&アウェイで相手の攻撃を避けつつ、傷をちまちま重ねるとするか?」

「それこそ単調だが、それしかあるまい。時間はかかるが、いずれは倒せるだろう」



「ふざけたことを抜かすなぁぁぁ! 低次元存在どもめぇぇ!!」



 めっちゃヤバ気な神が、二人の前だと子ども扱い。頼もしいやら怖いやら。

「よかった~、二人が仲間で……」


 と、ここでメルが、肉球同士をにゃふっと打つ。

「ああ、そう言えばリョウさん」

「ん、なになにメル?」

「はい、これ契約書。二人が助っ人に駆けつける代わりに、10%の支払いを2%にする契約書です」


「ぬぐ……俺は、頼もしい仲間を持てて、幸せだなぁ……」

 俺は暖かな仲間の思いを感じながら、涙をぬぐい、契約書にサイン。


 そして、本音を一言落とす。

「せちがれぇ」


 

 そうこうしているうちに勝敗が決しかけているようで、女神は全身の傷から光の粒子を外へ漏らし続けていた。

「おのれ~、おのれ~、なぜ、なぜだ?」

「その疑問が何を意味するか分からないけど、とどめを刺させてもらおうかな」

「さらばだ、神よ。よい演習となった」



――だが、その時、神は笑った――


「フッ」


 その笑いと同時に、負った傷が消え失せる。

「低次元存在にしては見事。だが、神殺しなど、夢のまた夢と知るがよい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。