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世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第九章 お菓子の世界

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第34話 ただそれだけの関係……のはず

――空


「はぁはぁ、死ぬかと思った」

「うん、あの攻撃はちょっとやばかった」

「攻撃のことじゃない、お前の速度のこと!」

「うるさいなぁ、シールドを張っているから内部は問題ないのに」



 俺は看板に尻を置き、柄(え)を握りしめて空を飛んでいる。なので、看板の文字は今、柄(え)の部分に浮かぶ方式で意思の疎通を図っていた。


「これからどうする、看板?」

「何とかこの世界から脱出する方法を見つけないと」

「その何とかの内容は?」

「考え中」


「そっかぁ。ああ、もう。なんでこんなことに? あの女神様は何がしたいの? 難しい話抜きで噛み砕いて」

「人間を見下していて、神に比類する成長を嫌っている。ぷらす、僕と君のことが嫌い」


「俺とお前のことが? なんで?」

「……僕と君が……神にとってイレギュラーな存在だから」

「うん?」


「神にとって理解不能な存在なんだよ、僕たちは。全知全能の神からすると、不都合な存在。だから、気に食わないって神もいるってことさ」

「俺たちが神にとって理解不能? それは?」



「……答えは自分で見つけて、これが僕ができる最大限のアドバイス。これでも役割から外れたあり得ないアドバイスなんだから!」

「看板、いまのは?」


 問いかけると、看板の柄(え)から熱が消えた気がした。

(どうして僕はいま、余計なことを? 彼は見る者。僕は見張る者。ただそれだけの関係のはずなのに……何かがおかしい?)


 看板の様子が変だ。もしかして、女神にビビってたり?

 俺は看板に声をかけようとした。

 だけど、看板の短い声にかき消される。

「看――」

「くるよ!」

「――へ?」



 突如、無数の光の球弾が空を覆うように炸裂した。

 シールド越しでも、耳の奥を叩くような破裂音が連続して、体に痺れを与える。

「ひいぃいぃぃ!」



「逃れられると思うな!」

 

 

 後方から女神が追いかけて、ひたすら光の弾を放ち続ける。

 それでも看板は、炸裂する衝撃と熱の合間を縫いながら高速で空を飛び続ける。

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」

「僕が君を死なせない!!」


 先ほどまで冷たく感じてた柄(え)が、一気に熱を帯びたように感じた。

(何故、僕はこうも熱く? もしや、これは僕の感情? ――違う、僕に与えられた役目は彼を守ること!? その思いが、そう錯覚させているだけだ!!)


「リョウ、しっかり捕まっててよ!」

「おう!!」



 俺はいつもと違う感情むき出しの看板の声に戸惑いを覚えつつも、奇妙な感情が心に灯(とも)ってた。

 それは……嬉しいという感情。

 でも、それ以上に、恐ろしい危機が訪れつつあった。



「看板!」

「どうしたの?」

「漏れそうなんだけど、だめ?」

「殺す!」


 さっきまで死なせないと言ってくれた騎士様から、容赦のない一言を頂きました。

「だけど、こう激しく動かれたら内臓が重力でふわっとなって、油断したら」

「我慢して!」

「我慢も限界がある。起死回生の一手はないの?」

「考え中」


「穴ぽこへの道をこじ開けられない?」

「こっち側からは完全に封鎖された!」

「じゃあ、その逆は問題ないんだな?」

「え?」



 ここで俺は、おもらしと戦いながら微笑んだ。

「もしそうなら、戦いようがある――看板、少しの間だけでいい! 神の目から逃(のが)れてくれ!!」

「それ、けっこう厳しめの要求! でも、やるよ!!」


 看板は後方に、キラキラとした紙片を生んだ。

 次の瞬間には最大速度で、一時、戦線を離脱した。


 背後に置き去りにした女神の視線が、俺の背中を焼き焦がさんばかりに突き刺さる。

 それは心そのものを握り潰しにかかるような、凶悪な重圧――。


「またもや、連邦の欺瞞道具……神の目を奪う魔導科学。忌々しい連中めが!!」

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