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世界が滅びたので、看板を片手に旅に出ます~世界を救う相棒は、口の悪い一枚の看板でした~   作者: 雪野湯
第三章 享楽の世界

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第11話 細工は流々

 象のおじさんに事情を説明。

 おじさんは鼻を悩ましげに動かして、苦笑を交えた声を生む。


「なるほどな……それで、善行ポイントを全部擦っちまったわけか」

「はい。で、途方に暮れてます」

「そうか。だったらよ、借りればいいじゃねぇか?」

「へ?」


 おじさんは受付へ長い鼻を振った。

「受付に行けば、お前さんの良心を担保に、善行ポイントを借りられる。そいつで一勝負すればいい」

「俺の、良心?」


「ああ、そうだぜ。善行ポイントってのは所詮、他人を助けて積んだ善だ。だが、良心ってのはそいつに備わっている善の塊。ここはそういうのを欲しがる場所だからな」


「でも、それで負けちゃったら……この世界の住人になるんでしょ?」

「基本そうだが、(がく)によってはすぐに出られる。だから、ちょい借りをして駄目だったなら、トイレ掃除をして、帰ればいいってくらいなもんさ」

「トイレ掃除か……それくらいなら」



 このままゼロで帰っても食事に困る。

 それに、新たな世界に訪れて稼ごうとしても、ポイントの助けがないとどうにもならない場合は、本当にどうしようもなくなる。



 だけど、担保は俺の良心――すなわち、心!

 

(どうする……?)


 ちらりと、おじさんを覗き見る。

 そのおじさんはというと、何でか看板を見つめていた。

(坊主はこいつを警戒していると見える。こいつは俺たちよりも次元が高い存在。弟の話だと……可能だったと聞いたが、俺の愛用品が実際そうできるか試してみてぇ)


 次におじさんは、自分の手を見たかと思うと、俺をじっと見る。

(俺だって、弟に負けてねぇはずだ。利用させてもらうぜ、坊主)



 無言のまなざしに混ざる、なんとも粘っこい空気が流れる空間。

 俺は居心地が悪くなり、おじさんから目を逸らして看板に尋ねてみた。

「どう思う? この提案」

「……君の判断に任せる」

「判断できないから相談したんだけどな――えっ?」



 看板の端に、小さく文字が生まれる。

(勝てる案件。しかも勝率100%)


 俺はその文字を意識しないように、悩むふりを見せつつ目を逸らした。

(信じていいのか、こいつを? 何をもって勝てると言っているんだ? しかも100%って、逆に胡散臭い)


 俺は口端に残った米粒を拭う。

 そこで、過去の記憶が微かによぎる。

(米粒か、学校のお昼時間を思い出すな……どのみち、ゼロだと詰む。どうせ詰んでるなら、勝負に出てみるか――だが、勝てる土台は自分で作るべき!!)



 米粒を指先で磨り潰して、おじさんへ向き直った。


「わかった、おじさん。受付にお願いしてくるよ」



 俺は立ち上がる。その際、よろけて象のおじさんにぶつかってしまった。

 しかしおじさんは、その巨体のため微動だにせず。

 逆に俺が弾き飛ばされる形で、近くのカードゲーム台に吹き飛ばされてしまった。



「がっ! いった!!」

「おいおい、大丈夫か、坊主?」

「あいててて、何とか。でも」

 

 ギャンブル中だったのにカードはバラバラ。客は俺を睨みつけて、今にも怒鳴りださんばかりの表情で顔を真っ赤にしていた。

 そこに、象のおじさんが間に入る。

 その途端、なぜか客は青ざめ、気にするなと言い残してそそくさと去っていった。


「なんか、さっきの人、おじさんにビビっていたような?」

「がははは、俺の体がでかいからだろ」


「たしかに大きいよね。そうだ、あのさおじさん。その体のでかさを借りたいんだけど、いい?」

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