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世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第六章 剣と魔法の世界

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第25話 ろくでもない

――草原

 

 目覚めた勇者と魔王に事情を説明。


 ざっくりお伝えする。


『神様がお前ら邪魔だから死ねって。でも、それだとかわいそうなんで、俺の今いる世界に連れてきた』


 すると二人は――


「なんだそれは? 邪魔だと!? 私は敬虔な信徒なんだぞ! 礼拝も喜捨も欠かしたことがないというのに!!」

「我らを創っておいて、何たる言い草だ!」



「わかりますわかります。神様ってひどいよねぇ~」 

 テケトーに相槌を打ちつつ、看板に小声で話しかける。


「もう力なくなっちゃったけど、俺がクソザコナメクジってバレたら八つ裂きにされるかな?」

「かもね。知らないよ僕は……」

「フフ」

「なに、今の笑い?」


「看板、一つ確認するけど、俺たち低次元の存在が尊い方に会おうとすると、善行ポイントが必要なんだよね?」

「そだよ」

「ふっふ~ん、よしよし。ぬふふふふ」



 俺は自分の読みが当たって、自然と頬が崩れていく。


 その様子を気味悪げに見つめる看板。

「どうしたの? 汚染が頭まで回った」

「回ってません。いいか、看板。俺は依頼通りに二人を排除した」

「うん、ひどい裏技だけど、一応完遂ってことでポイントは入ってるよ。5万ほど。赤字だね」


 俺は人差し指を立てて、嫌味たらしく横に振る。

「甘いねぇ、看板くん。47万は先行投資だよ。デキるあちきは排除以外にも、その先を見て行動してるんだよ、チミィ」

「う・ざ・い、なもう……それで、先行投資ってなに?」



 俺は振り返り、勇者と魔王にある提案をした。

「君たち、直接神に会ってモノ申したいだろ。そこでだ! 善行ポイントを集めてみないか!」




 二人に善行ポイントの仕組みを説明する。

 世界の悩みを解決すると善行ポイントが貰えて、百万貯まると神に会えると。

 勇者と魔王はそれぞれ言葉を返す。

「なるほどね。では、ポイントを貯めていけば……」

「我らが神に会うことができるのだな?」


「そういうこと~。そうだよな、看板?」

「まぁ、自分たちの世界の神に会うために、ポイントを消費するって形だしね……」

「だそうです、二人とも。どうする?」


「どうするのなにも選択肢がないしね。直接会って、私たちの排除を取りやめるよう訴えるほかないよ」

「もしくは……我らが神を排除するか、だな……」


 これに勇者は眉をしかめた。

「私は創造主の敬虔な信徒であるため、そこまで踏み込めないが……」

「ならば、消え去るか?」

 

 魔王の問いに、勇者は肩をすくめた。

「それはご免被る」

「ふん、ならば一時休戦としよう」

「ああ、不本意だけどな。不本意と言えば……リョウと名乗っていたね。リョウ、私たちが稼いだ善行ポイントの10%を、君に納めるというのは少々強欲じゃないか?」



 そう!

 これこそが、俺の真の目的!

 神が排除したがるくらい強い勇者と魔王を引き入れること!!

 この二人なら、俺よりももっと効率的かつ安全に、たくさんのポイントを稼いでくれそうと踏んだのだ…………まぁ、47万も使っちゃったのは想定外だけど。



 だけど、この二人ならリターンも期待できるだろ!

 というわけで、俺は軽い口調で勇者へ答えを返す。


「なに言ってんだよ。俺は機会を与えたうえに、本来なら俺専用の穴ぽこを、君たちにいくつか譲る形になってんだよ。その分の使用料金は頂かないと、にっひっひっひ」

 

 勇者は俺のいやらしい笑顔を前に、無言で軽く手を振って、これ以上言葉を重ねるのを諦めた。

 魔王の方は看板へ向かって、何やら疑問を投げかけている。


「我らが使用しても問題ないのか?」

「規定がない。想定外の事態なので」

「そうか……つまり、少年は規則の穴をついたというところか」


「ククク、人より多く稼ぐ方法とは、法の抜け道を探すことよ。ククククク」

「ろ、ろくでもないな、この少年は……」


 魔王もまた勇者と同じように、言葉もないと軽く肩をすくめた。


 だが、すぐに気を取り直して、彼は勇者に声をかけている。

「では、手早くポイントとやらを稼いで神に抗議しに行くとしよう」

「フッ、まさかお前と組むことになるとはね。だけど、人と魔族の覇権争いがなくなったわけではないからな」

「承知している、ふふ」



 仇敵だったはずの二人は肩を並べて、小さな笑みを浮かべる。

 そんな二人へ、看板は必要事項を伝えた。


「君たち専用の案内人を急遽用意するため、派遣会社に問い合わせた。穴ぽこの先で合流するから、その人に従って」

「了解。私たちのためにありがとう」

「ああ、そうさせてもらおう」



 穴ぽこへ向かう二人の背中を見送りつつ、俺は腕を組んでふむふむと頷く。

「やはり人間、使うよりも使う側にならないとなぁ」

「本当にろくでもない。この調子だと、弱いってバレたら斬り殺されるんじゃない?」

「そうならないように振舞うから心配無用。そもそも、いまさら俺を斬ったところで意味ないだろうしな、ふはははは! ん?」


 穴ぽこに向かっていた勇者と魔王が、俺を手招きしている。

「何の用だろ? ちょっと行ってくる」

「斬られるかもね」

「斬られませ~ん、だ」


 看板にベロを見せつけてから、二人の下へ向かう。

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