表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

第十三話・新しい土地

お待たせしました。十三話が完成したので公開します。

2009年9月10日

太山寺



 洋介達が、清二の実家である太山寺町へ来て数日が経過した。

 この時点で、100戸350人が生活している太山寺町は今日も平穏な空気が流れている。

 身寄りの無かった高志、金子の二人は、清二宅から差ほど遠くない空き家に身を置いていた。


 この日、清二は高志と金子の様子を見に彼らの新居へと赴いた。

 清二にとっても、この小さな町にとっても、若い彼らは貴重な人材なのだ。

 しかし、清二には気掛かりな点も有った。

 半ば強制的に連れてこられた彼らは果たして太山寺に馴染む事が出きるのだろうか?

 本州に残して来た家族は心配では無いのか?


 そんな心配を抱きつつ、清二は二人の住んでいる旧山田家の玄関をノックした。

 清二がノックをしてから暫くして、昔ながらの引き戸の向こうから「はーい、いま出ます」と声がした。

 慣れない引き戸の鍵をガチャガチャとまわして金子が顔を出した。


「新居の具合はどうだい?」と清二。

「ええ、いい感じです。リビングは広いし」

「入ってもいいかい?」

「ええ、勿論ですよ」

 田舎の家特有の、広い玄関に靴を脱ぎ、清二はスリッパに履き替えた。

 清二をリビングに案内する金子。


 清二がリビングに入ると、高志が椅子に座ってテレビをみながらお茶をすすっていた。

 力士の絵柄が書かれている湯呑みだ。 中身は香りからして玄米茶だと清二は感じた。


「おはようございます」清二に気がつき、挨拶をする高志。

「どうやら、気に入ってくれたようだね」

「自分達には、もったいないですよ。こんな広い家」

 どうやら、心配した程では無かったようなのでひと安心する清二。

「玄関だけで、俺の家より広いですよ」

「そうそう『田舎に泊まろう』に、出てきそうな家ですね」と金子。

「そうか、そうか。良かったよ気に入ってくれて。実は、今日は街の方へ行くから、二人も一緒にどうかな? と思って来たんだけどな」

「街へ?」

 お茶を呑みながら不思議そうな顔をする高志。

「あれ? 温泉に行きたいんじゃなかったっけ」

 温泉と言う言葉を聞いて目の色を変える金子。

「そうです、そうです! たしか……道後温泉でしたよね?」

 どこから見つけてきたのか愛媛のガイドブックをのページをめくる金子。

「それ、どこで見つけてきたんだい?」

一生懸命にページをめくる金子を見て笑う清二。

「これですか? なんか、俺が使ってる部屋の本棚に有ったんですよ」

「ああ、そうか」うなずく清二。

「じゃあ、早速準備します」


 金子は立ち上がると気分上場に部屋へと走っていった。


「じゃあ、10時にオイラの家に来てくれ」

 清二は、高志にそう伝えると旧山田亭を後にした。





道後地区


 清二のワンボックスカーに乗せられ洋介、高志、金子ら四人は、松山市東部にある道後温泉へとやって来た。

日本最古の温泉として知られる道後温泉は夏目漱石や、俳人、正岡子規も愛した温泉である。

愛媛唯一の私鉄である伊 予鉄道の市内線、つまり路面電車の終着駅でもある道後温泉駅はモダンなトンガリ屋根の西洋風な仕上がりであった。

 清二達は、そのちょうど目の前にある広場でアイスを食べていた。

「もう直ぐ始まるぞ」

「えっ何がですか?」高志がキョトンとする。

 それもその筈、広場には背の高い時計と足湯があるだけだったからだ。 ガイドブックを先に見ていた金子は、その事を知っているのでクスクスと高志を見て笑った。


 その時、いきなり音が聞こえ始めた。

 どうやら、音は広場に設置していた時計から鳴り始めたようだ。


「あれ、なんすか?」


 状況が読み込めていないのは高志一人だけであった。何故なら、森山家の二人は松山人なので当然であるし、金子の方はガイドブックで予習済みであるからだ。


 和風テイストな音楽を広場に響かせなが、時計の三角屋根が持ち上がった。

 時計は、一気に数倍の高さにまで成長した。


 "これはカラクリ時計だ"と、高志はようやく理解した。



 カラクリ時計は道後温泉をモチーフにしている。


 至るところに貼ってあるポスターを見ていたので高志にもそれくらいの事は判った。


 すると、今度は長く伸びた胴体が横に延び始めめ縦長であった時計が太くなった。

 そこには道後温泉ゆかりの坊っちゃんや赤シャツなどを模した人形がゆらゆらと揺られていた。

 まるで、道後温泉から景色を眺めているようである。


「カラクリ時計だったんだね」


 高志は洋介に向かって言うが、洋介はずっと時計を眺めている。


 高志は再びカラクリ時計に目を移した。

 すると、再びカラクリ時計が変化した。

 なんと、ただてさえ長く伸びた胴体が、今度は土台ごと持ち上がりはじめたのだ。


 土台の下から温泉に浸かる人々の姿が現れた。 頭にタオルを載せている人、茹でダコになって顔を真っ赤にしている人が円形の温泉から顔を出して温泉ごとクルクルと廻っている。


「うぁ……すげぇ」息を漏らす高志。


 これには、予習していた金子も驚いた様子であった。

 時計の仕掛けは尚も続き、時計盤が反転し赤と白の羽織を着た女性がお辞儀をし、道後の観光案内を話し始めた。



 数分後、カラクリ時計は元の姿に戻っていた。

 はじめて見た者には、それがカラクリ時計である事は解らないだろう。

「さあ、時計も見たし、温泉にでも入ろうかね」


 アイスを平らげた一行は、清二の後に続き、道後温泉本館の方へと歩いていった。

 広場から本館へはアーケード街を通るのが近道である。

 平日であるにも関わらず、アーケードは浴衣を着た観光客で賑わっていた。


 観光物産店やレトロな内装の喫茶店を眺めながら進む。


T地路を右に曲がると、アーケードの先に、道後温泉本館の大きな看板が姿を現した。



「あれが本館だよ」と指を指す洋介。


 アーケードを抜けると、その外観が良く見てとれた。

 和風建築のようで、しかし西洋風その不思議な外観は、どことなく宮崎アニメを彷彿させるたたずまいでファンタジックである。

 入り口には大きく"道後温泉"と木製の看板が掲げられ、横には人力車が何台も並んでおり一瞬、明治時代にタイムスリップしたような感覚に襲われる。


 建物はたしかに先程のカラクリ時計に似ていた。


 三、四階程の建物から、浴衣を着た人々がうちわを扇ぎながら、道後の町並みを見物している。 まさに、カラクリ時計と同じである。

 最上階には(やぐら)がちょこんと載っており、大きな太鼓が居座っているのが見えていた。

 清二達は、入り口の隣に設置された料金所で四人分の入館券を購入した。

「さあ、ひとっぷろ浴びるかな」

 四人は他の観光客に混じりながら、看板をくぐり、建物へと入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ