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世界が滅びたので看板を片手に旅に出ます  作者: 雪野湯
第六章 剣と魔法の世界

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第23話 隠しパラメータ

 俺は数字を指さす。


「これ、何の数字なの?」

「君の世界が復元された際に、どれだけかけ離れたものになるのかという数字。現状でも、五分の一以上が異なる世界観に書き換えられているのに……」


「は!? 何だそれ、初耳だぞ!!」


「隠しパラメータなので」

「そんなゲーム要素いらねぇよ。報連相! しっかり全部伝えとけっての!」

「だって、聞かれなかったし」


「知らねぇことを聞けるかよ! そもそも、その汚染っては何なんだよ?」

「君の旅の経験や思考が、そのまま反映されているんだ。言い換えれば君は――この宇宙の21%を否定していることになるね」


「否定? そんなことした覚えはないぞ。だけど……」


 他者に運命を委ねるナス畑の理不尽さ。

 身勝手な神の影の世界。

 善行を奪うことで成立するギャンブルの町。

 教えがなければ自己正義も獲得できない世界。

 そして、神が邪魔だからと判断しただけで、排除される勇者と魔王。



 他者に依存し、神に翻弄され、自分の意思で歩こうとしない世界……そんな世界は少し、嫌いかも。


――ドカーンッ!


「うわっ」

 

 またもや、近くで爆発が起きた。考え事をしている場合じゃないようだ。


 今はこの状況を片付けるのが先!



 俺は身を伏せつつ、衝撃波をばらまき、世界の形を崩していく勇者と魔王の姿を睨みつける。

 

「俺の考えを実行するためには、二人を圧倒しないといけない。だけど、汚染される。でも、汚染除去付きで47万……47万……あああああああ、くそぅぅ!!」


 ただ、二人を殺すだけなら、もっとポイントの消費は少なくて済むかもしれない。

 だけど――俺は誰かを殺してまでポイントを稼ぎたくない!!



「よし、わかった。47万ポイント消費する!!」

「まいどあり~、残りは30520ポイントで~す」


 看板がポイント消費の宣言をすると、俺の体の内部に巨大な力が宿るのを感じた。

 不可思議な文字で形成された数式が瞳に浮かび、脳に刻み込まれていく。

「おおおお、なんだ、これ? 思考が際限なく加速していく。体の中に太陽が生まれたように、熱い……」

「魔法型惑星ではオーソドックスな魔法の力。マナだよ」

「マナ……ゲームでよく聞くな」


 体の奥底に宿る、マナの力。

 俺は戦いを続けている勇者と魔王へ体を向けた。

「強いな、二人とも。でも、さっきまでの恐怖心が嘘のように消えてる。俺の方が強い。それがわかる。よし!」


 俺は両手を打って、前へ一歩踏み出す。

 だが、ふとした疑問が足を掴み、看板へこう尋ねた。


「そういやさ、なんで隠しパラメータの存在を教えたんだ? 隠すってことは、お前になんか理由があったんだろ?」



 この問いかけに看板は、猫の目をぱちくりと開け閉めを繰り返したと思ったら、突然ため息を一つ落とす。


「はぁ~、隠しって言ってるけど、聞かれたら答える内容だからね。君は無頓着だから、僕が口に出すまで気づかなかったけど。どんだけ愚鈍なの?」

「イラっするなぁ、こいつは! もういいや、お前はここで待ってろ! 俺はあの二人を止めてくる!!」

「行ってら~」



 俺は苛立ちを足の裏に込めて、土を踏み鳴らしながら、勇者と魔王のもとへ向かった。




――看板



 看板は一つ残り、自分の言動に疑問を抱いていた。

(なんで伝えたんだろう? それに……科学の力と神の力の情報まで渡しちゃったし。バグ?)


 看板は猫の目を閉じる。

(内部スキャン開始……終了。エラーなし。壊れたファイルなし。全てが正常……ん、あれ? 新たに記憶領域が誕生? 内容は~~~~『無』に関する情報?)



 目を開き、空へ視線を向ける。

「干渉を受けた? ……主(あるじ)に匹敵する何者かが僕に? 匹敵? あり得ない……いや、少なからず存在する。だけど、一体誰が、何のために……」


 看板はさらに思考を深く沈めようとしたが、そこでぴたりと踏み込むのをやめた。

「僕の役目は彼を守り、見守り、誘導すること。どうでもいいや」


――と、投げやりな言葉を描く。

 火花が爆ぜ消えるよりも小さな静寂の中で、木目から文字が消えた。


 

 新たに生まれた情報によって、ゆっくりと侵食され始めていたことに……看板は気づかない。

 いやこれは、看板が看板となるための、歩むべき道の加速――意図しない、心への負担……。

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