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バズり女王なのに俺の声にだけフニャるひよの先輩 (旧: スーパー美人インフルエンサーなのに、冴えない俺の声にだけフニャるひよの先輩)  作者: 茉森 晶


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第43話 そこに気づいたか



     *          *



「……なんで、こんなことになってんのさ?」



 放課後、羽広学園からひと駅離れた駅前のwac(ワックドナルド)に喚び出された千鶴(元々、約束があったテイになっているが)。


 ツグミがトイレに行っていたタイミングだったので、とりあえず兄の隣の席に陣取る。



「俺だってよくわからんけど……学校で捕捉されちゃったんだよ」


「おにーと陽代乃ちゃん、それぞれから説明来たけど、いまだに『なんだかなー』だわ」



 陽代乃からのLIMEを再確認しながら、めんどくさそうに続ける。



「とにかく、陽代乃ちゃんと付き合ってるのバレないようにしつつ、おにーへの興味を失わせろってことね」


「そういうこと、かな。多分、今だけの熱だと思うんだけど……」


「あ、ちづるっち~! おひさ~!」



 そこに戻ってきたツグミ、千鶴を見つけ、さも当たり前のようにハイタッチ用の手を差し出す。


 千鶴は仕方なく手を合わせるが、相手のペースにならないよう、いつものローテンション顔でポテトを1本口に入れた。



「ごめんね~、お邪魔しちゃって! いや、ほんと仲いいんだね? 放課後も兄妹で遊んでるなんて」


「別に……仲いいわけじゃないですけど。普通でしょ」



 千鶴は『また兄妹の関係を揶揄されるか』と思いつつ、『この女には嫌われた方がいいんだし、都合いいか』とも考える。


 が、ツグミは食べかけのバーガーをモリモリ食べながら、強く頷いていた。



「たかっちもそう言うけど、普通じゃなくて『いいこと』だと思う! あーしんち、今朝もケンカして、弟に必殺技かけてたし~」



 さすがに気になって、鷹也はそこに触れてしまう。



「必殺技って……どんな?」


「え? え~と……ドラゴンスリーパーとかパイルドライバーとか……」



(いや、プロレス技か! ワザ名言われてもパッとイメージできないけど、それ、姉弟でやっていい()なのか?)



「あっ、ちゃんとベッドの上でだし、ダメージ少ない感じにしてるからね? 昔っからの姉弟のノリで~」



 フォローのつもりなのだろうが、気になるところはそこではない。



(男女の感覚が一般と違うのはなんとなくわかるけど……弟くん、性癖ゆがんでないかな)



「格ゲーのコスプレとかもやってて、そういうワザの動画とか、ちょっとウケたりするから~……って、あーしの話はいいのいいの! ちづるっち達は普段どうしてんの?」


「どうって……カラオケとかゲーセンとか、どーでもいーことしかしてないっすけど」


「い~じゃん! あーしのことは気にせず、やりたいことやってね?」



(なら、最初から混ざんなってーの)



 いまだ得体の知れない陽キャにあまり関わりたくないようで、千鶴は目を合わせずスマホを弄る。


 ツグミはしばらく千鶴の顔を見つめていたが、あらためて鷹也の方へ向き直った。



「そういえば……たかっちがアレしてること、ちづるっちは知ってるの?」


「アレ? な、何?」



 気を遣ってぼかしているのが、まるでいかがわしいことのようで一瞬、時が止まる。



「え~と……なんて言うの? 部活に関するアレっていうか」


「ああ、Vtuberのこと? それは、うん」


「そっか、よかった! その話をしたくて、無理言って来ちゃったんだし~」



(グミ……いや、若王子さん……割とちゃんとマジメに興味持ってたんだ? ただの口実かと……)



 ――ポコン



 そんな中、千鶴のスマホにLIMEの着信音。


 テニス部の合間に打った陽代乃からのチャットだった。



『ターゲット【グミ】の行動と、それを受ける鷹也くんの反応を報告されたし!』



 必死さが滲み出る1行に、千鶴は呆れるように溜息をつく。



『まだ何もないよ。部活に集中しなさい』


『過度な接触あらば、なんとか邪魔するべし! 『私のおにーに触んないで!』とか何とか言って!』


『え、イヤですけど』



 そんなやりとりがポコポコ行われているうちに、ツグミはあらためて鷹也に問いかける。



「Vtuberって、どうやって始めるの? スマホでできる感じ?」


「あー、そうだなぁ……できなくはないけど。でも、2Dでもアバターちゃんとやろうと思うと、それなりのPCが欲しいかな」


「そうなっちゃうか~。ウチ、親のお下がりがあるけど、だいぶ古い感じだしなぁ」


「どういうのやりたいかにもよるけど、ある程度のグラフィックボードは欲しいね。あとはマイクとカメラと……」



 ツグミが熱心に聞いているのを感じ、鷹也は少しイイ気分になってしまっていた。



(今まで誰にも言えずにやってきたのに、興味深く聞いてくれる後輩ができた感じ……もしかして、部活の醍醐味ってこういうのかな?)



「う~ん、やっぱ色々用意しなきゃいけないもの、ある感じだね~。また今度、買い物付き合って欲しいな?」


「あ、そ、そう……いててッ!!」



 うっかり買い物の約束を了承しそうになる鷹也の尻肉を、千鶴がつねり上げる。



「お、おすすめの機材は教えられるし……ネットで全部買えるよ。あはは……」


「まぁ、そっか~。あと重要なのは、どういうことやりたい感じか……だよねぇ」


「そうだね、どんなアバターにどういうこと言わせたいか……あ、そうそう! Vで一番気をつけることといえば、顔バレだな。カメラはシャッター付きのやつが……」



(あれ……そういえば、この子はなんで【Vtuber】なんだ?)



「よく考えたら、若王子さん……」


「グミ! ね?」


「グ、グミちゃんは……顔出しでやればいいんじゃないの? 『ギャルがコスプレ』ってコンセプトも良さそうだし」



 根本的な疑問に辿り着き、本気でそう思って鷹也は問うた。


 ツグミは『そこに気づいたか』という困り笑顔で、ウェービーな髪を指でクルクルと弄る。



「あ~……コスプレは好きだけど、そんな大勢の人に見せれるビジュじゃないから~」


「そうなんだ? コスプレする時点で、ある程度自分に自信あると思うけど。俺なんて……」


「いやいや~、たかっちが顔出しでやってたら、すごいことになってたよ? まぁ、あーしはまだ、たかっちの今のチャンネルも見てないんだけど~」



(相変わらず、俺がビジュいい前提で……ありがたいけど、話を進めにくいな!)



「別に……陽代乃ちゃんみたいなビジュじゃなくても顔出しすればいーじゃん」



 スマホ画面を見たまま、千鶴がボソッと呟いた。



「コスプレする時点で、見られたい欲が強いのは確かなんだし。ネガティブ反応を見るのがイヤなだけっしょ」



(ぬう、その通りかもだけど……よく目の前の人にハッキリ言えるもんだ。ほんとに俺の妹か?)



 なかなかの強い言葉に、ツグミは俯いた。


 が、すぐに顔を上げ、テーブルに乗り出すと千鶴の手をギュッと掴む。



「ちづるっち! あーしと一緒にチャンネルやって!?」


「…………は?」


(2026/06/04記)

突然ですが、この43話で、更新しばらくお休みします。

全然キリがいいタイミングでもないですが、すみません。


メインで書いている

『エルフ王は唯一むに!』

~隠居して趣味で刀作りにハマったら、僕、いつのまにか創剣神と呼ばれてた?~

の方に集中するため……というのと、

夏コミに関するスケジュールが理由になります。


元々、趣味全開で短編として書いていたこの『フニャひよ』、

キャラクターへの愛着が膨らみ、自己満足で続けておりましたが、

ランキングも下がり、今は本当に好きでいてくれる少数精鋭の方が

応援のブックマーク&★評価をつけてくれてます。

ありがとうございます。


ですが、長期間お休みしてしまうと、

また来てもらうのは、とても難しいことだと思います。

それでも、もし再開する時が来たら、

また鷹也&陽代乃たちキャラクターを楽しんでもらえたら嬉しいです。


あっ、もちろん『エルフ王』の方も、できたら応援よろしくお願いします……!

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