表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が滅びたので、看板を片手に旅に出ます~世界を救う相棒は、口の悪い一枚の看板でした~   作者: 雪野湯
第三章 享楽の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/15

第12話 薄氷のいかさまと深氷の未練

――カード台



 良心を担保に……俺は最大値1000Pを借りた。

 そう、最大値。


 つまり、失えば、俺は良心を奪われ、悪に染まり、この悪だけしかない世界の住人の仲間入り。

 借金を返さない限り、奴隷として過ごすことになる。


――なぜ、そんな無茶をしたか?

 

 勝てる案件と言った看板のことを信じたから――いや、違う!

 ギャンブルってのは勝てるように仕込むもの、仕込まれているもの。



 だから俺は、席に着く……。



 真ん中より端にずれた場所に座り、その隣にはおじさん。おじさんの後ろには看板を置いた。

 理由は、後ろからの覗き見を防ぐため。

 俺はこう述べる。


「調子よく勝ってたのに急に負け込み始めた。だから、何かイカサマをされたに違いない」と……。



 これに象のおじさんは何でか心外そうな声を漏らした……まあ、ここで働いているから悪く言われるのは嫌だったんだろう。

 


 これで準備は万端。ディーラーとの一騎打ち。

 負ければ全回収。良心を奪われる。

 逆に勝てば、倍づけ。借りた利子を支払っても900Pは残る。


 ディーラーとのポーカー勝負。

 カードは配られ、俺は三枚をチェンジ。

 それらを手に取り、膝に置いて整え、天を仰ぎ、祈る。

 そして、絵札を確認して、台に戻し、並べ直した。



 ディーラーが手役を開示……3と5の組み合わせ、フルハウス!(3が三枚・5が二枚の組み合わせ)



 対する俺は……

 ゆっくりと五枚のカードをめくる。


「……ロイヤルストレートフラッシュ」

 A・K・Q・J・10の組み合わせで生まれる最強の役。


 これにはディーラーと会場の観客が歓声を上げた。

 そんな中で、ひときわ驚いた様子を見せたのは、象のおじさんと看板だった。


「なっ! こいつはぁ」

「……!」(予測された結末と違う! そうか、彼自身で乗り越えたのか!)



 俺はコイン化していた善行ポイントのうち、利子の100Pを受付に払って、残りを看板へ預けた。

 去り際に、おじさんが声をかけてくる。

「やったな、坊主。1000Pを借りた日には、何を考えてんのかと思ったが……」

「まぁ、なんとかね」



「そうだ、いいものを見せてもらった礼と言っちゃあなんだが、こいつをやるよ」

「これは……?」


 手渡されたのは、料理道具一式。

「生野菜ばっかりで苦労してるって聞いたからな。その道具類は俺が使ってたお古だが、やるよ」

「いいの?」


「ああ、貰ってくれ。そうそう、この道具類にはちょっとした機能があってな、使い手が食材と思えば、どんなものも食材にしちまう宇宙象印の料理道具なんだぜ 」


「どんなものも食材と思えば……? ん、食材と思わないものは普通料理しないんじゃ?」

「がははは、確かにな」



 奇妙なことを言うおじさんだ。

 ともかく、料理道具一式はありがたいので遠慮なくもらっておくとしよう。

 俺はおじさんに挨拶を済まして、この世界から去った。



――象のおじさん


 彼の背後から、一つ目のバンダナをした女性の受付が話しかけてくる。

「いかさまで勝たせた目的なんですか?」

「してねぇよ」

「え?」

「いや、したつもりだが、あいつはそれを上回りやがった」


 そう言って、彼は指をパチリと弾くと、カードを生み出した。

「Aのフォーカード。こいつであの坊主の勝ちだ」

「ですが、結果はその役を上回る、ロイヤルストレートフラッシュ。これは一体?」


 象は鼻を高く掲げて笑う。

「そいつはなぁ、あの坊主がいかさまをしたってことさ! オーナーの俺を壁役に使うなんざぁ、大した悪党だぜ、がははは!」



 ひとしきり笑うと、彼は少年が消えた空間を見据えた。

「勝ちをくれてやる代わりに、道具類を押し付け、世界を巡る間に試させるつもりだったが……ま、渡しておけば、どこかで使うかもしれねぇから、良しとするか」


「何がしたかったのですか、オーナー?」


「あの道具はな、使い手の才を吸収して鋭さを増す。そう、あれは俺の才能が詰まった道具たちだ。俺の才能が本物なら、鋭さは天井知らず。使い手が食材と思えば、何でも食材にしちまうはずなんだ。お前さんがビビってる、あの看板すらもな」


「それは……不可能かと。あれは私たちには届き得ない存在」


「本当に届かないかどうか試してみてぇと思ってな。弟は知り合いに道具を渡して、そいつは××××を料理しちまったそうだぜ」

「――――っ!? それは事実ですか?」


「お前さんの瞳は、俺を嘘と見ているか?」

「……いえ」

 

 巨大な象は、同じく巨大な手のひらを悲しげに見つめる。

「ま、未練だな……こんなところにいるのによ。なんにせよ、結果が楽しみだぜ」



――草原


 戻ってきた。

 料理一式を地面に置き、看板を地面に突き刺して、ほっと一息つく。

 すると、看板の文字が歪み、大量の『?』マークに囲まれたフレームに文字を浮かべた。


「何をしたの?」

「いかさまだよ」


「どんな?」

「米を潰して接着剤代わりにしただけ」


「はい?」

「まず、おじさんにはわざとぶつかって、台に当たり、ばらけたカードをくすねる」

「そんなことを?」


「で、あらかじめカードを台の下にくっつけておいて、おじさんとお前を壁にして、後ろから覗き見られないようにした。あとは、任意のカードを剥がして役をそろえるだけ」

「……よくもまぁ、あの短時間でそんなことを」


「ほら、学校でのカードゲームの話したじゃん。ジュース一本はなんだかんだで、きついからねぇ。負けを避けるために、磨いた才能ですよ、フフフ」

「なるほど、このろくでもなさが、『(けん)』や『種銭(たねせん)』の知識に繋がってるんだね……」


「ふふ~ん、そのろくでもないおかげで、この通り生還! やったぜ」


「やったのかなぁ? 善行からは程遠い」

「お前が言うな!」

「そもそもとして、ディーラーに君が持つ手札と、同じ手札が入ってたらどうするつもりだったの?」


「……え?」


「うわ、考えてなかったんだ……」

「あ、あははは、結果オーライ。まさにギャンブルってことで!」


「はぁ、こっちはおじさんの挙動から計算して、勝ち確を算出してあげたのに」

「はい、なにを言ってるの?」

「空っぽな君の脳みそに呆れたの。一歩間違えたら、抜け出せなかったんだからね!」

「そ、それはもういいだろ! さぁさぁ、貰った道具類を片付けよっと。看板はここでステイな」


 俺はそそくさと看板から離れて、料理道具一式をベッドそばへ運んでいく。




――看板

 

 裏側にはこう表示される。

 汚染度12%。

 

(参考となったモノの魅力は狂気だったけど……何かずれてる? なんだろう? 興味深い……いや――)

 

 看板はそこで思考を切り、自分に湧いた感情を否定する。

(僕は彼に、役目を果たさせるためにいる。彼に興味を抱く必要はないんだ……ないはずなんだ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ