第25話 ろくでもない
――草原
目覚めた勇者と魔王に事情を説明。
ざっくりお伝えする。
『神様がお前ら邪魔だから死ねって。でも、それだとかわいそうなんで、俺の今いる世界に連れてきた』
すると二人は――
「なんだそれは? 邪魔だと!? 私は敬虔な信徒なんだぞ! 礼拝も喜捨も欠かしたことがないというのに!!」
「我らを創っておいて、何たる言い草だ!」
「わかりますわかります。神様ってひどいよねぇ~」
テケトーに相槌を打ちつつ、看板に小声で話しかける。
「もう力なくなっちゃったけど、俺がクソザコナメクジってバレたら八つ裂きにされるかな?」
「かもね。知らないよ僕は……」
「フフ」
「なに、今の笑い?」
「看板、一つ確認するけど、俺たち低次元の存在が尊い方に会おうとすると、善行ポイントが必要なんだよね?」
「そだよ」
「ふっふ~ん、よしよし。ぬふふふふ」
俺は自分の読みが当たって、自然と頬が崩れていく。
その様子を気味悪げに見つめる看板。
「どうしたの? 汚染が頭まで回った」
「回ってません。いいか、看板。俺は依頼通りに二人を排除した」
「うん、ひどい裏技だけど、一応完遂ってことでポイントは入ってるよ。5万ほど。赤字だね」
俺は人差し指を立てて、嫌味たらしく横に振る。
「甘いねぇ、看板くん。47万は先行投資だよ。デキるあちきは排除以外にも、その先を見て行動してるんだよ、チミィ」
「う・ざ・い、なもう……それで、先行投資ってなに?」
俺は振り返り、勇者と魔王にある提案をした。
「君たち、直接神に会ってモノ申したいだろ。そこでだ! 善行ポイントを集めてみないか!」
二人に善行ポイントの仕組みを説明する。
世界の悩みを解決すると善行ポイントが貰えて、百万貯まると神に会えると。
勇者と魔王はそれぞれ言葉を返す。
「なるほどね。では、ポイントを貯めていけば……」
「我らが神に会うことができるのだな?」
「そういうこと~。そうだよな、看板?」
「まぁ、自分たちの世界の神に会うために、ポイントを消費するって形だしね……」
「だそうです、二人とも。どうする?」
「どうするのなにも選択肢がないしね。直接会って、私たちの排除を取りやめるよう訴えるほかないよ」
「もしくは……我らが神を排除するか、だな……」
これに勇者は眉をしかめた。
「私は創造主の敬虔な信徒であるため、そこまで踏み込めないが……」
「ならば、消え去るか?」
魔王の問いに、勇者は肩をすくめた。
「それはご免被る」
「ふん、ならば一時休戦としよう」
「ああ、不本意だけどな。不本意と言えば……リョウと名乗っていたね。リョウ、私たちが稼いだ善行ポイントの10%を、君に納めるというのは少々強欲じゃないか?」
そう!
これこそが、俺の真の目的!
神が排除したがるくらい強い勇者と魔王を引き入れること!!
この二人なら、俺よりももっと効率的かつ安全に、たくさんのポイントを稼いでくれそうと踏んだのだ…………まぁ、47万も使っちゃったのは想定外だけど。
だけど、この二人ならリターンも期待できるだろ!
というわけで、俺は軽い口調で勇者へ答えを返す。
「なに言ってんだよ。俺は機会を与えたうえに、本来なら俺専用の穴ぽこを、君たちにいくつか譲る形になってんだよ。その分の使用料金は頂かないと、にっひっひっひ」
勇者は俺のいやらしい笑顔を前に、無言で軽く手を振って、これ以上言葉を重ねるのを諦めた。
魔王の方は看板へ向かって、何やら疑問を投げかけている。
「我らが使用しても問題ないのか?」
「規定がない。想定外の事態なので」
「そうか……つまり、少年は規則の穴をついたというところか」
「ククク、人より多く稼ぐ方法とは、法の抜け道を探すことよ。ククククク」
「ろ、ろくでもないな、この少年は……」
魔王もまた勇者と同じように、言葉もないと軽く肩をすくめた。
だが、すぐに気を取り直して、彼は勇者に声をかけている。
「では、手早くポイントとやらを稼いで神に抗議しに行くとしよう」
「フッ、まさかお前と組むことになるとはね。だけど、人と魔族の覇権争いがなくなったわけではないからな」
「承知している、ふふ」
仇敵だったはずの二人は肩を並べて、小さな笑みを浮かべる。
そんな二人へ、看板は必要事項を伝えた。
「君たち専用の案内人を急遽用意するため、派遣会社に問い合わせた。穴ぽこの先で合流するから、その人に従って」
「了解。私たちのためにありがとう」
「ああ、そうさせてもらおう」
穴ぽこへ向かう二人の背中を見送りつつ、俺は腕を組んでふむふむと頷く。
「やはり人間、使うよりも使う側にならないとなぁ」
「本当にろくでもない。この調子だと、弱いってバレたら斬り殺されるんじゃない?」
「そうならないように振舞うから心配無用。そもそも、いまさら俺を斬ったところで意味ないだろうしな、ふはははは! ん?」
穴ぽこに向かっていた勇者と魔王が、俺を手招きしている。
「何の用だろ? ちょっと行ってくる」
「斬られるかもね」
「斬られませ~ん、だ」
看板にベロを見せつけてから、二人の下へ向かう。




