第42話 私はいいんだけど!!
陽代乃が悶々としている前で、ツグミは相変わらず鷹也の隣に座りニコニコ。
いたたまれなくなる鷹也は、とにかく意思表示を試みる。
「あの、グミさん? ちょっと俺の話ちゃんと聞いて欲しいんだけど!」
「同学年なんだし、せめて『グミちゃん』じゃなきゃ返事しないよ~?」
「ぐっ……グミちゃん! 聞いて!」
(むぎゅう……私がまだ『ひよの先輩』なのに! まぁ、呼び捨てとかされたらヤバいけど……)
嫉妬のメラメラをグッと抑え、陽代乃はなんとか笑みを作る。
「お店でも言ったけど、俺、好きな人いるから! 男女なんだし、友達以上っぽい行為は控えてもらって……」
「たかっちの好きな人って、この学校にいるの?」
「そ……そうだけど?」
「それは……ぴよ子ちゃんじゃないんだよね?」
「えっ?」
ツグミの表情は決して鎌をかけるようなものではなく、ただの確認らしかった。
が、鷹也は一瞬、陽代乃の顔を確認。
その表情は――
『私はいいけど、がおー氏が何て言うかな!! 私はいいんだけど!!』
と訴えていた。
「ち、違うよ? ずっと動画見てたし、ファンではあるけど……そんな現実的な『好き』になんて……なるわけないよ」
陽代乃、『仕方ない』と自分に言い聞かせながらも、心で号泣。
「だよね~? あーしも、同じ部活にズミシュンがいたら現実的な『好き』にならなそう~!」
(なぜ、ここで『ズミシュン』? ファンなのか? うーん……なんかヘンなところで縁があるなぁ)
我慢できず、陽代乃は意味のない注釈を差し込む。
「わ、私はアイドルじゃないからさ! 別に『彼氏いる』とか言ってもいいんだけどね? 一応『肯定も否定もしない』ってスタンスでやってるんだ」
「あ~、なんかミステリアスで話題性になりそうだもんね? あーしのダチっ子は……『ぴよ子はがおー氏と絶対付き合ってる』って言ってたっけ。確かにお似合いだと思うけど~?」
ツグミは透明なマイクを向けるように、陽代乃へ振ってみる。
「うんうん……そこは、ご想像におまかせします!」
「なるほど~? ま、あーしは、がおー氏よりたかっちの方がカッコいいと思うけど~」
(私の方が! そう思ってますからぁ~~~ッ!!)
感情が漏れないよう必死に堪えながら、陽代乃はただただ表面的アルカイックスマイル。
もう、なんとなく陽代乃の感情を想像できるようになった鷹也は『ありがたい』と思いつつ、心の中でヒンヤリとした冷気を感じる。
「ひよの先輩には……配信者のお手本としても、こうして仲良くさせてもらってるだけでありがたいですからね。あはは……」
「うんうん、私が教えられることなら教えるよ。って言っても、戦略的な外側のことは、がおー氏まかせなんだけどね」
どこか不自然にはなってしまったが、とにかく『誤魔化せたっぽい?』とふたり笑い合う。
それを見ていたツグミは理由の不明な焦燥感に駆られ、とにかく何か行動を起こすべきとスイッチオンする。
「たかっち、配信のやり方教えて? あーしもやってみたい!」
「へ? い、いや、配信なんて教えることないし、自分のやりたいこと発信するだけで……」
「え~? 何もわからない新入部員が入ってきたら、興味を深めるように優しく導くのが部活動ってもんじゃないの~?」
「ぐ…………わかった、教えるよ。教えるけど……ほんとに大したことないよ?」
「わ~い! ありがとうございます! やっぱ、この道に関してはかなりの先輩だもんね。お願いします、パイセン☆」
脳内、ミニひよの会議は大乱闘状態。
陽代乃は何も思いつかないが、無理やり言葉を絞り出す。
「な、なんで私に訊かないの? 自分で言うのもアレだけど100万フォロワー超えだし、おんなじ女子だし!」
「あ~……そりゃ、あーしも【ぴよチャン】好きだから訊いてみたいことはあるけど、ぴよ子ちゃん忙しいし!」
「そ、そうかもだけど、私だって部員なんだから、ちょっとくらい時間作るよ!」
「あーし、Vtuberにも興味あるんで~。それにぴよ子ちゃん、裏方の方はがおー氏まかせなんでしょ?」
「うっ……そ、それはそうだけど……」
のんびりとした口調ながら理路整然と返され、陽代乃は何も言えなくなる。
「たかっち、今度こそLIME交換しましょ?」
「あ、え、えっと……」
「『好きな子いるから』でそうなるのはわかるけど、今、彼女いるわけじゃないんなら、LIMEくらいいいよね? 同じ部活の仲間だし!」
「う……うん、そうだよね」
断る理由も全方位封じられ、仕方なく連絡先を共有する。
それを目の前に陽代乃は――
(やっぱこれ、マジ破局の危機じゃない!? まだ始まったばっかりなんですけど! なんでこんな状況になっても隠さなきゃいけないのか、意味わかんなくなってきたよ!)
「よ~し、オッケ! じゃ、また放課後……」
「ちょ、ちょ、ちょ! 私の連絡先は? いいの?」
「ぴよ子ちゃん有名人だし、そういうの気軽にしない方がいいんじゃない? あーし、業界人になるならキッチリしなきゃって思ったんで!」
(なんで、そこマジメなんだよ~! それじゃ動向わかんなくて困るってば!)
「いや、同じ部活じゃない! 有名だからって、そんな線引かれるのはヤだなぁ!」
「そうですか? んじゃ~、お願いしま~す☆」
なんとか連絡先を交換し、陽代乃はドッと疲れたことを悟られないよう力なく微笑む。
「これからは同じ部員として、よろしくね」
「よろしくお願いしま~す☆ じゃ、昼休みも終わるし、まずは放課後に詳しくってことで……」
「う……私、今日はテニス部出るって約束してるんだよね」
「そうなんですか? 芸能活動もあるのに、掛け持ちなんて大変すぎですね~。んじゃ、たかっち、放課後はふたりで……」
『それだけは阻止!』
何も思いつかないが、とにかく陽代乃はとにかく口を開いた。
「たっ……鷹也くんも今日は何か用事あるんじゃない!?」
「えっ? えーと……あ、千鶴が何か『付き合え』って言ってたかも……」
慌ててスマホを確認するが、そんな連絡は入っていない。
「え~、普段から兄妹でそんな仲いいの? ウチなんてケンカばっかだよ~、弟なんだけど」
「いや、仲いいってわけじゃないんだけどね。あはは……」
「じゃ、今日は部活あきらめて……ちづるっちと3人で話しますか!」
「えっ」
「えっ」
フニャひよ、なんとか毎週1回、木曜更新にできればいいかな……
という感じになりました。
やっぱり『エルフ王は唯一むに!』の方を頑張らなきゃなので、
平行でやるのは(しかも反応もよくないようなら)
週一でもなかなかしんどいですね……。
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